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Kindle本「カフカの『流刑地にて』を読み解く」を出版しました

Kindle本を出版しました。「カフカの『流刑地にて』を読み解く」です。『流刑地にて』の翻訳とその解釈を1冊にまとめています。

流刑地を訪問中の研究旅行者が死刑執行に立ち会うことになります。処刑を行うのはおどろおどろしい自動機械です。この機械はなんと12時間もかけて針で被処刑者の体に判決文を刻み込み,最後に太い鉄の針を突き刺すのです。処刑を受ける囚人の罪はといえば、夜に正時ごとに起きて上官のドアの前で敬礼するという義務を怠ったこと。取るに足りない罪で処刑されようとしている被処刑者を前にして、旅行者はどうしたらいいのか?

『流刑地にて』はカフカの作品の中でも、もっとも残酷でグロテスクな作品です。出版されたときの書評もほとんどが否定的で、批評家の一人は、この物語には「おぞましさ」を感じると述べ、「ただ吐き気を呼び起こすだけ」であると切り捨てています。カフカがミュンヘンの朗読会で作品の一部を朗読したとき、気絶した人が何人かいたというまことしやかな話まで伝わっています。

本書は、次のようなさまざまな問いに答えることによって、この作品が何を描いているのかを伝記的側面から明らかにします。

・処刑機械とはいったい何なのか
・理不尽な処刑制度は何を表しているのか
・処刑機械をひたすら信奉している士官とは?
・流刑地の裁判制度と処刑機械を独力で作り上げた旧司令官とは?
・新司令官はどのような人物で、旧司令官と新司令官の対立はいったい何を表しているのか
・旅行者の決断は何を意味しているのか
・処刑される囚人と監視する兵士はなぜいつもドタバタを演じているのか
・カフカの他の作品と比べてすっきりしない終わり方になっているのはなぜか
・そもそもカフカはどうしてこのようなすさまじい話を書いたのか

そのほか、士官の驚くべき行動、謎めいた予言の意味についても解釈しています。

目次は以下のとおりです。全体は二部に分かれ、前半は筆者による『流刑地にて』の全訳です。後半は作品の「解釈」となっています。これは、別に出版した『カフカ―世界への異和感』に書いたものとほとんど同じなので、そちらを買われた方はこの本を読む必要はありません。

「補足1」と「補足2」は本書で新たに書き加えました。「補足1」では、『流刑地にて』に見られるユーモアを抜き出し、簡単なコメントを加えています。残酷描写の多い作品であるにもかかわらず、随所にカフカのユーモアが見られるのです。

「補足2」では、この作品を精神分析的に解釈してみた場合どうなるのかを考えています。処刑機械を本書の「解釈」とはまた別の観点から考察することで、カフカ自身が抱えていたトラウマに少しだけ光を当てています。

カフカの『流刑地にて』をまだ読んだことがない人はもちろん、読んだけど理解できなかった人、どうしてカフカがこんな作品を書いたのか知りたい人、処刑機械に驚くと同時に魅了された人、流刑地の裁判制度に唖然とした人、士官の強烈な個性に惹きつけられた人――そのような方はぜひこの本を読んでみてください。

【目次】
第一部 『流刑地にて』

第二部 解釈
はじめに
一 処刑と「書くこと」
二 奇妙な処刑
三 旧司令官
四 新司令官と旅行者
五 旅行者の態度表明
六 士官の死
七 旅行者の変貌
八 旧司令官復活の予言
九 伝記的側面
むすび

補足1 『流刑地にて』のユーモア

補足2 精神分析的解釈

あとがき

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