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2/20 つまるところエヴァはオタサーの姫

職場からマリインスキーに行く途中、信号無視をしたらДПС(道でパトロールしている警察)に止められた。彼の存在は視界の端には入っていたのだけどしばらく信号待ちをしていたのだけどあまりに青にならないのでなんだか信号が壊れている気がしてきて(単に待ちくたびれただけ)、車も通る気配がないしまあいいよね、と思い渡ったところ、しっかりみられていて止められた。いやあやっちまったな。パスポートと在留登録の書類をチェックされ、二、三質問され「赤信号の時は止まってくださいね〜」と言われて解放された、ごめんて、とは思うけど事なきを得てよかった。少なくともДПСの車両が止まっている時は交通ルールをしっかり守ろうと思った。

今日はマイスターの演奏会形式。職場で同僚にこれからワーグナーを5時間半聴く予定だと話したら「マゾヒストだよね。」と言われた。何も言い返せない。ストックホルム症候群という説もある。長時間劇場の椅子に座り、耐えて耐え抜いて、最後にライトモティーフで伏線回収する感じがクセになってしまうというのは、DV彼氏に酷いことをされた後に優しくされて許してしまうというのとなんら変わらないと言われても仕方ないかもしれない。でも途中の一見退屈な時間だって音楽は美しいので、ゆるっと聴いていればいいのだ、そう思っている。

ワーグナーオペラはドストエフスキーの長編と似ていると思う。最初の1/3は状況説明、話はたいして動かないし、ひとりひとりの話はやたら長い。数ページにもわたる鉤括弧と10分以上のアリアはそのひとつひとつに哲学があるということはわかってはいるが、それでも長い。みたいな。

マイスター全幕初体験だったわけだけど、まあとにかく長かった。そしてこれはドイツ語わからないといろいろなことがわからないんだろうな、というのと、せめて日本語字幕で見たいというのはある。音楽を聴きながら英語とロシア語併記の字幕を見るというのはなかなかに疲れるのでこれだけ疲れると集中力が持たない。「なんか大体このシーンだからこんな話をしてるはず」みたいなざっくりとした見方になってしまうのはもったいないなあと思うのだけど、でも疲れちゃうものは仕方ない。

3幕で合唱が出てきて歌くらべが始まるところで、そうかここからあと30分くらいあるのか…と思ってしまってため息が出そうだったが、今日はザックスが良かったので大勝利だった。最後のザックスのモノローグだって、ドイツ語がわかったら100倍くらい感動するのだろう。

それにしても今となってはこんなに一点の曇りもなく国の名前を叫ぶということはできなくなってきているので、こんなにも美しく描かれたナショナリズム、愛国心に対して複雑な気持ちになってしまった。もちろん当時(劇の時代設定ではなく作曲された時代)だってそれが100%善だったとは思わないが、それでも国家というものが正しくて美しいものだと賛美される対象だと信じられていたわけで、ナショナリズムの危険性なんてものを多くの人々は意識していなかっただろう。それがいいとかその時代に戻りたいとかそういう話ではないが、でもなんだか、その温度感でこれを観ていた人たちは…と思うとなんともいえない気持ちになってしまった。色々考えさせられますね。

写真には私を止めたお兄さんが写り込んでた。以後気をつけます。

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