日韓国交正常化 覚書

以前書いた文章を再録します。中身は現在とずれている部分があります。

 日韓の国交正常化から半世紀が過ぎた。両国は紆余曲折を経ながら、政治、安保、経済で結びつきを強めてきたが、歴史認識問題では対立が解消できず、ここ数年はまた激しくなっている。対立の原点は、実はこの、国交正常化のプロセスに見いだすことができる。

 1965年6月22日、国交正常化をうたった日韓基本条約などの署名が東京で実現した。外交交渉は1952年2月から始まっているが、中断を含め、14年間かかったことになる。
 最初から、両国の立場は大きくかけ離れており、調整が進まなかった。その理由は、2つの問題に集約できる。

 1つは日本のよる植民地支配(1910年から45年まで)をどう捉えるか。もう一つは、その認識を踏まえて、植民地支配の賠償の名目と額をどうするかだった。

 韓国は、米国と同じ「戦勝国」の立場を主張し、日本に対して賠償要求を求めたのである。韓国は『対日賠償要求調査』という報告書も作成し、準備をしていた。

 一方の日本は、韓国は日本の交戦国ではなかったなとして拒否した。

 このため韓国は、サンフランシスコ平和条約に署名国として参加できず、日韓の国交正常化は、二国間の交渉にゆだねられた。

李承晩ライン



 そんな中、韓国は突然、竹島を含む李承晩ラインの設定(1952年1月18日)という強硬策に出た。

 多数の日本漁船が拿捕され、銃撃を受けた漁民が死亡したり、抑留される事件が続発した。
 日本政府は漁民の保護に乗り出すことになり、米国の仲介も受け、1952年2月に第1回の日韓会談が行われた。

 この交渉でも日韓は真っ向から対立する。
 韓国側は、戦前に日本との間で結んだ条約は武力を背景にして強圧的に締結されたものであるから、当初から「全く無効」で、条約は「不法」であり、補償と謝罪が必要だと要求した。

 日本側は、韓国を「合法」的に領有して統治したものであり、謝罪をして賠償にあたる補償をするという立場ではないと主張した。

 韓国側の請求権の主張に対しては、韓国独立に伴い、1945年以降日本が遺棄した韓国内の施設や会社といった日本資産の返還請求権が日本にもあるとして逆請求権を主張した平行線をたどり、交渉は決裂を繰り返した。


 このように日韓の歴史認識問題の原点は韓国併合条約をどのように解釈するかにあったのである。

植民地支配をどう考えるか


 韓国の主張は、併合に至るまでにいくつかの条約があったが、それらは武力を背景にして強圧的に締結されたものであるから、当初から「全く無効」で、条約は「不法」である。韓国は不法な支配に対する補償を請求する権利を有するというものである。韓国は独立当初から『対日賠償要求調書』(1949年9月)を作成して対日賠償政策を推し進めていたが、韓国は戦勝国として認められなかったことから、賠償請求ではなく被害請求権としたのである。

合法的なもの


 日本の主張は、韓国併合条約は合法的なものであり、それによってもたらされた35年間の支配も合法的なものであり、謝罪するのはおかしいというものである。

久保田発言

 日本の植民地支配は「合法」とする日本側の考えは、会談の中でも飛び出した。
 第3回会談(1953年10月)に臨んだ久保田貫一郎日本側首席代表の発言だった。日本政府の本音が漏れたこの発言に韓国側は怒り、交渉は四年間中断することとなった。
 発言内容は「日本の統治は悪いことばかりではなかったはずだ。鉄道、港、道路を作ったり、農地を造成したりもした。当時、大蔵省は多い年で2000万円も持ち出していた。相当日本から投資した結果、韓国の近代化がなされた」

 さらに久保田氏は「もしそれでも被害を償えというなら、日本としても投資したものを返せと要求せざるを得ない。韓国側の請求権とこれを相殺しよう。当時、日本が韓国に行かなかったら、中国かロシアが入っていたかもしれない。そうなったら韓国はもっと悪くなっていたかもしれない」と主張した。

 日本国内では、久保田発言について同調する意見が多かったが、米国は、アジアの友好国同士の対立に米国は危機感を募らせた。中国やロシアなどの共産圏の勢力拡大が続くなか、日韓の国交正常化を急ぎたかったのだ。

 日本は1957年12月、久保田発言の撤回と在韓日本財産請求権を撤回した。

 協議では個人被害をどう補償をるかも難問だった。日本側は、被害個人からの申告を受け、日本が支払う姿勢を見せた。さらにその後の協議では経済協力を行う形での支払いも提示した。

 これに対して韓国は、国が請求しているのであり、国に支払うべきだ、個人保障は韓国が行うとして、この点でも歩み寄りができなかった。

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!