ケサル王物語: チベットの英雄叙事詩
中央アジアで広く読まれている口誦文学で、いまだに新しい物語が作られ続けているという。広大な土地を舞台にした波瀾万丈の冒険物語だ。
仏の敵を倒すため、この世に下りてきたケサル王が、魔術を使い敵と戦う。
ケサル王の戦いぶりにみんなハラハラドキドキしながら聞いていたんだろう。プロローグにあった「富には意味がない」「白い行いと黒い行い以外、何も死への道連れにならない」(25p)という信心深い母親の言葉には何気に、ハッとした。
人血の雨や色とりどりの雪が降ったり、ケサルがいろいろなものに変身したり、身を細めて危機を乗り切ったり、菩薩が出てきたり。
王の地位を決めたり、女を自分のものにすることを競馬で決めるシーンがある。きっと昔はそうしていたのだろう。
ケサルは超人的な能力があるが、自分の力を見せつけたり、女好きだったりと俗っぽいところもある。叔父のトトゥンが悪役となって主役を引き立てるいい味出している。
チベットの人はケサルとダライラマを重ねて見ており、中国政府がケサルの漢族化を図っているとか。
著者のアレキサンドラの人生が、またすごい。
こんな人がいたんだと驚いた。東洋文庫の「パリジェンヌのラサ旅行」をさっそく読んでみたい。
最近、ウイグルに関心を持っていたが、チベットやチベット仏教についてもいろいろ知りたいと思った。
良い本をありがとうございました。フェイスブックでこの本を紹介したら、中国を専門にする人から「是非読みたい」という反応がたくさんありました。今枝さんも書いていますが、この本は、 アレキサンドラ と富樫さんが生みだした職人仕事だと思いました。
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