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北朝鮮と中国の関係を追いかける 2012年10月10日

2008年以降、日本と北朝鮮の間は、全く動きが止まってしまいました。

日本は北朝鮮への制裁を段階的に強化し、人とモノの交流はストップしています。それ以前の北朝鮮では、日本製の品物に大変な人気がありました。

電気製品ならソニー、たばこならマイルドセブン、ビールならアサヒやキリン、越乃寒梅という日本酒は贈り物として特に喜ばれました。しかし、日本の制裁強化で、こういった品物は消えています。
 
ですから、北朝鮮は経済的に困っている・・はずですが、実際は違います。日本から入らなくなった品物は、中国製に置き換わっています。中国と北朝鮮の貿易高は毎年記録を更新しています。

10月6日の韓国・中央日報によれば、北朝鮮の貿易規模全体で中国が占める割合は2007年の67%から2008年は72.9%、2009年は78.5%、2010年は82.9%、昨年は89.1%と急激に増加しています。
 
一方、最近、日本から北朝鮮に入る人が増えています。北朝鮮に住みながら、第2次大戦前後の混乱で命を落とした家族を北朝鮮の地に埋めてきた日本人の遺族が、相次いで北朝鮮に慰問に訪れたのです。

北朝鮮側の招きによるものでした。どうやらこの遺骨問題を突破口に、日本との関係改善、将来的には国交正常化を狙っているようなのです。

「中国が北朝鮮を助けているのに、なぜ北朝鮮は日本と関係改善しようとするのか」という疑問を持たれるでしょう。

それがまさに、同じ社会主義国として軍事同盟関係を結んで助け合ってきた中国と北朝鮮の関係の複雑で、微妙なところです。

「同盟がひとつの状態にとどまっていることはありえない」と言ったのは、英国の歴史家イアン・ニッシュの言葉ですが、中朝の同盟関係にも当てはまります。一言でいえば、中国はなんとか北朝鮮を改革・開放に導いて独り立ちさせたい。自分たちの対等な貿易パートナーに変身させたいのです。

中国は、1978年以降、鄧小平氏の指導の下、改革・開放に舵を切りました。現在日本を追い抜き世界2位の経済大国に成長しています。

北朝鮮の方は、自分たちの国が緩衝地帯となっており、中国は韓国や、在韓米軍の影響におかれずにすんでいる。だからもっと恩義に感じて、支援をして欲しい。しかし、自分たち(北朝鮮)に対して口は出して欲しくない。中国には頼っているが、全面的に頼りたくないという気持ちだと思われます。

米国は、北朝鮮との交渉にもう強い関心を持たなくなっており、中国に世話役を任せようとしています。2つの国は、国際環境の中でくっついたり離れたりしながら、お互いを利用しあっています。その実態はなかなか外に出てきません。

この2つの国の関係を何とか解き明かしたいと私は最近、1冊の本を書きました。「北朝鮮と中国 打算でつながる同盟国は衝突するか」(ちくま新書)です。

今後も、このテーマを追い続けたいと思っています。

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