梨泰院圧死事故で書いた文章 

当初社説用に書きましたが、だいぶ中身を書き換えたので、最初の内容をそのまま残しておきます。

 日本でもよく知られた韓国の観光名所で、若者らが狭い露地に密集し、百五十人以上が圧死するという痛ましい事故が発生した。同様の事故は日本でも過去に起きている。コロナ禍が落ち着き、外出する機会が増えている。犠牲者の冥福を祈ると共に、事故を起こさないため多くの教訓を学びたい。

 現場は梨泰院と呼ばれる繁華街で、もともと狭い坂道の路地が多い。その中の長さ四十五、幅四㍍程度の狭い道に多くの人が行き交い、すし詰め状態になった。

 何かの弾みで人が倒れ、群衆が将棋倒しと、大混乱となった。多くの人は胸を圧迫されたことによる心肺停止状態となり、心臓マッサージなどの応急治療が施されたものの、間に合わなかった。

 死亡者の多くはハロウィーンを前に、仮装して集まった二十代だという。韓国では、二〇一四年に就学旅行中の高校生らを乗せた大型旅客船が沈没し、三百人以上の死者、行方不明者を出す惨事があった。再び、多くの若者が犠牲になる事故が起きたことは、残念でならない。

 地元警察は、現場の防犯カメラやSNSに投稿された事故当時の映像を分析して、原因を調べている。梨泰院は人気韓国ドラマの舞台として日本人観光客も数多く訪れている。再発を防ぐため、徹底した原因究明を望みたい。

 岸田文雄首相も、哀悼の意を表明したが、今回の事故は、日本でも十分起こりうるものだ。

 〇一年には、兵庫県明石市で花火を見に来た人たちが、狭い歩道橋に密集し、胸を強く推されるなどして十一人が死亡している。

 警備体制の不備が指摘され、その後、人が多く集まるイベントでは、慎重な警備が行われている。

 ソウルでの事故は、三年ぶりにマスクなしでイベントが実施されたことで、予想以上の人が集まったことが原因だった。

 日本でも、大規模なイベント、コンサートが復活している。警備担当者には、人の流れが滞らないよう入念な誘導をしてほしい。

 また、参加者も密集する場所では思いがけない事故が発生することを、十分考慮して行動するよう求めたい。

 心肺停止の人を救う心臓マッサージや専門の機器も普及し、一般向けの講習会も開かれている。こういった知識を身に付けておくことも、犠牲者を減らすために有効となろう。

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