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読書ログ「プロレタリア芸人」本坊元児 著

お笑いコンビ、ソラシドの本坊さんが書いた自伝。地元松山で生まれ芸人を志し大阪でデビューし、現在に至るまでの経緯が記されている。ネタは見たことがなかったが、”ソラシドの本坊”という名前は聞いたことがあった。なぜ名前を知っているのか覚えていなかったが、本書を読んで少しづつ思い出してきた。

本坊さんは大阪NSC20期で同期には麒麟、アジアン、一期下にはとろサーモンの村田さんなどがいる。特に麒麟の川島さんとは仲がよく、デビュー当時はよく一緒にナンパに繰り出していたという。しかし、内心ビビりながらもお互いに舐められたくないため、強がってグチグチと言っているだけで4時間近く何もしなかったというから面白い(笑)そんな風に大阪時代は楽しくワイワイとやっていたが、次第に同期がテレビに出て売れ始めるようになる。心の中では焦りつつも、結果を残せないでいる日々。とにかく劇場に立つようにした。それでも上手く行かない。

そんなある日、遂に東京進出を決める。ステップアップと言うよりは現状からの脱却だ。しかし、この先でさらに過酷な日々が待ち構えている。お笑いの活動をしながらも生活は維持しなければならないため、派遣の現場作業員のアルバイトを始める。「お笑いだけで稼ぐようになれたら、こんな仕事すぐに辞めれる。」そう希望を持ちつつも現実はうまいこといかず、肉体労働の極貧生活は続く。たまのお笑いの仕事は、その分派遣での収入が無くなってしまうため素直に喜べない。

本書のうち、中程7割くらいはこのアルバイトの内容であったから驚きだ。まさか夢ではなく生活のために始めた仕事が、それほどまでに人生の大きなウェイトを占めているのだ。建物の解体現場で降り注ぐガラスの雨、忘年会のビンゴで当たった1等商品が作業用ヘルメット、作業員同士が喧嘩するとコンクリートに埋められる都市伝説。数々のエピソードが、本坊さんの人生を形作っている。

現在ソラシドのお二人はよしもとの47都道府県プロジェクトで”山形住みます芸人”として地方で活動を行っている。地方では芸人の数自体が少ないため、自ずと仕事は入ってくる。まさか愛媛生まれた自分が山形で芸人をやっているだなんて思ってもみなかっただろう。結果としてお笑いの仕事で生活ができている。それだけで、過酷な日々が十分報われたように感じる。

お笑い芸人のエッセイは数多く読んできたが、ここまで赤裸々で荒削りな生き様を綴ったものは初めてだった。いつかふとテレビをつけたときに映っていたら、この本を思い出しながらも素直に笑えたらいいな。

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