SDGsの取り組みと業績との相関関係

昨年12月、日本経済新聞社が「SDGs経営調査」を発表しました。2019年12月2日付日本経済新聞朝刊記事によると、日本経済新聞社が上場企業など国内637社について、SDGsにどう取り組んでいるかの視点で格付けした調査で、総合格付けの上位34社のグループは、それ以外のグループと比較してROEや売上高営業利益率が高く、「SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明になった」としています。

私も「SDGsに取り組むと業績が上がるのでしょうか?」という質問をされたり、見解を問われたりすることが少なくありません。メディア記事等を見ていても、SDGsの取り組みと業績との間で正の相関関係があるというものもあれば、正の相関関係が見い出せなかったとするものもあります。

こうした質問を受けたり、メディア記事等を見たりすると、果たしてSDGsの取り組みと業績とを直接結びつけて議論することができるものなのだろうかと考えたりもします。

「SDGsを経営に生かす努力」がポイント

SDGsの取り組みと業績との間に正の相関関係が見い出せたり、そうでなかったりするのは、よくよく考えれば当たり前のことのように感じられます。それは、「SDGsに取り組んでいます」と言っても、実際に”どのように”取り組んでいるかというところまでは踏み込まれていないようだからです。取り組み方次第で成果が出たり、出なかったりするのは、ごく当然のことだと言えます。

「SDGsに取り組んでいる」ということに加えて、「では、SDGsを生かした経営にしっかりと取り組んでいるかどうか」という面からの分析を行った上でないと、業績や成果との間の相関関係を論じることはできないと思うのです。

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SDGsに表面的に賛同しているという程度の取り組みであれば、業績に影響を及ぼす他のさまざまな要因に埋もれてしまうはずです。

SDGsをいかにして経営に統合するか

こうしたことを考えてみますと、やはり「SDGsを経営に統合する」ということがポイントになってくるのだと分かります。SDGsに表面的に賛同する、自社が既に取り組んでいることをSDGsに強引に関連付ける、自社の事業活動のうちごく一部の活動においてSDGsに取り組む、・・・といった上辺だけの浅い取り組みではなく、企業経営の基本メカニズムをしっかりと把握・理解し、そのメカニズムのありとあらゆる要素にSDGsを組み込むことです。

このようにSDGsを経営に統合して事業活動を展開することによって、経営の基本メカニズムがよりよく機能することを通じて、また、このプロセスの中で、社員がイキイキと働き成長することで、会社が質的に成長し、財務業績を含む成果となって表れていくのです。

経営者の皆さんは、自社がSDGsを生かした経営にしっかりと取り組めているかどうか、SDGsの取り組みにおいて現状ではどのような点が課題であると言えるのか、全体的に見つめ直し、自社の取り組みを評価することが望ましいでしょう。

その方法として、まずは、成長ドライバ理論のフレームワークにある5つのメインドライバ(「社長」「経営理念・ビジョン」「ビジネスモデル」「システム化・型決め」)、5つのサブドライバ(「ストレッチ」「サポート」「自律」「規律」「信頼」)、そして、「企業環境分析」「成果分析」を、それぞれSDGsと掛け合わせて熟考するとよいでしょう。

例えば、「SDGs」×「社長」という観点では、社長としてSDGsを理解しているか、会社の事業をSDGsの各視点から検討しなおしているかどうか、そして、本気で取り組んでいるか、・・・等について自問するとよいでしょう。

また「SDGs」×「経営理念・ビジョン」では、自社の経営理念・ビジョンがSDGsの考え方と方向性が一になっているでしょうか。経営理念・ビジョンを社員に語るときSDGsにも言及しているかどうか、そして、その思いの浸透を図ろうとしているかどうかなどです。

同じように、「ビジネスモデル」「システム化・型決め」「行動環境」・・・ともSDGsを掛け合わせて、チェックすることです。

社長一人でやるのではなく、幹部、一般社員とも、これらのテーマで対話をしながらチェックしていくとより有効です。その過程で改善を要する箇所が見えてくるでしょう。それらの改善に一つずつ取り組んでいくことです。

これらを通じて、やがて「自社の経営そのものがSDGsに適合したものである」と言えるレベルになれば、本業を通じて社会の課題を解決し、社会に価値を提供しているという状態になるでしょうし、企業活動を通じてごく自然体で社会に貢献することとなるでしょう。また、大きな環境変化にも対応できるレジリエントな力をもち、社会からも支持され、サステナブルな企業となっていることは間違いありません。 (東渕)

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