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重いけどお手軽?な手すり ~屋外用貸与手すり、いろいろ


介護保険で手すりをつけるとき、工事での設置となる、住宅改修以外の選択肢もいくつかある。特に、工事を伴わないものであれば、介護保険では福祉用具貸与の対象になるので、室内の手すりは以前から置き型や、突っ張り型手すりがいろいろと研究され、普及してきた。

それらの手すりが、魚類が陸に上がるかのように、屋外まで進出し始めたのがおおよそ10年とちょっと前のこと。我々のような工事屋さんは、その時は今の状況は想定できていなかったのが正直なところです。あらためて振り返ってみると、とんでもなく製品が進化しました、このジャンル。というわけでご紹介がてら、概観してみましょう。


たぶん、2013年12月発売の、この機種が走りだったと思う。たちあっぷ540【矢崎化工(株)】。

踏み台とセットで、高さ54cmの掃き出し窓に対応

トップ画像の製品ですね。掃き出し窓手すりの定番品、ロングセラーです。

なんと、手前側の縦手すりを139cmまで延長可能としたことで、外部から高さ54cmあるの掃き出し窓でも、高い方で手すりの高さ85cmを確保できる。建築基準法では1階床の高さは地盤面から45cmが多いはずだから、ほぼこれで対応できる能力があることになる。基材もステンレスなので、耐久性も高いし、何より重たい。両手すり装備だと約35kg、踏み台の小が6kg、大が約10kg、フルセットだとなんと50kgくらいになる。なので、ちょっとやそっとでは動かない安定感が売りである。

細かい解説はこちら

洗濯物干しのために外に出たい、などの需要があり、掃き出し窓の外にある程度の広さのコンクリート土間(犬走り)があるのなら、ケアプランに余裕がある方なら、もうこれでとりあえず試しましょう、となりがちである。
ちなみに、手すりは片側両側、踏み台はなし、1段、2段が選べます。

なお実はこの形状、工事を伴う住宅改修では簡単にできないのである。工事で設置する外部手すりは、支柱の長さに制限があるので。一般的な品物だと90cmが限界、ロングバージョンがあるタイプでも120cmが限界だろうか。そして、テコの原理を思い出してもらえるとわかると思うのだが、長くなればなるほど、根元に掛かる力も大きくなるので、例えば施工条件が悪かったなどの場合、使用中に壊れるリスクも高くなる。

だがこの製品は頑丈なプレートでその点をクリアし、なおかつ手すりはより高いところまでカバーできてしまうのだ。レンタル費がお高め(1割負担・踏み台なしで900円/月程度)という点と、踏み台との複合貸与を認めない保険者があるということ(踏み台は手すりの一部と認めるか否か、ですね)に課題はあるのだが、安心してお勧めできる品である。

あと、安心できないのは貸与事業者の方かもしれない。たまに自分でも工事との絡みでこれを移動することがあるが、スネにプレートをぶつけないことだけは本当に注意するようになりました。洒落になりません。風大左衛門の涙が出ます。

また、これのシンプルなタイプもある。たちあっぷⅡ。

ベースは66×66cmとコンパクト

こういうふうに置くだけです。ここは砕石を丁寧に均して、ガタつかないように置いたら、歩きやすい面をつくる効果までおまけに付いてきました。以前室内でそういう話を記事にしておりますので、ご興味のある方はこちらもどうぞ。


外部手すりのライバル、いろいろやり手です。
だが、まだ慌てる時間じゃない。
長い階段は個別性が高いし、形状も難しいからこっちの独壇場だろう、と思っていたのです。ところが。

2015年11月発売。黒船来襲。
アットグリップ【アロン化成(株)】。


単体タイプを上下に2台置きその間をつなぐことで、玄関ポーチなどの数段の段差をクリアする製品がこれである。
たとえば退院間際の相談で、すぐに外出機会がある方などはこれらが使われますね。事前申請が必要な住宅改修では、退院に間に合わないので。

斜め手すり、140cmまで対応します

ただ、階段の貸与品は月あたりの貸与額が長さに比例して高くなっていく(ケアプラン上、利用したい他のサービスと食い合うのです)ことと、足元にプレートが出てくるために躓きの要素があることが弱点である。

なので、長期の利用が想定されるようになると、一度の費用負担で済む住宅改修にて置き換えたいという需要も出てくる。そのときは、工事で行うメリットも享受できるよう、いろいろ技術を尽くすのである。

曲げてつけられる手すりを使ったり


でもこれらの製品、まだまだ進化は続く。とうとう、もっと長い外部階段に対応し始めたのだ。

2019年9月発売、スムーディ【パナソニック㈱】登場。

中間のベースプレート幅、300mmなんです

こういう感じで、中間部のプレートが狭幅になってます。なので長めの階段にも設置が可能に。他社さんの階段タイプも、続々とこの形状に対応して今に至ります。


なので、共用している私道の階段や、権利関係が複雑で工事での手すり設置が困難なケースでも、貸与品なら置くことをご了解いただけるケースはあり、これが使えるようになりました。

ウチが直接関わった案件ではないですが、たぶん、これの日本記録かもしれないという現場を見かけたので貼ってみましょう。
この製品はたよれーる【マツ六㈱】ですね。

7台連続設置、すごい


というわけで、これらの製品が対応できる現場は、絶え間ない改良でどんどん増えているのです。
これら貸与品の、屋外用置き型手すり(工事不要)の特徴をまとめると、

メリット:
設置がすぐできること
・高さや位置の微調整が設置後に出来ること
不要になったら撤収できること
・ケアプラン組み込みで月いくらの負担であること
・あとプレートが役立つ場面があること

デメリット:
・長期に使うと月あたりの負担額が積み上がること
プレートの境目が躓きの要因になること
複雑すぎる形状には対応困難であること
・踏み台付きの場合は介護保険での扱いが保険者によってちがうこと

こんなところでしょうか

他方、住宅改修での手すり設置(工事を伴う)

メリット:
足元がスッキリ、転倒リスクが少ないこと
複雑な形状の階段にも対応できる材料があること
費用は工事後の1回のみ、20万円まで介護保険給付の対象(自己負担あり)

デメリット:
・事前申請のため、設置まで時間がかかること
・設置後の位置の微調整が困難であること(高さ調整可能な製品はあり)
・不要になっても撤去は自費
・工事完了時に在宅であることが未確定の場合、全額自費になるリスクあり

 

というような感じですかね。
この辺を見極めて、自分もどちらをお勧めするかを考えております。

また、それぞれの特徴を踏まえて、複合して使うこともあります。たとえばトップ画像の現場、あとからサラッと住宅改修の手すりが追加になりました。

窓枠に隅付き縦手すりが

帰りに最後の一歩がでないことが、貸与品を使ってみてからわかり、その課題解決のために、住宅改修の手すりでアシストしたわけですね。

自分の復習も兼ねての、まとめでした。皆様のご参考にもなれば。

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