VOL.12寄稿者&作品紹介39 清水伸宏さん
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VOL.12寄稿者&作品紹介39 清水伸宏さん

多田洋一

清水伸宏さんの小誌前号への寄稿作「定年退職のご挨拶(最終稿)」は昭和の時代を思い起こさせる、アイドルにまつわる一篇でした。今号への書き下ろし新作「つながりの先には」は、バリバリの令和ストーリー。ことの始まりは今作の主人公・ケンジがFacebookで“1990年代後半に人気が出たイギリスのロックギタリストC”について語り合うグループをつくったことなんですが...音楽好きが多いと思われる小誌読者、ここでもう惹き込まれません? 誰? Cって(ザワザワザワ)!  この後の説明では“Cが所属していたバンドは、イギリス本国では当時日本で大人気だったロックバンド、オアシス以上に評価が高かったが、いかんせん曲がポップではなかったため日本ではブレイクしなかった”と。私(←発行人)はクーラ・シェイカーのCrispian Mills! 一択なんですが、果たして正解は? それはともかく、このグループのメンバーである山口康夫、水上みなみとケンジとの関係性を軸に話は進んでいきまして、ええと、ネタバレなしてその後の展開を説明するのがなかなかむずかしいので、スイマセン、Cで胸がざわついたみなさま、ぜひ小誌を手に取って衝撃の結末をお楽しみください!

前作の主人公・「僕」は週刊誌の記者でした。今作のケンジさん、素性がはっきりしませんが、「僕」に負けず劣らずな取材力を身につけています。酒が好きで、多少の物事には動じない。東京五輪に熱狂するわけでもなく、新型コロナウイルスに過剰な反応を示すわけでもなく。作中で一箇所だけケンジの感情がバーストする描写があり(スマホを放り投げる)、おおっ! と波乱を期待したのですが、でもすぐクールダウンしちゃったので、これはやはり「沸点の低い人生慣れ」とでも言いますか、いにしえの刑事ドラマ「太陽にほえろ!」にたとえれば露口茂が演じた「落としの山さん」と、イメージがかぶる。

ケンジさん目線で語られる物語なので「ケンジさんの言動」はすべてケンジさん的に整合性がとれているのだと思います。ただ、客観的に見ると語られてないなぁと感じられることが一点あるんですよね。もし私がこの作品に割り込むことが可能なのだとしたら、ひとつだけ(できれば物語前半で)ツッコミたい。「ケンジさん、水上みなみのこと、まんざらでもないんでしょ?」と。...いや、筆者は「そんなこと言わずもがな」で、書いたのかも知れないけれど。

 翌日、メッセージが着信したマークがついていたので、すぐに開いてみたら水上みなみではなく山口からだった。昨日の今日のことなので、思わず身構えたが、時候のあいさつのような内容だった。
 その翌々日になってようやく水上からメッセージが来た。ケンジのアドバイスに従って山口をブロックしたこと、これからも頼りにしていいかといったことが書かれていた。ケンジはあとでじっくり返信の文章を考えようと思い、取り急ぎ「ハート」マークをつけた。
 山口はその後もケンジのグループはもちろん、水上みなみが所属しているすべてのフェイスブックグループで、彼女が投稿した記事にコメントをつけていた。相手からブロックされても、グループへの投稿は見られるらしい。

〜ウィッチンケア第12号〈つながりの先には〉(P230〜P237)より引用〜

清水伸宏さん小誌バックナンバー掲載作品:〈定年退職のご挨拶(最終稿)〉(第11号)

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多田洋一
文芸創作誌「Witchenkare」(ウィッチンケア)発行人。東京都町田市在住。 フリーランスのライター/エディター。