VOL.14寄稿者&作品紹介18 加藤一陽さん
前号(第13号)に続き、2度目のご寄稿となる加藤一陽さん。現在はカルチャー系コンテンツ・カンパニー・株式会社ソウ・スウィート・パブリッシングを経営しつつ、多方面で活躍しています。同社は先月(4月30日)、『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』(ナージャ・トロコンニコワ/翻訳・野中モモ)を発行。また2022年9月に発行された『EVE OF DESTRUCTION』(チバユウスケ)は、今年1月時点で6刷、とのこと──THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「The Birdmen」を初めて聞いたのはたぶんCLUB SNOOZERでその日は生レイ ハラカミも観れた!/『THE FIRST SLAM DUNK』のオープニング良かった!!──私事を雑多にぶち込んですいません、合掌。...ええと、そんな加藤さんの今号への寄稿作のタイトルは〈俺ライヴズマター、ちょっとしたパレーシア〉。一瞬「!?」となりますが、作品を読んでみると、なるほど言葉選びのセンスが洒落てるな~、と感心してしまいました。でっ、内容はというと、散歩のお話。今号では内山結愛さんも荻原魚雷さんも(読みようによっては柳瀬博一さんも)散歩について書いていまして、いやあ、ただぶらぶら歩くことに、こんなにも人となりが反映されるものなのかと、全体を束ねる役割の私(←発行人)、驚いておりますですよ。
加藤さんが散歩中に遭遇、というか巻き込まれたのは、職質。日曜日の午後 at 道玄坂で、フィッシュマンズを聴きながらハイボールを歩き飲みしていたら。職質された理由は、加藤さんによると、警官曰く“「目が合ったときに逸らしたように思えた」”ですと。mmm、じつは私もここ数年で2回職質されていますんで、あの嫌な感じはよくわかります。1回なんて、自宅から100mくらいのところで自転車停められて(書き出すと長くなるので以下略)。どうも、あの制服の方々は、自由人っぽい身形の男が不審に感じられるのかもしれず...あっ、私がお目にかかった加藤さんは、すらりと長身で物腰柔らかなイケメン男性でした。お堅い職業の人、ぽくはなかったけれども。
もしも「見た感じ」が怪しかったから、という理由で職質を受けたのだとしたら...加藤さんは“「痴漢に遭うのが嫌ならば、露出の多い服装はやめるべき」という主張が狂っているのと似ているのではないか”などとも考えたりしていて、このへんのモヤモヤがBlack Lives Matterを想起させてタイトルに繋がっているのだと思います。それにしても、お気の毒な出来事なのにエッセイとして読むと、筆者の文才で、つい笑っちゃう。みなさま、加藤さんの職質顛末記をぜひお楽しみ(失礼!)ください。
その道中、寿司屋と港区女子のケンカの記事をスマホで読んでいたら目の前に圧を感じ、顔を上げると警官が2人。さらに道の反対側から1人駆けて来る。瞬く間に3人に包囲された自分は、「こいつ何したの?」という通行人の視線を感じながら、「俺、何したの?」と思っていた。同時に脳内で自分の罪を検索した結果、路上飲酒を取り締まっているのだな、と考えた。最近の渋谷では条例ではないけれど、「路上飲酒はよしましょう」ムーブがあることを知っていたからだ。
自分に対して警官Aは「何しているの」と尋ねた。フィッシュマンズとハイボールだ、は違うか、寿司屋と港区女子が、はもっと違うな、散歩、か? と混乱していると、Aは返事を待たずに「あの男、知り合い?」と誰かを指差した。人が多くてどの男のことか分からなかったので、自分は終業後に1人で散歩をしている、と真実のみを伝えた。
~ウィッチンケア第14号掲載〈俺ライヴズマター、ちょっとしたパレーシア〉より引用~
加藤一陽さん小誌バックナンバー掲載作品:〈リトルトリップ〉(第13号)
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