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VOL.12寄稿者&作品紹介40 朝井麻由美さん

現在テレビ東京【水ドラ25】で絶賛放映中の「ソロ活女子のススメ2」。朝井麻由美さんが大和書房刊の「ソロ活女子のススメ」を上梓したのは2019年3月、同名タイトルのドラマが放映されたのが2021年4月〜6月。その後配信オリジナルのスピンオフドラマ「ソロ活女子のススメのススメ」が制作されたりもして、現在の「2」へという流れですね。江口のりこは「半沢直樹」の白井亜希子国土交通大臣もすごかったけれど「鎌倉殿の13人」での亀の『後妻打ち』もすごくて、今後どれだけ大化けするのか? そんな彼女の民放連続ドラマ初主演番組の原作者が朝井さん...これは、すごいことだ! そして、そんな朝井さんから今号に届いた寄稿作「ある春の日記」には〈今度の新作ドラマの原作者〉という人物が登場しているのですが、これは、きっと偶然だと思います。ええと、本作は〈性別女、制作会社勤務〉(テレビ関係)のかたの素っ気ない雑感メモみたいな体裁の一篇でして、サラリと読めるもののけっこう毒素も含まれているように感じられまして、まあ一番の問題は今作で筆者に毒を吐かれているその当事者が「それって毒を吐かれるようなことなの?」という認識のまま存在していることだと思いました。“会議で「価値観のアップデート」とよく言うくせに、〝アップデートしてるクリエイターな俺〟が好きなだけで、根っこの部分はただの昭和のおっさんなんだよな”...ガツーン!

「恋愛はドラマの基本じゃないですかァ?」と語るプロデューサー。私(←発行人)は2003年1月~2022年04月までの民放ドラマ高視聴率ランキングを調べてみました。あきらかにラブストーリーだと思えるものは「ラストクリスマス」(2004年/18位)と「電車男」(2005年/25位)くらいしかないぞ。ちなみに彼が想定していそうな「基本」のやつを拾ってみると「Beautiful Life」(2000年)、「ロングバケーション」(1996年)、「東京ラブストーリー」(1991年)、「男女7人秋物語」(1987年)...やはり困った存在です。

あと、作中の〈三月十七日〉のフッくんの件が心に残りました。私は十数年前、下北沢のたこ焼き屋のテイクアウトに1人で並んでいて、そのとき店内にいた女がなにかの拍子に振り返って目が合って、しばししてその女がもう一度確認するように振り返って、その後隣にいた男に「ダチョウ倶楽部かと思った」と言った声が聞こえて、この話のポイントは女は「ダチョウ倶楽部」としか言っていないのに私にはそれが「肥後でも寺門でもない」とわかったことで、やっぱりこんな時間にたこ焼き食べようとするからこんなこと言われるんだと落ち込んだことがある程度には親しみを感じていた人がつい先日なくなってしまって、いまや黄昏てるテレビ業界であのポジションを続けていくのはさぞかしつらかったんだろうな、とちょっと同情したことをここに記しておきます。

三月九日
 プロデューサーが怒っていた。今度の新作ドラマの原作者と揉めているらしい。プロデューサーはドラマの中で主人公に恋愛をさせたいらしいけど、原作者はそれを嫌がっている。原作に一切ない展開なのだから、当たり前だろう。
「恋愛はドラマの基本じゃないですかァ?」と気持ちの悪い顔して電話している。いかにもな昭和のプロデューサーで吐き気がする。しかも、カーディガンを肩で巻いてる。初めて見たとき、プロデューサー巻きする人って本当に存在するんだ、と驚いた。電話を切ったプロデューサーが「恋愛にしないと数字が取れない」とブツブツ言っている。

〜ウィッチンケア第12号〈ある春の日記〉(P228〜P230)より引用〜

朝井麻由美さん小誌バックナンバー掲載作品:〈無駄。〉(第7号)/〈消えない儀式の向こう側〉(第8号)/〈恋人、というわけでもない〉(第9号)/〈みんなミッキーマウス〉(第10号)/〈ユカちゃんの独白〉(第11号)

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