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星空に迷い込んだ男 note

いまは「アルバム」という単位で音楽に接するのが、むかしほど意味のあることではなくなっちゃったみたいですが、それでも私にとっての「アルバムとして聞く」体験で、かなりの衝撃だったのが『クルト・ワイルの世界〜星空に迷い込んだ男』。

ハル・ウィルナーというアメリカの音楽プロデューサーが企画/制作のトリビュート盤で、私は前作『セロニアス・モンクに捧ぐ』からこの人のアルバムを聞き始めましたが、とにかく、ヘンな聞き心地。独自の人選と解釈でリ・プロダクトされたモンクやワイルの音楽はバラバラなようでありながら妙な統一感もあり...つまりこれがハル・ウィルナーという人がつくりたくってつくったアルバムなんだな、と(次作の『Weird Nightmare: Meditation on Mingus』はさらに迷宮感が強く、Keith Richards Henry Rollins Chuck Dなんてクレジットに目眩)。

かなり雑色系で音楽を聞いてきた私にとっても、『クルト・ワイルの世界〜星空に迷い込んだ男』はクセが強く感じられます。クルト・ワイルの楽曲の統一感、そして参加ミュージシャンに共通する音楽的センス(音への美意識!?)の水準でそれなりになめらかにも聞こえるけれど、それでも味噌とイチゴジュースとピーナッツバターで仕立てた鍋にバナナとピーマンとマトンと、ついでに魚の小骨や葡萄のヘタも放り込んであって、それでも「この料理は...まあ、うまいんじゃないの!?」と思わざるを得ないというか。

なんだか褒めてないみたいですけれど、じつはすごく褒めてます。いっつもこれを愛聴、ではないけれどときどき妙に聞きたくなるし、なにより「アルバムという枠」があるから楽しめる音楽だと思う。でっ、当時の私は最初はスティングやルー・リードやヴァン・ダイク・パークスといったロック系の人に知られる参加者の名前(前作だとドナルド・フェイゲンやトッド・ラングレン)に惹かれて聞こうと思いましたがこのアルバムが耳に馴染む頃には他の知らなかったミュージシャンも気になり始め雑食の幅が拡がりまして、いまに至る。

※ヘッダの写真に使ったカセットテープは輸入盤で、いくつかの曲はヴァージョン違いだったはず(いまは聞く環境がない...)。たしか、突然放送禁止用語(日本語)が流れてきたり...。

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