エルム街の悪夢 の話

視聴場所・アマゾンプライムビデオ

あらすじ
エルム街に住む女の子、ナンシーとその友人は悪夢に悩まされていた。むせ返るボイラー室、全身が焼け爛れた男、手袋にはめられた4つの爪が引き裂く。恐怖で目を覚ませば、男に切られた服が裂けていた。あれは夢ではなかったのか?どこから夢で、どこから現実?迫り来る恐怖と疲弊に抗うべく、ナンシーは男の謎を追う。

正直、ホラー映画としてはそんなに怖くないかもしれない。だが、私はこの映画がむちゃくちゃ好きだ。というのもこの映画に登場する殺人鬼、フレディ・クルーガーのキャラクター性にまんまとハマってしまったためなのだ。
フレディは夢の中に現れる殺人鬼だ。人々が彼を記憶し恐怖し続ける限り、フレディは無限に等しい力を得、夢を意のままに操ることができる。夢の中で受けた傷は現実にも影響するため、冒頭で受けた傷がそのままだったというわけだ。ただしまったくの無敵というわけでなく、恐怖しない相手には手出しができず、夢で掴まれたまま相手に目覚められると現実に引っ張りだされてしまい、その際は大幅に弱体化してしまう。元は子どもを狙う連続殺人鬼で、裁判の不備で放免になったことを不服とする遺族によって焼き払われた。以降、フレディは夢の中に住む殺人鬼となったのだ。
ストーリーは、ナンシーがこの事実を知り、フレディを追い詰めていくまでを追っている。

まずこの設定がめちゃくちゃ好きなのだ。恐怖すればするほど強くなるというのもカッコいいし、その強さも完全ではないという点もものすごくツボ。フレディの性格が残虐性を持ちつつもちょっとジョークも飛ばしちゃう茶目っ気も持ち合わせているおじさんというのも親しみが持てる。殺人鬼だけど。ロリペドサドと三拍子揃っているけど。あれっやっぱりただのヘンタイかもしれないぞ!そんなフレディおじさんの爪手袋は映画冒頭で自作したものである。溶接とか器用すぎない??

先んじて恐怖はあまりない、と書いたが、その理由がここに起因している。ストーリーや設定は、夢か現かの曖昧さによってフレディがどこからやってくるかわからない恐ろしい状況を生んでいるのだが、フレディの言動が軽い・残虐な殺し方に拘った結果時々シュールなギャグに見えてしまうのだ。
例えばナンシーの友人とその恋人が二人で寝ている間、女の子が夢でフレディに襲われ現実でその体が天井に向かって持ち上げられてのたうち回るシーンがあるのだが、その動きがなんというか…ちょっと笑えるので妙に冷静になってしまった。それを側から見上げる男もなんだかシュール。
あと印象に残ってるのは、フレディから逃げ続けるナンシーがボーイフレンドに電話で助けてもらおうとするシーン。直前、かかってきた電話をナンシーが取ると金属の擦れ合う音がして電話線を引きちぎる。だが再び鳴るコールに訝りつつも受話器を取ると…「お前のボーイフレンドだ」とナンシーの受話器がフレディの口になり舌が伸びてフレディが彼女の唇をペロペロするのだ。これ本当にホラーか!?と疑いたくなるが、フレディおじさん性癖ここに極まれりみたいなシーンでもあるので、個人的にはむしろ好きである。フレディは気持ち悪くてなんぼである。(※個人の感想です)あとラスト10分の流れもね…

散々っぱら「怖くはない」と書いてきたのだが、この映画一番怖いのはむしろラストシーンで、全編通してこのシーンが一番好きだ。
現実世界にフレディを引きずりだしたナンシーだったが、ついにあと一歩で引き裂かれる距離まで詰められる。そこでナンシーはこれまで見聞きした情報を頼りに、強く強く思い描く。フレディなんか怖くない。あんなものは存在しない。ナンシーはフレディに背を向けてドアを開ける。すると朝日が降り注ぐ家の玄関だった。荒らしたはずの家も元どおり、死んだ母親もにこやかに挨拶する。そう、これまでの物語は全て悪夢だったのだ。ナンシーはいつも通りに友人らと車に乗って学校に向かう――はずだった。車が発進する。なぜか窓が開かない。見送る母親に叫ぶナンシーだが母親は気づかないまま手を振る。車が去り、母親が手を下ろしたところで背後のドア窓が破られた。現れたのはあの4つの爪、聞こえてくるのはフレディの数え歌……
で、スタッフロールである。この後味の悪さが不気味であり、背筋がぞわりとした瞬間だった。これまでの流れはこのシーンを強調する前振りとすら思うほどだ。フレディのキャラクターが好きだとこれまた散々書いてきたが、エルム街の悪夢という映画の括りでもものすごく好きだ。
余談、これを書くのにもう一度見返してハッとした。車の屋根がフレディの着ていたセーターの色(赤と緑のボーダー)だったのだ。仕込みがすごい!

殺人鬼の偉大なアイコンの一人と言われる理由がとてもよく理解できると思ったし、実際私もまんまとハマってしまった。内容としては好き嫌い、合う合わないありそうだが後味の悪さは日本のホラー映画に通じるものがあって私は楽しめた。私が見たのは字幕版だったので、いつか吹き替えでも見てみたいとも思うがアマプラは字幕のみなのでちょっと残念。
ふと思ったけどこの話、スマホとSNSが主流の今だとかなり弱いのかなって思った。スマホでアラーム+スヌーズかけたり何時にリプやラインで起こしてください!とか呼びかけたらすごい戦えそう(?)しまいにはフレディ対抗オフとして同時に入眠して人海戦術とか。現代版エルム街の悪夢、スマホと戦うフレディ編。ちょっと見たい。

ざっくりまとめ
・恐怖としては薄め、グロくはないがとにかく血がいっぱいでる
・フレディのキャラクター性がとにかく素晴らしい。これぞ殺人鬼!
・後味の悪いストーリーが好きな人にはオススメ
・ナンシーのガッツがやばい

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