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『校内居場所カフェスタッフ養成講座基礎知識編』感想文

せっかくなので、感想を書いておきます(転載・引用ご自由に)。

ボトムアップで、マーケットイン発想

「支援臭を消臭」(P28)という言葉が面白い。支援者(資格持ってます、経験あります)が得意や経験を活かそう、とすると、それはプロダクトアウト発想になっちゃう。主訴や目的がないと、出会えない。
行政受託支援施設がすっかり、トップダウン(おかみに従って)のプロダクトアウト(仕様書の枠組みで)になって、停滞の硬直を大いにしちゃってる。そんな現状のオルタナティブな取り組みで、居場所カフェには希望の匂いがする。

一回それを置け。一人間同士の出会いに立ち返れ。
「大人オーディション」(P51)に臨め。
生徒に教えてもらう「教わりたがり屋」(P15)になれ。
これが読んでいて、頭の体操になって面白い。

石井さんの名言で「教育の人は教育で解決しようとするし、キャリアの人はキャリアで解決しようとする」が頭にずっと残っている。
そこが考えが硬直になるので、頭をまずは柔らかく、という気持ちになった。
「『あの生徒たちに本当に必要なものはなんだろう?』と、考え始めるきっかけに(P84)」とマーケットインへの発想転換。

文章の柔らかさ

あとがきに「『思います』という語尾を多用し」(P84)とあるように、文体が非常に柔らかい。石井さんの名文筆家っぷり。
好きな表現は「『大丈夫で~す』とシャッターが降りて(P10)」「『ところで名前はなにちゃん?』(P11)」という口語表現の巧みさ。
「また、抗いようのない事実として、若いイケメンがいれば女子生徒が集まりますし、その逆もあります(P24)」「誰に何を言ってしまうと、できるものもできなくなるということもあり得る(P36)」という、清濁相混じる現実の表現。

冊子『カフェのできる学校、できない学校』では”カラフル”という言葉で目指すビジョンが表現される。石井さんの文章は、さらにカラフルなマーブル模様を描く。きれいな色ばかりではないし、よい混じりとも限らない。でも目指すは”カラフル”なのだろう。

冊子から政治臭・社会運動家臭が排除されてる感じも好きだ。政策キーワードである「子どもの貧困」や「SDGs」も出てこないし、シングルイシューに徹してるところがいい。そういったビッグワードに頼らず、自分の腹落ちした言葉でつづってる。それは簡単なことではない。
聞きかじった難しい言葉を並べて、それらしく書く訓練は受けていても、徹底して自分の言葉で、難しい。実に、文学者の技。

読書感想文フォーマット風にまとめる

まとめ方に悩んだので、最近ネットで話題の「小学生向け・読書感想文の書き方テンプレート」でまとめてみよう。

①この本を読もうと思った理由
主執筆者の石井氏は、同業者の先輩であり、かねてから尊敬していたので、業績に学びたいと思って購入した。購入で、活動応援にもなるし。
②どんなことが書いてある本だったか
「校内居場所カフェ」はなぜ生まれて、どのように運営されているか。自分たちでもやってみたいと思ったら、どのように進めていくかが書かれていた。
③一番印象に残ったこと
ボランティアは偉そうにしないで、生徒に教わるくらいの人がちょうどいいこと。とにかく「信頼貯金」をためていくことが、そのあと関係を続けたり、困ったときに頼ってもらうために必要だということ。
④自分だったらどうするか
カフェ活動ではなくても、「偉そうにしない」とか「信頼をためていく」という意識は自分の仕事にも大切だと思った。

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