映画「あちらにいる鬼」感想

感想①

トヨエツが100%クズ!豊川悦司演じる作家(役名・白川、モデルは井上光晴)の女癖の悪さはどうしようもありません。さすがトヨエツ、セクシーイケメン文化人には見えますが、フォローしようのないダメっぷりです。戦時中の苦労が原因で性依存や虚言になったのでしょうか。

感想②

寂聴も負けず劣らず業の深いヒロイン(役名・みはる、モデルはもちろん瀬戸内晴美)。それでも男と別れず、他の男ともグダグダです。晴美文学の不倫ドロドロって、相手の男にそこまでの魅力があるのか、全く伝わってきません。なのに、幼い子供を捨ててまで修羅の恋の道を歩むのです。「女の業」「恋の情念」の強さと恐ろしさが描かれています。

感想③

悲劇のヒロインにならない広末、素晴らしい!広末涼子がトヨエツの妻を演じています。このクズ夫を抱える妻が被害者ぶっていないのが良いです。離婚が大罪で我慢するしかない時代背景はありますが、それでも修羅を抱えて生きていく様子がいい。女優も年を重ねて妖怪化していきます。そもそも寂聴も「妖怪女」の系譜。美輪明宏、白石佳代子、岩下志麻、宮本信子、宮沢りえ、そして寺島しのぶ、みんな良い妖怪っぷりです。女の道は、こうでなくちゃ。その道に広末涼子がいらっしゃった。虚実交える生き様に、ゴシップ的にもニヤニヤしてしまいます。

感想④

井上光晴の娘が原作者というのがまた業が深い。惚れたはれたを超越した絆を書きたかったのかもしれませんが、実父の不倫っぷりを小説にしたいという気持ちはどこから来るのでしょうか。

感想⑤

仏の道はどこへ?頭を丸めてなお、二人でいると未練たらたらの色っぽいシーン。いや、煩悩を捨てろよ。一心にお経を唱えて、心を入れ替えろよ。近年「J 寂聴最後の恋」という暴露本じみた小説が出ましたが、「灰になるまで女」を実践していたのでしょうか、寂聴さん。仏教は無力なのか。それでも救われるのが仏の道か。

感想⑥

俳優陣はすごいです。ラストシーンの表情の変化だけで多くの感情が伝わってきます。俳優陣は人間の複雑な心の機微を見事に演じています。でも、総じて「せっかくの休日に何を見ているんだろう…」という感想です。いつか、この映画が自分ごとのように感じる日が来るのでしょうか。

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