しょうがない人
原田宗典という作家の「しょうがない人」というエッセイがある
内容は疎遠の父と再会した話
ある日父が原付を無免許で運転していて捕まったと警察から連絡があり父親の身元引受人で警察に向かう
いい歳して無免許で捕まるなんてどうしようもない父親と半端呆れていた
しかしその父親の事を自分よりも年の若い警官が偉そうに罵倒している姿をみて何ともいえない複雑な感情が湧き上がり
その若い警官に思わず「それでも俺の親父なんだよ!」と泣きながら怒鳴ってしまうという話だ
昔読んだそのエッセイの事を思い出した
先週親父が末期癌で永眠した
子供の頃からあまり親父と過ごした記憶は無い
自分と違って大柄な体格で声も大きい豪快な親父だった
思春期の頃自分が警察に補導され身元引受人に疎遠だった親父がたまたま迎えに来た時の事は今でもよく覚えている
帰りに激しい口論になりエスカレートして親父に掴みかかったら返り討ちにあい逆にボコボコに顔を腫らした
その時の感情は今でも覚えている
激しい怒りとは反面とても強い親父を誇らしくも思った
親父は家庭を顧みないしょうがない人だったが自分にとってはづっと強い存在で心のどこかで尊敬していたのかもしれない
しかし、屈強で大柄だった親父も癌で弱ってからというもの体重が半減し骨と皮だけの弱々しい姿になっていた
自分より若い看護師が偉そうに小さな子供をあやすような口調で親父に説教をしている…
何とも言えない屈辱的な感情が蠢いた
ベッドから車椅子に乗せる時抱きかかえたらあまりの軽さに淋しい気持ちになる
最後まで暴言ばかり吐いてしょうがない人
それでも俺の親父なんだよ!
そんなセリフが脳裏をよぎった
親父の訃報を聞いて駆けつけた時
まるで眠っているように穏やかな顔をしていた
複雑な家庭で色々ありましたが
育てて頂きありがとうございました
全ての凶元は自分だったという事実を知った今
家族とは縁を切る決心がついた
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