「チャンスを掴め」(改訂版)
《設定》
東堂(40) 営業部長
木下(28) 営業部主任
<東堂部長>
木下くん、あの企画は順調ですか?この案件は下村課長からの推薦を受け、プロジェクトリーダーに抜擢されたことを大いに期待していますからね。
<木下主任>
はい、現状B社の企画を上回ることは十分可能です。
<東堂部長>
いまから部屋に戻りますから、資料をもって説明をしてきてください。
<木下主任>
はい、承知いたしました。
<東堂部長>
下村課長、木下くんをお借りいたします。
(部長室にて)
<木下主任>
失礼いたします。
<東堂部長>
どうぞ。そこにお座りください。では、検討した具体策を説明していただきましょうか。
<木下主任>
はい、現状我が社の出せる見積もりは、最大限のコストカットにも関わらず、前回の発注の際よりも高品質は維持できます。詳細は、こちらの資料をご覧ください。
<東堂部長>
このコストについては、前回とほぼ変わりませんが、何故です?
<木下主任>
この部分に限っては、コストを削ると品質の低下が危ぶまれます。質の低下は、今後の継続取り引きを考えると、むしろ逆効果となるものと考えております。
<東堂部長>
なるほど。それは確かに一理ありますね。なにしろC社との付き合いは長いですから、規模は小さいですが、我が社としても継続取り引きが途絶えるのは絶対に避けなければならない取引先です。
<木下主任>
おっしゃる通りです。
<東堂部長>
わかりました、ただし、十分B社の動向には留意して進めてください。
<木下主任>
かしこまりました。
(執務フロア)
<東堂部長>
木下くん、これはどう言うことですか。コンペは完璧と言っていたはずでしたよね。
<木下主任>
はい・・・できる限り、我が社の優位性を説いた上でのことでしたので・・・
<東堂部長>
ではなぜ我が社の案が通らなかったのですか。
<木下主任>
直前になって前回とは担当者の変更があり、全体的な質よりもコストにのみフォーカスされたことが要因でして・・・
<東堂部長>
どの程度の差があったのですか。
<木下主任>
それが、我が社の価格をほんの僅か下回っただけでした。
<東堂部長>
では、質の部分はどうなんですか。絶対の自信を持っているかのような説明でしたよね。
<木下主任>
はい・・・その点については、かなり詳細に説明をしたのですが・・・とにかくコスト・コストの一点張りで。金額を上回る我が社の提案はほとんど聞き入れていただけませんでした。申し訳ございません。
<東堂部長>
貴方には期待してたんですが、残念です。
<木下主任>
申し訳・・・ございません・・・
(数ヶ月後)
<木下主任>
東堂部長!C社より、連絡がありまして、再度コンペを行いたいとのことで、我が社に参加してくれないかと打診がありました。
<東堂部長>
また我が社に?先方の要望は?
<木下主任>
どうやら前回の案件を進めていった結果、コストカットの影響か、当初の要件定義を見直せざるををえなくなり、開発が中断しているとのことでした。
<東堂部長>
どの部分に問題が生じたのかわかりますか。
<木下主任>
はい、担当が前任者に戻り、大まかな点を聴取しております。
<東堂部長>
名誉挽回のチャンスですね。
<木下主任>
はい、当初の案を更に見直しし、よりブラッシュアップした提案ができるチャンスです。
<東堂部長>
わかりました。貴方の活躍は期待しています。
<木下主任>
はい、承知いたしました!
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