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リングラン叙事詩 第一章 冒険者達の旅立ち 台本

(オープニング)
とある世界
とある時代
私たちが知ることのない場所にリングラン島という島がある。
この島には一つの神話があった。

太古の昔。
二つの神による天界の争いがあった。
光の神ヴィシュ。闇の神デーム。
両者の争いは大地を揺るがし、
互いの従える竜による戦いは、やがて大地を割き、
大きなうねりは山脈を作り、
吐かれる炎が大地を焦がし砂漠となった。
そして双方の神と双方の竜の戦いが終わり、
大地に堕ちた竜の骸を苗床に、草原は大きな森となった。

そして伝承は続く。
竜の目から生じ散らばりし水晶を、神の台座に捧げしとき、
その地はあるべき姿へ回帰せん。

リングランに伝わりし、神話である。

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(本編)
カーン    ここは、引けー!!
       無駄死にはするな!
       スレイアールめ、必ずこの仇は!

ここは、モーリスタティア王国商業都市スローデンにあるとある宿屋。
ここで5人の男たちが休息を取っていた。
モーリスタティア王国戦士団アルフレッド、同国モーリスタティア正教会司祭補佐のヴァイス、モーリスタティア魔術教会の魔術師ルークス、そして彼を護衛するために雇われたメルキア公国の傭兵カーン、ザスアル王国出身のドワーフ、ギリアムである。

ルークス   大丈夫ですか?だいぶうなされていたようですが。
カーン    ああ、夢か。忌々しい・・・
アルフレッド どうした?
カーン    いや、俺がまだ傭兵になる前に、ザスアル王国で騎士団にいた時のことだ。スレイアールから大規模な夜襲を受けてな。一個師団を任されていた俺の隊の大部分が戦死した時を今でも思いだす。
ヴァイス   それは、ザスアル王国の滅亡をするきっかけとなったあの大戦ですか。
カーン    ああ、俺はその後傭兵となって、メルキアへと渡ったがな
ルークス   人ならざるもので出来た大群になすすべもなくザスアルが落ちた時のことですね。
アルフレッド その話は、当時モーリスタティアの騎士だった親父から幾度となく聞いたことがある。他国との交易がほとんどなく、土地も不毛で、ザスアルの肥沃な土地に狙いを定めて、王国ごと滅亡させた大戦のことか
カーン    ああ、スレイアールはザンズム連峰とフシラズの森に四方を囲まれ、産業も発達しておらず、化け物どもが跋扈している場所だからな。その化け物どもも、スレイアールの魔術師サルーデンの意のままにされている。魔法というのは、そうした汚いやつをのさばらせるらしい。
ギリアム   カーンよ、少し言葉が過ぎるのではないか。
ルークス   ギリアム、ありがとうございます。私は気にしておりませんよ。
カーン    いささか、言葉がすぎた。申し訳ない。
ルークス   いえいえ、お気になさらず。

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アルフレッド さて、国王陛下より下命を受けたザスアル王国跡地の要塞都市バアルへの偵察についてだが、経路は2つある。一つは、スローデンをひたすら北上し、直接バアルへ到達するルート、もう一つはフシラズの森の南部の交易都市クルードを経由するルート。何を選ぶ?
ルークス   バアルへ直接到達するルートはファーランド草原が広がる、かなりひらけた場所ですから、大群がやってくるやもしれません。そのまま進むのはリスクが大き過ぎるかと思います。
ギリアム   では、フシラズの森を北上していくルートの方が良いと。
ルークス   ええ、少なくとも私はそう思います。
ギリアム   ワシは反対じゃ。フシラズの森は妖魔が多い。むしろ危険なのはそっちかと思うが。
ヴァイス   ギリアムのおっしゃることは重々承知です。ですが、バアルへ直進することは、偵察としては厳しい経路。要塞の側面からの方が偵察には良いかと私も思います。
アルフレッド カーンはどう思う。
カーン    俺はどちらでも。出てきた化け物どもを迎え撃てば良い話。
ギリアム   そんな臆病にならんでもいいとワシは思うがな。まぁ良い。皆の判断に任せる。
アルフレッド ギリアム、すまん。では、クルードを経由してフシラズの森を北上するルートで行く。

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一行はそのまま、西方へ向かって歩を進め、交易都市クルードへ到着した。その夜のことである。

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ヴァイス   どうしたというんでしょう。住民の方たちの騒ぎが大きいです。
ギリアム   これはどうやら森から化け物どもが出てきたようだな。
アルフレッド ここは住民の安全を守るために、妖魔討伐といこうか。
カーン    そうだな。ここを足がかりにするには、邪魔者は消えていただく。それに休んでいるところを邪魔され、いささかイラついているしな。
アルフレッド ルークス、いいか。
ルークス   もちろん、その前にみなさんの武器へ力を加えておきましょう。
「マナよ、我らが元へ参りて、その力を与へよ」
アルフレッド ルークス、感謝する。剣に光が宿った。では、いざ。

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一行が屋外へと飛び出すと、住民を襲う妖魔たちの姿があった。
ここクルードは交易都市であり、自警団もほぼ大きな力もなく、防戦するすべしかない状況であった。
住民は逃げ惑うしかなく、街は混乱に満ちていた。

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カーン    先鋒は俺がいただく。
ギリアム   ふん、無理をしおって。ワシも突撃じゃ。
(化ものの声)
アルフレッド 貴様ら、無事で森に帰れると思うなよ。
(剣のぶつかり合う音)
ルークス   「マナよ、火の力を矢とし、放て!」

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ルークスが詠唱を唱えると、指先より、炎の矢が現れ、妖魔めがけて放たれた。放たれた矢は妖魔の目をとらえ、その目を貫いたと同時に妖魔の断末魔の叫び声が発せられた。

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カーン    うっ・・・
アルフレッド カーン!大丈夫か!
カーン    何、ちょっと刃が掠っただけ。複数相手も楽じゃない。
アルフレッド 一旦引け、ヴァイス!頼んだぞ!
ヴァイス   承知しました。
       「主たる神ヴィシュに祈ります。この者に加護を」

ヴァイスが詠唱を唱えると、手のひらより光が発せられ、カーンの傷が癒えていった。

カーン    すまんな。
ヴァイス   ご武運を!

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およそ一刻が過ぎた頃、妖魔の群れは一掃され、都市に平穏が帰ってきた。

ギリアム   たかがこれしきの妖魔どもに情けない。
カーン    気配は感じたが、後ろから何体も来れば少しは手こずる。
アルフレッド まあまあ、その辺にしてくれ。
ギリアム   しかし、妙だ。
アルフレッド 何がだ?ギリアム
ギリアム   今日は新月の夜。普段であれば、妖魔どもが活動をするような日ではない。
ルークス   そうですね。たしかに彼らの行動も必要以上に統制が取れていました。
ヴァイス   では、もしかして。
ギリアム   あの妖魔ども、サルーデンの息がかかった奴らと思ってもあながち間違いではなかろうて。
アルフレッド まさか、ここまでスレイアールの手が伸びているというのか。
カーン    どうやらそうらしいな。フシラズの森も全て奴らの息が。
ギリアム   いや、森全てがそうだとは思わん。気に入らんがあの森にはエルフどもも住み着いておる。森が全てサルーデンの手に落ちているとは考えられん。エルフどもは、森の結界の中で生活しておる。それは人間の目では見えん。ワシらドワーフなら、結界の端くらいはわかるがの。

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その頃、スレイアール帝国内では・・・。

サルーデン  どうやら、こちらに向かう斥候がいるらしい。所詮南部の小国如きがどう足掻こうといずれは我らの軍門に下る国。いずれ滅びゆくさだめだ。せいぜい無駄な抵抗でもするがいい。
まあよしんば、このバアルに到達できるだけでも褒めてやるわ。到達したところで何も変わらんがな。
はて、何か言いたそうだなガルハースよ。
ガルハース  貴様の操る妖魔どもを使って、なんの何の力もない交易都市を襲わせるなど、大義もない狼藉(ろうぜき)。魔術とやらがどうであろうと、そのようなやり方には承服しかねる。
サルーデン  ほほう。ではお主が先鋒を切って乗り込むつもりか。随分と軽率なことよ。所詮騎士風情には、このスレイアールを支えることなど到底無理なこと。せいぜい部下どもの面倒でもみているがいい。
ガルハース  ふん、貴様と話すだけで騎士の誇りがけがれる。
サルーデン  誇りか。そんなもの何の価値も産まぬわ。さて、ではバアルに戻るとしよう。騎士団長殿。またお会いしよう。ふははは。

ガルハース  魔術師風情が。では、皆のもの支度を済ませ。一旦休息を取る。明朝、一個師団を残してバアルへと移動する。

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クルードでの妖魔の襲撃の後、アルフレッド一行はクルードの酒場へ向かった。

ヴァイス   ギリアム、森の結界のことですが何かご存知のことはあるのですか。
ギリアム   あまりエルフどもの話をするもの癪(しゃく)に障るが、知っていることならここで話しておこう。
フシラズの森には、エルフの里があると言う。ただ、わしも森のどこにあるのかまでは知らん。
だが、そこだけは必ず迷い人が出ると言う。ドワーフのわしらは多少の気配はわかるので、皆をそこから遠ざけることはできるだろうて。
アルフレッド エルフといえば精霊使い。もし俺たちに力を貸してくれるのならとても頼もしい味方になるんだが。
ギリアム   まぁ無理だろう。スレイアールの連中がフシラズの森を南下した際も、エルフどもは表には現れなかったくらいだ。
カーン    サルーデンなら、それこそエルフの里まで蹂躙しそうなものだがな。
ルークス   それはないかと思います。
カーン    なぜだ。
ルークス   エルフの里は不可侵の場所。それにたとえサルーデンであったとしてもエルフを全滅させることなど到底難しいことと思います。
ヴァイス   それはなぜですか。
ルークス   どんな大魔導師とは言っても、エルフの長老といえば数千年も生きるほどの種族。人間の知識では到底想像もできない力を持っていることでしょう。簡単にサルーデンの手に落ちるとは思えません。
カーン    なるほどな。まぁ、そんな連中の力を借りなくても、問題はない。
ギリアム   わしもエルフどもの力を借りるつもりは毛頭ないがな。そもそもエルフの連中とは組むつもり毛頭ない。
アルフレッド 少しでも力になってくれるのならとも思うけれどな。
ギリアム   ならワシはここで失礼させていただく。エルフどもと共に行動するなど考えられん。
ヴァイス   ギリアム、そうカッカしないでください。
ギリアム   ばかもん、冗談もわからんのか。まだまだ青いな、お主は。

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酒場の店主  あんたらか。クルードを救ってくれたのは。
アルフレッド 救ったと言うか、僕らは妖魔を倒していくことも旅の目的としているから当然のことをしたまでのこと。
酒場の店主  いやいや、十分だ。ここはわしの奢りだ。好きなだけ呑んでくれ。
ギリアム   それはありがたい。では遠慮なく。
ルークス   店主殿、お店のお酒を全て飲み干されてしまいますよ。
酒場の店主  なんだと、それは勘弁してくれ。
一同     ははははは。

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一行は酒場での宴を十分楽しんだ後、宿へ戻り旅支度を整え眠りについた。
そして、平穏な朝を迎えた。

アルフレッド みんな、おはよう。さて、今日はいよいよフシラズの森に入ることになる。くれぐれも後方には気をつけてくれ。
カーン    気遣いは無用だ。これでも傭兵生活もだいぶ長い。自分の身は自分で守る。
ギリアム   ふん。昨夜は後ろを取られておいてよく言う。
カーン    ギリアム、売られた喧嘩なら買うぞ。
ヴァイス   まあまあ、二人とも変な争いはやめましょう。
ルークス   相変わらずですね。お二人とも。ですが、喧嘩するほど仲が良いとも言いますし。
ギリアム   ふん。
カーン    ふん。
アルフレッド さてと、いくぞみんな。夕刻までに森の中を進めるだけ進んでおきたい。

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一行がクルードの街を出てしばらく歩を進めると、フシラズの森の入り口に到達した。
フシラズの森。
竜神の森とも呼ばれるこの森は、密集した木々で形成され、しっかりと方向を見定めていなければ、たとえ優秀な狩人でもいとも簡単に迷うほどの森である。

アルフレッド ここがフシラズの森か。確かに噂通り、人を寄せ付けない雰囲気が漂っているな。
ルークス   この森はかつて神々の戦いの後、亡骸となった竜の体から、やがて大きな森へと成長したと言われる森です。この森が出来たのは神話の時代のころ。この島で唯一、妖精界との繋がりがあるとされています。
ギリアム   この森の一部はザスアルの王都であるフスにも面していた。ザスアルの民の数多くのものが森に入り、帰ってくることが少なかったといういわくつきの森じゃ。
カーン    俺もザスアルでの騎士団時代、部下には決して森に入るなと命じていた。大切な部下を失う訳にはいかんからな。
ヴァイス   ではなぜ、森に入るものがいたのですか。
ギリアム   森には多くの果実が自生する場所がある。わしはそこに立ち入ったことがあるので知っておるが、一つの村を養っていくには十分な量じゃ。もともとザスアルは農業国家。そこで苗木の多くを手に入れれば育てていくは容易だろうて。
アルフレッド しかし、帰ってきたものが少ないのはなぜなんだ。
ギリアム   エルフどもじゃよ。
アルフレッド エルフがどうかしたのか。
ギリアム   そうじゃ。果実が自生する周辺のどこかにエルフの里があると言われている。不用意にその場所へ立ち入れば、エルフどもの怒りを買うことになる。そして、そこで消息を断つものが現れていたと言うわけじゃ。
ヴァイス   では、エルフの里は確実にあると。
ギリアム   間違いはない。エルフほどではないが、わしらも神話の時代よりそれほど離れていない時代からの種族。その程度の知識なら人間より余程持っておる。
アルフレッド 何にせよ。ここを抜けなければバアルには辿り着くことができない。用心して進んでいこう。宿営を張るときは、ギリアム頼む。
ギリアム   承知した。
カーン    部下には入るなと言っていた俺が自ら入っていくことになるとはな。人生何があるかわからんものだ。

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一行が森を進み夕刻に差し掛かった頃のことである。

アルフレッド こんなところに洞穴がある。どうだろうここを宿営の場所とするのは。
ギリアム   待て。静かにしろ。奥に何かいる気配を感じる。

洞窟を離れ、とおくの物陰から注意深く見ていると、妖魔の群れが洞窟へと入っていった。

アルフレッド あれは・・・。
ルークス   確かです。妖魔ゴブリンでしょう。
アルフレッド では、サルーデンの息のかかった・・・。
ルークス   いえ、大きな魔力は感じません。おそらく、この森に昔から棲息していたとみて間違いなさそうです。
ヴァイス   あ、みてください。群(むれ)の中に人間の女性が・・・
ギリアム   おそらく森の近くにてゴブリンどもに囚(とら)われたんじゃろう。
アルフレッド では、奴らから救うのはどうだ。
カーン    わざわざ、助けに行く義理はなかろう。森を進む方が先決だ。
アルフレッド ではみすみす見過ごせと。
カーン    そうとも言えるな。
アルフレッド それでも誇りある騎士団の出身なのか。
カーン    俺はもう騎士の誇りは失った。そうでなければ金で雇われる傭兵などやっているわけがないだろうが。
アルフレッド クルードではあれほど勇敢に戦っていたじゃないか。
カーン    あれは、ただ静かに休んでいたかっただけだ、好き好(この)んで住民を助けたかったわけじゃない。
ルークス   お二人とも。少し気を鎮めてください。
ヴァイス   そうです。ここは変な言い争いをしている場合ではないと思います。私は女性たちを助けたいと思います。
ギリアム   そうじゃな。ここより先に宿営を張るには、いずれにしろ奴らは邪魔じゃ。女どもを助けるつもりはないが、ゴブリンどもを一掃すれば、結果は同じこと。
カーン    ふん、仕方ない。多少は体を動かしてやる。
アルフレッド カーン、助かる。
カーン    礼を言われる筋合いはない。では、行くとするか。
アルフレッド 相変わらずだな。では、いざ参る。
ルークス   その前にいつものものを。
アルフレッド そうだった。すまん。
ギリアム   気持ちが焦ると足元をすくわれるぞ。
アルフレッド そうだな。忠告いたみいる。
ルークス   では、「マナよ、我らが元へ参りて、その力を与へよ」

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一行が茂みから飛び出すと、ゴブリンたちもその存在に気が付き、アルフレッド達に向かってきた。

(ゴブリンの叫び)
アルフレッド 今度は俺が一番槍をいただく。
カーン    若造が。やられるなよ。
ヴァイス   「主たる神ヴィシュに祈ります。邪悪なるものに光をもって戒めを与えん」

ヴァイスが詠唱を唱えると、空間から現れた光の玉がゴブリンめがけて飛んでいき、一体のゴブリンの頭を包んだ。それと共にゴブリンの絶叫がこだました。
その前方でアルフレッドが手にしたロングソードを振り下ろすたびにゴブリンたちの鮮血が飛び散り、一体また一体と確実にゴブリンの数を減らしていった。

アルフレッド カーン、ギリアムここは任せた。俺は洞窟の奥に連れ去られた女性たちを助けに行く。
ルークス   いけません!洞窟内は暗闇に支配されている場所。待ってください。「マナよ、灯火(ともしび)をおこし、道を照らさん」

ルークスが詠唱を唱えると、アルフレッドの頭上に小さな火がともり、洞窟の奥を照らした。

アルフレッド ルークス、助かる。よし、見つけた!皆さん、早くこちらへ!

そう叫んだアルフレッドの声が洞窟内にこだまするとともに、巨大な風貌をしたゴブリンが姿を現した。

ルークス   アルフレッド、いけません。あれはこのゴブリンの群れの長。あなた一人だけでは!
アルフレッド しかし、みすみす女性達を見逃すことはできない。
カーン    ふう、若いな。若さだけでなんとかなるものでもないぞ。
アルフレッド カーン。
ギリアム   そうじゃ。いつまでわしらを外で遊ばせているつもりじゃ。
アルフレッド ギリアム。二人とも助かる。では、行くぞ、みんな。

アルフレッドの太刀を防いだゴブリンであったが、二の太刀であるカーンの一手に大きな痛手を負うと共にギリアムの斧の一閃で、断末魔の叫び声をあげてその場に崩れ落ちた。

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ギリアム   さすがにゴブリンどもの長だけはある、その身になかなかの手応えがあったぞ。
カーン    まぁ、俺がいれば当然の結果だな。
アルフレッド 二人ともありがとう。さすがの太刀筋。恐れ入る。さあ、皆様方もう大丈夫です。森の入り口までお送りいたします。
ギリアム   やれやれ。今日の宿営は森の外になるわけじゃな。
カーン    これなら一度クルードに戻って酒でも飲むか。
ギリアム   ほう、たまには意見が合うの。

一行がクルードに到着すると住民達からは大きな歓迎を受けることとなった。街を救ったのはこれで2度目。
英雄の凱旋に街が活気を帯びたのは当然のことであった。

第一章 完

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