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「出る杭」を応援し続けていたら、世界平和を目指すようになった話

講演や取材をお受けするとほぼ決まって聞かれる事がある。
「ヤッホーブルーイングの社員はなぜみんなイキイキと働いているんですか?」「どうしてヤッホーの社員は楽しそうなんですか?」といった内容だ。そんな風に見ていただける事は非常に誇らしい。
しかしながら、「月曜日がつらい」といった話に多くの共感が集まる昨今、なぜこのような組織運営ができているのか不思議に思う方も多いようなので、せっかくなのでnoteにも書いてみようと思う。

今回は筆が乗って少し長くなってしまったが、後半には新たな取り組みについて触れているので、是非最後まで目を通していただけると嬉しい。

ヤッホーブルーイングの文化「知的な変わり者」

私達の組織文化の中の重要な考え方に「知的な変わり者」というものがあるので紹介したい。

世間一般的には、得意なことも苦手なことも関わらず、何でも人並みにきちんとこなせるようになることが大事だとされているのではないだろうか。
当然だが、得意な事をやっている時は他の人よりも簡単に上手に出来たり、本人も楽しかったりする。一方で、苦手な事を頑張ろうとしても、人より時間がかかってしまう上に、苦労した割に出来は良くても普通程度。その程度だと本人も楽しくはないだろう。

そこで、私達の会社では、得意な事を追求してより磨きあげることを推奨している。
得意な事をより磨くには努力し勉強する事が必要だ。それが積み重なり、誰にも真似できない領域に達すると周囲から「あの人は変わっている」と言われるようになる。
そんな個性と努力が両立している状態を「知的な変わり者」と言っている。

その「得意」を分かりやすく可視化出来るように全社員が『ストレングスファインダー』という資質テストを受けている。

※ストレングスファインダー®(現在のクリフトンストレングス)とは、米国ギャラップ社の開発したオンライン「才能診断」ツールである。Webサイト上で177個の質問に答えることで、自分の才能(=強みの元)が導き出される。ストレングスファインダー®における「才能」は次のように定義されている。
『無意識に繰り返し現れる思考、感情、行動のパターン』
すなわち、自分の思考、感情、行動の「特徴」そのものが「才能=強みの元」だと言うのだ。

例えば、私の場合は『自我』という資質がある。
『自我』は場合によっては自己中心的と取られてしまうようなこともあるが、一方で「人から注目されればされるほど活躍する」「人前でも恥ずかしがらず堂々と行動出来る」という特徴がある。
そんな『自我』の資質が存分に発揮されたエピソードがある。

今ほどクラフトビールが注目されていない頃、どうすればファンに楽しんでもらえるかを常に模索していて、ビールとは一見関係の無いようなメルマガや、面白いと思ってもらえそうなweb企画などを作ったりしていた。

あるとき、場違いとも言えるくらい光栄な表彰を頂いたことがあった。「この授賞式の様子も一つのコンテンツとしてファンに喜んでもらえるのではないか」と考え、奇抜な仮装をして表彰台に登る事にした。そしてそれをインターネット上で生配信したところ、ファンからは非常に大きな反響と好評をいただくことができた。

それ以降も表彰いただく度に仮装を続けていると、やがて、よなよなエールやヤッホーブルーイングに対して、「知的な変わり者」の印象や、エンターテインメント性、個性的でユニークなイメージをもっていただけるようになってきたように感じる。

一見バカバカしい活動に見えるかもしれないが、こうした企画がファンのみなさんに愛着をもって頂けるようになったのは、私自身にとって得意なことであり、私自身が楽しんでやっていたからに他ならないと思う。

2014_楽天ショップオブザイヤー2013授賞式_三木谷社長

左が私、中央が楽天の三木谷社長

社内は知的な変わり者ばかり

上記は私自身の例だが、社内にはこうした事例は枚挙にいとまがない。
例を挙げると、山が好きすぎる人事部門のディレクター(当時)は、半年間休職し、ヒマラヤへ登山に行くことを決めてしまった!採用説明会でも「選考に進んでいただいても、僕は面接の場にはいません。なぜならこれから登山のために半年休職するからです!」と学生の皆さんに向けて報告をしていた。
人事責任者が採用時期に休職するという決断は学生にとっても大きな波紋を呼ぶと思われるだろう。しかし、なんとその年の採用説明会のアンケートでは彼の決断に対して非常に好意的な反応が多く、入社意向度が高まったのだ。それだけでなく、休職直前にはメディアにもご紹介いただき、さらに注目を集める結果となった。

その他にも、コンサル出身で分析が得意な社長室のディレクターは、冗談までロジカルに理解しようとする変わり者だが、データの読み解きや構造化・資料作成にかけては社内でも右に出るものはなく、私は大雑把なタイプなので彼のフォローがあることで最高のコンビネーションが発揮できていると思っている。
こんなように、みんな得意領域を存分に発揮して自分らしく働いている。

そんな風に「知的な変わり者」であることを推進し続けた結果、業務上の成果が出るだけではなく、社員の働きがいもみるみる向上し、かつては「まるでお通夜のような暗い雰囲気」だった社内に活気が溢れていった。近年では5年連続でGreat Place To Workの「働きがいのある会社」ランキングでベストカンパニーに選出いただくようになった。

このようにヤッホーでは「出る杭を伸ばす」文化である「知的な変わり者」という考え方をを今も大事にして、そして磨き続けている。

そして私たちは「世界平和」を目指すようになった

我々の会社の存在意義=ミッションは「ビールに味を!人生に幸せを!」だ。
大手のラガービールが市場の99%以上を占める中、エールビールという新しい味わいを世に提供する事で、様々な味わいや香りの中からビールを選択して楽しむという新しいビール文化を築きたい、そしてビールファンに幸せをお届けしたい。社長就任当初、そういう思いでこのミッションを掲げた。
つまり当初は前半の「ビールに味を!」の部分への意識が強かったのだ。

しかし、このミッションのもとで知的な変わり者達が力を合わせ、ファンが喜ぶコンテンツ制作やコミュニケーションを考え、実施しつづけていったところ、面白いことがどんどん起きていった。

ある時は通販のメルマガに対し「ありがとう」という返信が届くようになったり、またある時は受注対応に対して「神対応!」とSNSで投稿をされるようになった。そしてある時、ファンが喜ぶことはなにかと考えて、ファンと交流する飲み会イベント「宴(うたげ)」を企画した。すると、そこに集まったファンは大喜び!中には「今日が人生で一番幸せな日だ!」とおっしゃる人もいた。

(この声を聞けた私の方が人生で一番幸せな日と感じて、帰りの新幹線で目がうるっとしてしまったのは言うまでもない笑)

よなよなエールの宴

こうしたファンの声に味をしめた私達は、次々にファンに喜んでもらえるような企画を実施していった。

実際の製造現場に潜入する「醸造所見学ツアー」は元々はマーケティング系のチーム中心に担当していたのだが、やがて部署に関係なく全社を挙げてより良いものに改善を進めて行く機運が高まっていった。

例えば、在庫のズレが発生しやすかったお土産販売コーナーも、普段注文処理に携わるスタッフが参加することによってミスが発生しづらい組みに改善したり、製造スタッフが参加することで、他のスタッフもより詳しい解説ができるようになるなど、回を重ねるごとに進化が加速していった。

知的な変わり者達が力を合わせて、得意領域で活躍するとこんな素晴らしい事が起こるのか!と感動した。

前述した、「宴」はファンと直接会って乾杯・交流するイベントだが、参加者の満足度が非常に高く、またリピーターも多い。運営メンバーを完全には固定せず、回によって様々なスタッフが登場することでそれぞれの得意を活かしてお客様に楽しんでもらえるようなサービスを提供している事がその要因の一つと言えるだろう。

40人規模からはじまったファンイベントも、規模も大きくなり、キャンプ場を貸し切った1,000人のイベントや、近年では単日で5,000人ものファンが集う大型イベントにまで発展した。
昨今のリアルイベントが難しい状況下においても、オンライン上でのイベントには2日間で延べ10,000人もの方に参加いただくことができた。

ファンに楽しんでいただくことだけを考えて開催を続けていると、初対面のお客様同士がコンテンツやイベントを通して意気投合してイベント後も仲良くなる、という話も聞くようになった。なんと我々のイベントがきっかけでご結婚されるカップルまで現れたのだ(!)。

ちなみにこれだけの大人数が集まり、かつ飲酒を伴うイベントに関わらず、私達のイベントでは喧嘩やお客様同士のトラブルはほとんど起きない。よなよなエールを飲んでいる時間は実に平和な時間が流れているのだ。

私たちの想いが届く市場は今はまだ日本だけだが、夢は大きく、いつかは世界!といつしか考えるようになってきた。

かつて「夢はよなよなエールでノーベル平和賞!」なんて冗談交じりに言っていたが、知的な変わり者が力を合わせることで、ファンのよろこぶ姿を目の当たりにすることが日常的になった私は「私達は本当に、世界平和に繋がる活動をしているんじゃないか」という確信を持つようになった。

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「よなよなビアファンド」発足

ビアファンド_KV

社内にいる「知的な変わり者」という出る杭をもっと伸ばすようにしていった結果、少しずつ世界平和に近づいている実感がある。
同様に、社外にいる知的な変わり者達を応援してみたら、もっと世界平和の実現が加速するのではないだろうか。

そんな思いから、新たな取組であるよなよなビアファンドを発足することを決めた。

よなよなビアファンドとは、社外にいる知的な変わり者「よなよな人」にビールを投資することでよなよな人の活躍を支援する活動である。

・・・少々分かりづらかったかも知れない。

【説明アリ】ビアファンド仕組み図

よなよな人とは、「限りない偏愛と突き抜けた知性で社会の多様性に新しい1を加え、世界に笑顔を生み出す愛すべき変わり者」である。

ファンドといってもいわゆる投資ファンドの類ではない。そんなよなよな人に、我々クラフトビールメーカーが出来る支援と言えばやっぱりビール!

よなよなエールは知的な変わり者の輪を広げる必需品だ。よなよなエールを投資(プレゼント)することで、その活動と輪をさらに加速していただきたい。そして、その活動に惹きつけられた人たちにも、よなよなエールとともにさらなる笑顔を生んで欲しい。

つまり1本のよなよなエールが、知的な変わり者による新たな価値創造の一端を担い、世界に多くの笑顔が生み出されるということになる。これはまさに私達の考える世界平和に一歩近づくというわけだ。

そんな活動全体を「よなよなビアファンド」と位置付けている。

「よなよな人」第一弾は…

そして、投資先である「よなよな人」第一弾には夜空というキャンバスに人工流れ星を彩る活動を行う「株式会社ALE」の代表岡島礼奈さんを選出した。

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岡島礼奈さん
宇宙ビジネスのベンチャー企業「株式会社ALE」代表取締役社長。人工流れ星の事業では見た人を笑顔にするだけでなく、科学の発展のために研究データの活用にも力を入れている。星空の綺麗な鳥取県で生まれ育つ。『ホーキング、宇宙を語る』を読んだことをきっかけに宇宙に関心をもった。中学生の青春時代、星座よりも「ブラックホールはどの方向あるのか」を気にしていて、宇宙の話を分かり合える友達は周りにいなかった。大学時代に生まれて初めて見た「しし座流星群」に魅了され、見たい時に、見たい場所で、シャワーのように降り注ぐ流れ星をつくりたいと思い「株式会社ALE」を設立。人工流れ星の事業では見た人を笑顔にするだけでなく、科学の発展のために研究データの活用にも力を入れている。「何の役に立つのか」と問われてきた科学の発見こそ、人類の問題を根本から解決するようなパラダイムシフトを起こすと信じ、科学の発展への貢献に強い思いを持つ。いつか太陽系外への探査を実現するのが夢。

株式会社ALEでは、人工流れ星の他にも大気データの取得や人工衛星の研究を行っている。岡島さんは「何の役に立つのか」と言われるような領域の進歩こそが、未来の問題の根本を解決するパラダイムシフトを引き起こすと本気で信じていて、そのような領域で今後の科学の発展に貢献したいと語る。
領域こそ違えど、まだ見ぬ未来を叶えようとする姿勢に我々も共感する部分が多い。このような形で岡島さんを応援出来る事をとてもうれしく思っている。

そして、我々はこうした出る杭である「知的な変わり者」をもっと応援していきたい。
すでに注目されている人もいるが、まだ世の中に知られていない人の中にも素晴らしい知的な変わり者がたくさんいるに違いない。

よなよなビアファンドの支援によって、そうした方々を応援してくれる人が増えたらもっと面白い未来になるはずだ。
そしてそんなよなよな人の活躍を是非、よなよなエールで乾杯をして祝福したい。
こうした活動を通じて幸せの輪が広がることで世界平和にまた一歩近づけると信じている。

最後に

いかがだろうか。
社員がみんな楽しそうに働く理由と、その結果として生まれた新たな試みであるよなよなビアファンドの紹介をさせていただいた。

出る杭がもっともっと出て、大活躍する社会を応援したい。
そんな思いから生まれたこのよなよなビアファンドを是非見守っていただけると幸いだ。

Clubhouseイベントのご案内(終了しました。記事公開中です。)

ご自身も「出る杭」である、澤さんとがくちょ(仲山さん)と私の3人で、1時間「出る杭」についてディスカッションをします。
ぜひ、みなさん聞きに来てください!

トークセッション

日時  :2021年4月9日(金)20:00~21:00
配信方法:音声SNS「Clubhouse」
     ※参加には音声SNS「Clubhouse」のアカウントが必要です。

イベントは終了しました。Clubhouseで実施した鼎談の内容を、参加者の承諾を得て、下記のページで公開しています。ぜひ、ご覧ください!