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218

推しの誕生日が2月18日だと知って、私は何かを悟った

これは運命の日なんだ


2月18日

多分私が死ぬまで一生背負い続けるであろう日

誕生日なんかよりもずっと大事な、2.18

私が死んだ日


貴方は猫と話せる魔女になったんだ

迷いの無い足取りで空を飛んだ貴方の

全世界に発信されたそれを





不登校になっていた私に舞い込んできた知らせ



私たちは2人揃って死のラインのふち際に立ちながら生きていた

彼女が先にラインを跨いだんだ



彼女も、私も同じバンドが好きだった

彼は死にたい私たちがギリギリ生きてられる、慰めだった


彼女は、彼に「ありがとう」と言い残してこの世を去った






彼は次の晩、訳が分からなくなるぐらい泣き叫んでいた

ネットは彼に対する誹謗中傷と死んだ彼女の個人情報を必死にかき集め、ネタにして楽しんでいた




周りの大人は、自分を守った


私は彼女を知らないから分からない

本当に彼女が虐められたのか、性的虐待されていたのかなんて

でも、大人は全てなかったことにした

彼女はネットに殺されたのだと言った


そんな事じゃないことぐらい分かっているくせに


誰も悲しんでいるようになんか思えなかった


泣いていたとしても、弔いの言葉を述べていても、全部嘘のように感じた。だって、あの人たちは今この悲しみを忘れているだろうから

私は自分が死んだらこうなるのかと思い、彼女に自分を重ね合わさずに居られなかった


ネットの人も、周りの人々も、愛なんてこの世になかったんだ


私がそれまで15年間見てきた世界は虚像だったのだと思った


周りの目線は私を「ヤバい奴」として見るようになった

まあそりゃヤバい奴なんだろうけどさ



ショックだった私の事、いたわること無く根掘り葉掘り探られた

鳴り止まないSNSの「死んじゃダメ 生きなきゃダメ」の文字達も

シカトするように言われた友達も、全部、全部世界が歪んでいった

誰も助けてくれなかった




辛さは、大きな海のようだ

どんどん深海へと溺れていった

息ができない苦しみは、生きる苦しさだった

こんな世界なら、死んだ方がましに決まっていた


誰も彼女の苦しさに向き合わなかった
だから彼女は死んだ

誰も私の苦しみにも向き合ってくれなかった
親を除いては
だから私は生き延びた


でも、彼女にその一手がなかったのは彼女が悪かったのだろうか

私がなにか良い事をしたからだろうか

彼女がラインを跨いだのは、たった1人の救いの手が及ばなかったからで

何も罪のない彼女が生きることを諦めなければいけなかったこの社会に、憎悪の感情が止まらなかった



孤独だったし、辛かった

死ぬ事が逃げだなんて思わなかった
今でも思う

死ぬ事が逃げだという人は、それほど辛いことを経験したことがないんだって

死ぬことより生きることの方が何億倍も辛い




「重ね合わさなければいいのに」「考えすぎだよ」「気にしすぎ」

彼女の事をその時だけ上辺で弔いながらも悲しんでいる人を貶すような言葉




私はまだ1年前から抜け出せていない

1年前の今日から、私の中の貴方は昇華していない

1年前にも言った、きっと、一生昇華しないんだ




ここまで私の全部、ぜーんぶ私のエゴ

私が貴方の辛さに寄り添っても、もう貴方はいない


死んだらもう何も届かないもんね


去年はもう死ぬと思ってたのにもう1年も経っちゃったね、



もう、1年


生きている間は、勝手に貴方を背負って生きるよ

にんげんどもは馬鹿だにゃーって、思っててね









追記

2月18日、深夜1時

幸せな気持ちのまま今日を過ごすんじゃないかとさえ思っていたけれど、そんなことは無かった

貴方が1年前の今日、この時間に全てを決めて最期の夜を過ごして、空を飛んだのだと思うと体の底から私の体が私の生を疑う

私は何故生きているのか、このまま眠ったら死ぬんじゃないかなんて考える


今の私はあなたと同い年 同じ分生きて、今日から私は貴方より多く生きることになる

貴方が生きなかった人生を歩む 貴方が見なかった世界を見る

貴方が一線を超えた今日を生きて、貴方が耐えられなかった今日を生きる

怖いな 貴方が私と同じ今日、覚悟を決めたこともこれから生きる事も


私は多分まだ貴方に自分を重ねている
というか、今までずっと重ねてきたからこの1年、貴方と一緒だったから何とか生き延びたのに

貴方が生きていないその先を私一人で見るなんて


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