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全クリした後のドラクエのような社会で内村鑑三を読む~会社設立一年目が終わって~

株式会社オガワヤという変な名前の会社を一年やってきて色々なことがありました。結局答えは決まってるし、あえて言語化する必要はないですが、これからも体に気をつけて、一つ一つの約束を守り、誠心誠意頑張ります。会社を経営するということは約束を守るということほかないことが身に染みて理解しました。会社設立一年・13LABOオープン半年たったのでちょっと思っていることを書きます。
タイトルは全クリした後のドラクエのような社会で内村鑑三を読む。キャッチーでしょ。
伝えたいことは感謝と今こんなこと考えてるよということです。

はじまり

北大前にこんなビルがあるよと知り合いに言われて、仲間に相談して新しい事業をやろうと決めたのは2018年7月。会社設立したのが9月。震災はさんでリノベ開始&場所借りたのが10月末。13LABOと名前を付けてオープンしたのが2月末、そしてそこから半年しかたっていない。(今考えると丸4カ月のリノベ期間だったのか。つらかったのでもっと長いイメージ。)

リノベの様子

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はじめはこんな感じだったのが

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こうなって

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こうなりました。(だいぶ端折りましたが)

今では1日20~30人くらい学生が来て、部活や就活や打ち合わせや勉強にと彼らの日常の一部に13LABOという就活カフェがあることがとてもうれしく思います。
作る過程を手伝ってくれた方には感謝してもしきれません。この経験は自分にとって大きな自信になったし、世の中の解像度は頭と手をフルで動かすことでより鮮明になることが分かりました。googleとホームセンターと少しのお金があれば大体のものは作れたりする。チャップリンが似たようなこと言ってましたね。「人生は恐れなければ、とても素晴らしいものなんだよ。人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ。」って。確かに。人生が豊かになる音がしました。
現在運営メンバーは17人。超DOPEなメンバーです。まじ本気でやんべ。これからもよろしくね。

解像度の話をしましたが、この感覚は教養という言葉に近い気がします。教養とは何かと問われると、私は想像力であると答えます。事象や相対する人・物の背景や思想を深く想像することができ、思いを馳せることができる能力が教養だとして、一つの13LABOというお店ができていく過程を経験した今、他のお店についても同じように追体験ができるようになりました。最近はお店に入るとそのお店ができていった過程や店主の方の苦労や楽しさに共感して楽しんでいる自分がいます。教養というのは豊かな人生に欠かせないものなのでこれからも率先して頭と手をフル回転させて世の中に対する解像度を高めていきたいと思います。

ドラクエと内村鑑三

テーマがドラクエと内村鑑三でしたね。私がイメージしていたのはドラゴンクエスト3の世界で、バラモス倒してゾーマ倒して平和になった後(アレフガルドに朝が戻った後)の世界をイメージしています。最初のお城で王様にありがとう!と言われて、じゃあそのあと勇者は何するの?まだ16歳だけど目的達成しちゃったらなんもすることないじゃない。講演会でも開いてお金稼ぐの?そんな人生楽しい?強いてやることと言ったらSFCやGB版で実装されたすごろくやモンスターメダル集めといったミニゲームなどの不毛な作業か、ひかりの玉なしでゾーマを倒したり、裏ボスに挑んだりするという極みのフェーズに入る。それが世の中にどのような変化も与えないというところが肝で、これは俗にいう自己満足です。ゲーム自体が自己満なのにゲームの中の主人公も自己満を追及していてなんかワロタって思ってました。(モンスターメダル制度はまじで不毛だからわかる人だけわかってください。知らない人に簡単に説明するとモンスターごとに金銀銅のメダルが低確率でドロップされてそれを全モンスター分集めると裏裏ボスと戦えるだけ。そしてそいつはそんな強くない。)

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画像:全クリしたら姿を消す勇者。悲しい。

現実社会も何もやることない世界だなと大学生の時に感じてました。目標がなく、だらだらと生きていても何となく生きていける。読書も映画も旅も部活も楽しいけど、特に自分の人生をかけて何かやりたいということがない。ちょっと世の中わかりにくくないですかね?ラスボスもいないし、まあまあ幸せだし。私が大学時代に読んだ本の中で「今の社会に特に不満がなく幸せを感じている若者が多い」と書かれてましたが、例に漏れず私もそれでした。結構そんな人多いんじゃないでしょうか。特にこれといってやりたいことはないけど全く焦っていないタイプ。まあそれでもいいんですけどね。
私にとってみれば社会なんてゲームを全クリして、あとはミニゲームをやったり極めるだけだと思っていました。わかりやすく言うと楽しくはあるけどなんか退屈なんです。

そんな時に出会ったのが内村鑑三です。内村鑑三を知らない人に説明するのは難しいですが簡単に言うとキリスト教の思想家であり、無教会主義を提唱している。北大の2期生で新渡戸稲造と同期。新渡戸稲造の「武士道」や岡倉天心の「茶の本」が日本のことを海外に紹介した本でベストセラーになってますが、内村鑑三の「代表的日本人」もそれに肩を並べます。
内村鑑三の本でおすすめは「後世への最大遺物」という内村の講演を書き下ろした本があるのですが、その中で内村はこう言っています。

大変恐れ多い話ですが、いずれ神の国に行くのであれば、私はこの美しい地球や楽しい社会に何か遺していきたい。
何を後世に遺せるか。順番としてまず金が挙げられる。が、金を残すのは大変な才能が必要なので、それができないのであれば事業だ。特に土木事業がいい。それもダメなら文学や思想、教育なども後世に遺る事業に近い。ジョンロックやカーライルなどは素晴らしい事業をしている。しかしこれらは最大遺物とは言えず、万人にできることではない。「そうならば最大遺物とは何であるか。~略~ 勇ましい高尚なる生涯であると思います。」世の中は悪魔が支配し、悲観的で失望するものではなく、歓喜や希望があふれ、神が支配する世の中だと信じ、生涯を通してその賜物を世の中に遺すこと。それが最大遺物である。
(括弧内以外私の要約です)

久々に読み返しましたがやはり素晴らしい本でした。本書は1894年に行われた講演の書き起こしなのですが内村はその時から"100年先の人間が学校に行ったり教会に行ったとしても感じえないような、私自身なにか動かす原動力を遺さねばならぬ"といった狂気めいた話を延々しています。
さらに言うとこの勇ましい高尚なる生涯であるという話は、国人に捨てられ、事業に失敗し貧に迫られ不治の病にかかった人々でも可能な生き方と言っているからすごい。
私はこの本に非常に感銘を覚えました。俺の退屈さってここからきてるんだなと。毎日楽しく頑張ってはいますが、別に後世に遺したいものはない。でも個人の欲求としてはみんなが楽しく幸せになってほしいなとか、100年後にも遺るような、100年後に生まれた自分の玄孫あたりが「ひいひいひいじいちゃんすげー」ってなるような大きな事業をやっていきたいという気持ちはいつもあります。それを想起することは重要だと思っていることもあり年に1,2回は読み返しています。
でもそのレベル感で何をすべきか何をしたらいいかというのは今でも見つかっていません。

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画像:内村鑑三さん。すごい人。ちなみに本は100ページくらいの簡単な本なのでおすすめ。青空文庫にもあります。

就活カフェ13LABO


弊社の事業は13LABOに学生に利用してもらい、企業のPR・広報スペースとして使うことをメインとしております。昨今の人手不足に対して学生との接点を持つことがむずかしいBtoBの企業様など、採用活動のお手伝いをすることが仕事です。スポンサーにご興味のある企業様がいらっしゃいましたらご連絡ください。会社作って間もない若造を信じてスポンサーになってくださっているアーリーアダプターの企業様には大感謝です。
今後弊社では主に学生に対してキャリアについて考える機会を提供していきます。例えば、大学1,2年向けのキャリアについての勉強会。逆求人イベント企画運営。IT初学者向けの研修の運営などなど。まだまだ社内のマネジメントでいっぱいいっぱいですが、近いうちに整う予定なので本来のキャリア的な仕事に力を入れることができそうです。

13LABOが自分のやりたいことだったのかといわれるとそんなことはありません。今でも何をしたいのかよくわかっていないですが、自分が楽しそうだなと思うことを形にしたらこんな感じになりました。13LABOの魅力はここに共感してくれている人たちが出入りしているところでもあります。魅力は何か?よくわかんないですがよく言われるのは「自由」ということと「好奇心を追及」してほしいということと「排他的ではない」ということです。とりあえず面白そうな人と友達になって、場所は使っていいから色んな事してほしいと伝えてます。なんか楽しそうじゃん。
例えばPythonおじさんという変な大人がいたりARVR系の方と知り合いになったので遊びに来てくれてうちの常連の学生と交流したりしてます。

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画像:Pythonおじさんが脳波をはかる変なガジェット持ってきて興奮している学生たちの図

こんな感じでIT系の活動が多くなっています。VoiceUIとかAR・VRとかPhythonとかセキュリティとかSalesforceとか。ほかにも普通のレンタルスペースとしての活用もできますのでRTAとかSDGsとかハタモクさんとか仏教系のイベントとか謎なイベントまでやってます。興味のある方は予約してください。なんでもOKです。
自由と好奇心の追求と排他的ではないことの良いところは色んなジャンルの人が出入りすることです。多分いい感じの場所になっていると思います。
学生限定のカフェなので基本は学生のみですが色んな大人もちゃっかり混ざってます。だって学生だけだったら多様性もくそもないでしょう。
キャリアを考えるうえで就職活動って外せないし、わかりやすいので就活って名前を付けてますがキャリアってそんなもんじゃない。キャリアは好奇心を持って色々チャレンジするから繋がっていくと思うんです。それを体現している大人になりたいし、そんな大人たちと友達になって一緒に13LABOを作りたい。
この気持ちを端的に言語化できる人いたら教えてください。そして仲間になりましょう。

キラキラではない起業家として何したいの?

起業家すごいねとかたまに言われますが、なんもすごくない。私は俗にいうキラキラした起業家ではありません。先ほど申しました通り後世に遺したいとかそのような大きな理想がない。もう少しわかりやすく言うと自分の人生をかけてまでやりたいことがない。「社会を変えたい」とかいって起業した人とかそんなやりたいことがある人が羨ましい。(小さな「これやったら楽しそう」とか「これは社会に必要だ」とかそういったものはたくさんあるのでやっていますが)前職はNPOだったのですが、色んな意味で限界を感じて諦めてしまいました。会社を作った動機もNPOに諦めを感じていた時期にビルを紹介されて、「ここでなんかやったら面白そう」といった怒られそうな理由からです。消去法です。
本心ではゲバラみたいな自分の信念を貫ける人になりたいと思っています。私は今29歳ですが、ちょっと遅いかな。30代で見つかったらいいな。

いいことはやっていると思っているんですが、理想の在り方ではないと思っています。事業内容自体も派手ではありません。ゆっくり成長していくのでキラキラを求めている学生からしたら少し退屈なものになっているかもしれません。大変申し訳ないことに私の経歴的にも輝かしい経歴もないし、能力的にもイケてる人間ではないと思っています。それでもただ一生懸命生きていたいだけなんです。それを探してるんです。それに尽きる。
こんな私でも一緒にやってくれる学生や、一緒のビルでゆるく共存している仲間がいることは本当に心強いです。ここを利用してくれている学生たちがいることもうれしい。そこに対しての覚悟はあるし、支えてくれている妻もいるし、早く楽をさせてあげたいです。きっと今のモチベーションはここなんだろうなと思います。ここがいいなと思ってくれている人たちが誇りを持ち続ける場所にしたい。これが直近の目標です。そして自分の人生を懸けてやりたいことが見つかればいいな。ちょっと時間かかるかもしれませんがよろしくお願いします。

最後に

いろんな本を読んで勉強した気になってるので言いますが、社会全体を見たときにテクノロジーの進歩が社会は分断し、分断化された社会が格差を広げている。格差の下側の人間の数が増えたときに手を差し伸べるのは国であってほしいですが、セーフティーネットが整うだけの国力を保てるのか、そうなったときに日本人が我慢できるのかという点についても関心があります。(教育を少しかじっている私からすると非常に悲しいですがこの流れは止められてないと思っています。格差を止める手段は教育だと思っていて、教育を支える経済が厳しいので。)
なので経済的に北海道を豊かにし、格差を救うような世の中を作ることが必要です。きっとできると思っています。私は悲観的ではなく、歓喜の人生を歩んでいきたい。精神的な面でも物質的な面でも豊かでありたい。それは私個人が達成してもしょうがないので、なるべく100年続くような事業で多くの人に共有できる形で達成したいです。
手段として有効だと思っているのは「北海道の中小企業の生産性向上」と「外貨の獲得」です。めっちゃ当然のことを書いててあほかとなりそうですが、これ以外私はわかりません。生産性向上にはITは不可欠なのでITの軸を私は持ち続ける。外貨獲得には私は知識がないのでもっと勉強と実践が必要です。いずれも商いをするという姿勢を大切にします。
もちろん教育も大事です。最近教育格差の素晴らしい教科書本が出ましたが、今後もっと格差は広がっていきます。人を教育するというおこがましいこともやらなければならないと思っています。
13LABOはきっとそれらのプラットフォームなんだろうなと最近思っていまます。自己実現を目指すにあたっての拠点になること。もっとできると自分に期待をかけるところ。仲間を集めるところ。みんなと育っていくところ。自分自身にとってそんな場所になればいい。


長くなりましたが今後とも小川と13LABOをよろしくお願いいたします。
2期目も頑張ります。

サポートいただけると嬉しいです。いただいたサポートは全てNPOへの寄付かプロボノ事業に投入します。