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VOLVO。人を穏やかにさせるクルマ。

近頃、日常のパートナーにVOLVO、V60を乗らせていただいている。

通常のモデルから、プラグインハイブリッドモデルに入れ替えとなったので、慣らし運転をかねて少し走りに行ってみた。

VOLVOは幼い頃から、特に熱狂的に好きというわけではないが、何となく気になるクルマではあった。

街ではたまに見かけるが、周りや親戚などに乗っている人もいなかったので、余計に気になったのだろうと思う。

当時と言えば、いわゆるカクカクの740、その後の940あたりである。明らかにドイツ車などのデザインとは違う、独特な雰囲気であった。同じスウェーデンのサーブ900なんかは、航空機メーカーらしい曲線を多用したスタイリッシュなデザインで、同じ国でもこんなに違うものかと感じたのを覚えている。

いつか(多分、幼い頃の私がお願いして父親にディーラーへ行ってもらったのだろう)VOLVO740か940のカタログを入手した。サイズは他より小さめだが、文字が多く内容の詰まったもので、最初のページに写真付きで、ヨーロッパでVOLVOは実際にあった事故の調査を古くから実施しており、安全性の向上に役立てていると書いてあったのが非常に印象的だった。

私も自他ともに認める車好きであるが、実のところVOLVOで言えば、850(のちに最初のV70)までは鮮明だが、それ以降のモデルにはあまり印象がない。カクカクでもなく、かと言って特に印象的なわけでもなく、何とも中途半端な感じが漂っていた頃が長らくあった。フォード傘下の時代である。

そこから2010年代以降、今後はフォードから中国大手の吉利グループとなり、先入観だけでどうなることか…と思っていた人も多かったと聞く。しかし、これが大きく功をなしてVOLVOは生まれ変わった。吉利グループは潤沢な資金で、VOLVOに対して開発費用や設備投資、またブランドPRについては積極的に投資するが、プロダクトそのものについての口出しはせず、あくまでVOLVOとしてオリジナルのクルマ作りしていくスタンスだと言う。

2015年(2代目XC90)以降のトールハンマーデザインによって、私のパートナーとなったV60も洗練されたイメージにふさわしいデザインをまとっている。内装もこれぞスカンジナビアンと思わせるような、上品で明るい仕立てになっており、内装色に白っぽい感じやベージュ、キャメルなどを積極的に選びたくなるから面白い。ディーラー担当者によると実際の売れ行きもそのようである。

VOLVOが潔いのは、デザインや内装の美しさ、加えてインフォテイメント系の扱いやすさと安全デバイスのクオリティに重点を置いており、いわゆるドイツ勢が謳う「走りの良さ」は二の次だということ。

インフォテイメントはまず画面が縦長で見やすい。スマホもそうであるように、地図を表示することが前提の場合、ヘディングアップでナビを見る人が多いから、これから向かう方向がより表示しやすい縦長が理想的である、とVOLVOは言う。
安全デバイスについては色々なところで取り上げられているから割愛するが、実際にあらゆる状況下で使ってみて、大変気の利いたシステムであると感じられる。

もちろん、通常乗るにあたってパワー不足は感じない。高速巡行での不満もない。と、同時にクルマを操る楽しさ・歓びという印象も特にない。走りの魅力はないの?と言われそうだが、VOLVOはそれをマイナスどころかむしろブランドイメージの向上へと昇華させている。ポールスター仕様など一部の特殊なモデルを除き、今やどんな車にも付いているステアリングのパドルシフトがオプション設定すらないのも逆の意味で面白い。

現在、VOLVOは電動化を顕著に進めており、現時点ですでにエンジンのみしか載せていない車種はひとつもない。すべて何らかのモーター付きである。また、4気筒2リッター以上のエンジンを今後作ることも載せることもない。S80などにヤマハ製のV8(4.4リッター)エンジンがあったのがはるか遠い昔のように感じる(実際はそう昔ではないが)。そう、VOLVOはエンジンのスペックや情感を高らかに謳うことはなく、今後重要となるカーボンニュートラルの観点を踏まえ、環境との調和を図っているのである。

この考えはユーザーにもしっかりと伝わっており、幅広い年齢層から販売台数は年々増加している。ディーラーの営業マンによると、BMWやAudiといったドイツ勢や、国産車からの乗り換えが近年非常に多く、ディーラーは大変忙しくなったと言う。XC60とXC40が2年連続で日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したのも頷ける。

さて、私は連休を利用して妻と約1,000kmのドライブに出かけた。妻はクルマ好きではないが、クルマにうるさい。乗り心地が少しでも悪ければすぐに文句を言うし、シートの硬さが合わなければもう乗りたくないと言う。あるべき装備がついてなかったり、設定画面などもパッと思うように操作できなければ、イライラしてしまう(私もそうなんだが)。そんな妻がV60との旅を長い時間、ゴキゲンに過ごしてくれていた。もうそれだけで素晴らしい。

妻いわく、私の運転がいつもより穏やかであったという。普段から若い頃のようにそんなにスピードも出さないが、それでもVOLVOでのドライブは特に穏やかであったと言うのだ。碓氷峠も走ったし、新東名の120km区間も走った。そこそこのペースであったはずなのに、同乗者は穏やかさを感じたわけである。これがVOLVOなのである。

メカニズム的な部分で車の挙動やブレーキのフィーリングが穏やかであったのも事実だが、それ以上にドライバー側が不要な緊張感から解き放たれ、リラックスして運転していたように感じる。まさかハイスピードを出して、追い越し車線を疾走してやろうなどという気持ちにもならない。VOLVOで煽り運転などしていたら、本当に頭がおかしい人だと思う。(いや、どんな車でもダメなんだが、あくまで例え話という事で)

VOLVOは人を穏やかにする。私個人としては、そんな性格のVOLVOを少しチューニングで尖らせたポールスターなんか大好物だとおもっているが、それはさておき、穏やかさこそがVOLVOの魅力である。

余談ではあるが、VOLVOは世界的に紙のカタログをもう制作していないという。たまに部屋でひとりカタログを眺めたりするのが好きな私にとっては、ひとつの楽しみが減ってしまって寂しいが、これも時代と調和するVOLVOらしさと言えよう。

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