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THE MODEL組織の落とし穴。LTVを踏まえたペルソナ設定の必要性

CINCの赤司さん (@DjLeap0229) に誘っていただいた、SaaSビジネス Advent Calendar 2019に寄稿させていただきます。昨日、Reproの佐々木さん「SaaS組織の - 部分最適という麻薬 - を飲んで見えた未来のカタチ」からバトンを受け取らせていただきました。

今回は、才流( https://sairu.co.jp)にて、BtoBマーケティングのコンサルタントとしてクライアントに向き合う中で得た気付き「THE MODEL型組織の落とし穴」についてアウトプットしたいと思います。

THE MODELとは

いわずと知れたSaaS企業のバイブル。マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスの機能を最適化させる手法

BtoBマーケティングが強いサービスの特徴は?

最近、マーケティングに多額の投資を行うBtoBの企業が増えています。

Sansan
楽楽精算
b→dash
モチベーションクラウド
SmartHR
bellFace

といった、テレビCMでもおなじみのサービスの特徴はいったい何なのでしょうか?

それは「圧倒的にLTVが高い」ことです。
SansanのLTVはおそらく2000万以上ですし、その他のマーケティングが活発な企業もLTVは1000万以上だと思われます。

LTVが高ければ、あらゆるマーケティング活動がペイする

私は新卒入社した会社で、CMSの営業マンをしていました。いわゆる、HPの作成と管理画面の提供です。開拓方法はほぼ100%テレアポ。「アウトバウンドからインバウンドに切り替えよう」という試みもありましたが、なかなか難しい。。

入社4年目でマーケティング部署の立ち上げ責任者を経験しましたが、年間売上20憶の中で2憶~3億の売上創出が限界でした。2~3億と考えると少なくない気もしますが、全体の10%しかインパクトを与えられていない結果です。

実際にやった施策で費用対効果があったのは
・少額のリスティング広告
・少額のFacebook広告・郵送DM
・FaxDM
・メルマガ

くらいでした。それ以外の施策の多くは、そもそも採算が取れないことが分かったいたので、チャレンジできませんでした。

当時のLTVは150万~200万
その中で新たなチャネルを開拓するのは非常に難しかったです。


先日、某業務管理ツールのマーケティング相談をお受けしました。
その時は下記の状況で、マーケティングに資本投下して獲得ペースを大幅に上げたいというオーダー。


・月額3万
・LTV25万 ※平均の継続期間約2年
・クロスセル商材はなし


この状況下においてできることは、少額の広告運用のパフォーマンス見直しと、SEOくらい。テレアポでも採算をあわせることはでさそうで、非常に心苦しかったのですが、「獲得ペースを1.5倍にはできても、それ以上の成長は難しいです」とお伝えしました。

LTV観点で考えると、ほとんどの市場が該当しないんじゃないですか?

先日、登壇させていただいたイベントにて、上記の話をしたところ、「LTVが大事なのはわかるけど、ほとんどの市場/事業では難しくないですか?」という質問がありました。

たしかに、ほとんどの中小企業(BtoB)では、LTV300万未満が圧倒的大多数。「LTVが低い=事業が成り立たない」わけではありません。LTVが高い=収益性の高いセグメントなので、競争環境も厳しくなり、「生き残る」観点では難しい側面もあります。

ただ、LTVが高くないと、いわゆるBtoBマーケティングの打ち手は限られる、というのは事実です。その場合の主戦場は「テレアポ」や「紹介」をメインとする営業なので、優秀な営業組織こそが競争優位となります。

BtoCと違って、セルフサーブ(営業なしでの販売)が非常に難しいBtoBにおいて、おのずと高い時価総額をつける企業のほとんどが、LTV1000万以上のビジネスモデルが構築されています。

THE MODELの分業制は、部分最適化されるリスクがある

ここまでは、「LTVが高ければ、マーケティングは打ち手が広がる」という話でした。シンプルに言い直すと、「LTVを高めることがめちゃくちゃ大事だ」ということです。


しかしながら、THE MODEL型の分業体制は、LTVを下げてしまうリスクがあります。※ THE MODELがだめ、という話ではないです

THE MODELの組織は分業制。マーケイング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、それぞれの部署がそれぞれのKPIを追いかけます。

会社によってKPIは様々ですが、「マーケはリード数」「インサイドは商談数」「フィールドは受注数/売上」「カスタマーサクセスは継続率」を主要なKPIに置いている企業が多いのではないでしょうか。

このような組織・KPIで推し進めた場合、何が起きるか。1つの可能性として、「マーケティング担当が優秀かつ責任感が強ければ強いほど」LTVが落ちる場合があるのです。

なぜかというと、リード数目標と予算が設定されている中で、「どれだけCPAを下げて、リード数を増やすか」を突き詰めるからです。そこにLTVの観点はありません。

SMB(中小企業)とエンタープライズ(大手企業)ではマーケティングチャネルが異なる

大手とSMB

上記のようにCPA最小化を目指した場合、ほとんどがSMBチャネルに予算投下していく結果となります。大手向けのマーケティング施策は、リード獲得効率が良くないケースが多いので、CPAで判断すると削られてしまうのです。

顧客の企業規模によって、LTVに開きがある場合

1ユーザー〇円のビジネスモデルでは、シンプルに企業規模とLTVが比例するケースも多いと思います。

A(従業員1000人以上):LTV1000万
B(従業員999人以下):LTV100万

この場合、Bのリード獲得はCPAが10倍でも採算は合うはずですが、そのように動けるマーケティング組織はほとんどありません。LTVを踏まえてターゲティングしないと、現場のマーケティング活動は縮小最適化されてしまうので注意が必要です。

LTVを踏まえたペルソナ設定

将来的には全てのデータが見える化されて、セグメント毎のLTVや、チャネルごとのROIが簡単に算出できるようになると思いますが、今すぐにデータを整備することは至難の業だと思います。現時点の解決策は、

・現在のLTVを知る

がまずはファーストステップ。現時点で充分なLTVが確保できていれば、問題はありません。目標地点や業界の特性もありますが、BtoBマーケティングの場合、ざっくり500万以上であれば色々やれるな、という印象を受けます。2000万超えとかになってくると、ほぼ全ての施策がペイする領域です。

・LTVを上げる
今のLTVが充分でないなら、「どう上げるか」という議論の優先順位が高まります。継続率を上げる、クロスセル商材を開発する、などが最も事業インパクトを生みます。ただ、すぐに解決するのは非常に難しい。様々なリソースや意思決定が必要だし、時間もかかります。


LTVの高いセグメントを見つける


なので、今すぐ現場でできる取り組みとしては、「LTVの高いセグメントを見つけること」が非常に有効です。企業規模だけでなく、特定の業界や、特定の課題をもったセグメントだけチャーン率が以上に低い、などはあり得るからです。

まずは、LTVが高いセグメントに絞る。そうすれば、マーケティングの施策は圧倒的に広がっていく。実際に「大手」と「SMB」で明らかにLTVの差異があり、SMBではマーケティングの打ち手が確保できない、という理由で「大手開拓」に舵を切ってもらったこともあります。

現有のデータからさくっと見つかればそれに越したことはないですが、従業員規模などの分かりやすいセグメント以外は整理されていないケースが多いと思います。

その場合は営業やカスタマーサクセスとの連携が重要。営業は受注単価が高い企業の特徴をよく知っているし、カスタマーサクセスが継続率の高い顧客の特徴を最もよく知っているので、彼らと協力しながらLTVの高いセグメントを見つける必要があります。

CROが売上全体を見る

最近、色々なSaaS企業の方とお話していて、THE MODELl組織の部分最適を防ぐ手立てとして、CRO(最高売上責任者)のポジションを用意している企業がいらっしゃいました。

マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセス、それぞれの事業部を束ねて全売上責任を負うCROが全体最適を担うのです。

全領域をまたいで最適化するには幅広い知識、経験、推進力が要求されるが、今後多くのSaaS企業で設置される役割になると思っています。

まとめ

①LTVが高いとBtoBマーケティングの打ち手が増える
②THE MODEL組織は気をつけないとLTVが低下する可能性がある
③LTVの高いセグメントを見つけよう

以上です。明日はReproの小木曽さんにバトンをお渡しいたします。タイトルは「部分最適と全体最適、マイクロサービス化とSaaSのあり方、提案方法」非常に楽しみです!




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BtoBマーケティングの支援をする才流(http://sairu.co.jp)のコンサルタント。前職では株式会社GENOVAで営業部長→事業開発→メディア責任者。高校中退→大検→同志社大卒。Twitterアカウント(https://twitter.com/yooheykoji
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