5年間ありがとう。デニム兄弟のブランドは生まれ変わり新たな一歩を踏み出します。
EVERY DENIM。
この言葉を見て、あなたは何を思い浮かべますか。
デニム製品のこと。そのデニムを目に(手に)したときのこと。僕ら兄弟のこと。デニム産業に関わる職人さんのこと。
僕らのことを知ってくれている、あるいは製品を買ってくれたことのある人なら、そんなことが頭に浮かぶでしょう。
このnoteをきっかけに僕らのことを知ってくださった方は、なんとなくデニムにまつわる名前なのかなと思うはずです。
そう、EVERY DENIM(エブリデニム)は2015年に僕・山脇耀平と弟・島田舜介の兄弟で立ち上げたデニムのブランドです。今年の9月で丸5周年を迎えました。
そして2020年の10月25日を持って僕ら兄弟はこのEVERY DENIMという名前とお別れすることになりました。
僕がEVERY DENIMの山脇と呼ばれる最後に、この名前へ5年間の感謝の想いを込めて言葉を記します。
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1992年と1994年生まれ。両親とも公務員の家庭に生まれ、のびのびと育ててもらった僕たち。長男らしく保守的で真面目だった僕と、好奇心旺盛で何事も得意だった弟。
小さい頃から良い意味で対照的なタイプだったけれど、好きなものや好きな人たちは似ていて、何となく境遇も近いまま互いに高校卒業のタイミングで実家を離れることになった。
僕は茨城県へ、弟は岡山県へと進んだ。結果的にそれが今の自分たちまで導く決定的な出来事だった。
岡山県、広島県内の一帯にはデニム産業に携わるたくさんの工場が存在している。多くは3代目、長くて5代目ほど。自分たちが生まれる遥か前から脈々と継承してきたものづくりがそこに確かにあることを、僕らは大学に入ってから知ることになった。
弟が岡山に行ったことがきっかけで、つながったとあるデニムの職人さん。自らの職業に向き合う姿勢。初めて目の当たりにするものづくりのかっこよさに惹かれた。
僕らは、岡山県内の工場を数珠つなぎに紹介してもらい、そこで働く方々の声を取材しwebで発信し続けた。
楽しいこと、苦しいこと、たくさんのことを聞いた。そして、彼らの力になることで生きていきたい、彼らとともに明るい未来をつくってゆきたいという強い願いからブランドを立ち上げた。
2015年9月、クラウドファンディングで資金を募り、ブランド「EVERY DENIM」を立ち上げ。行動力と吸収力だけが頼りだったが、周囲からの暖かい支援のおかげで無事スタートを切ることができた。
そこからは週末になるとキャリーバックにデニムを詰め込み、夜行バスに飛び乗った。全国各地、当時人が集まる場所として注目を浴び始めていたいたゲストハウスを中心に販売のイベントを組ませてもらった。
岡山では弟が工場の人たちと日々やりとりを行い、納得のいく製品を期日までに完成させる。僕は様々な縁を辿りながらいつも初めての場所に足を運び、デニムを、産地のものづくりのことを届けようとした。
そんな日々が1年以上続いた2017年6月、僕らは大きなメディアに取り上げられる。テレビ東京「ガイアの夜明け」。たくさんの反響と少なくない影響があった。
自分たちの活動をもっと楽しく広げて行きたいと思った僕らは、再びクラウドファンディングに挑戦し募った資金でキャンピングカーを購入。1年半かけて全国47都道府県を訪れる旅の構想を練った。
2018年の4月から、2019年の7月まで、1年と3ヶ月。毎月約1週間を費やし旅に出た。自分たちのデニムと想いを届けるだけでなく、しっかりと勉強したいと、旅先では衣食住にまつわるつくり手の方々にお話を伺い、その学びを連載としてまとめたり報告会を開催し続けた。
47都道府県を巡り終え、次なる目標は拠点を持つことだった。立ち上げに全力を尽くしてくれた仲間のおかげで2019年9月21日、岡山県倉敷市児島に宿泊施設「DENIM HOSTEL float」が誕生した。そしてfloatも1年が経過した。
振り返れば、まっすぐさだけは失わないように進んできた5年間だったと思う。とにかく自分自身に嘘はつかないよう、やりたいことをやることと同じくらい、やりたくないことをやらないことも大切にしてきた。
EVERY DENIMを続ける中で、僕らはただ知りたかったのだ。身の回りに溢れるモノの中で、何が人の心を揺さぶるのか。そのモノが生まれた背景、よくあるストーリーと言われるやつだ、のどこの部分が本質なのか。
そして、ここが何より大事だ、僕らはどうすればそんなモノを生み出し、人に届けることができるのか。考え方とは、心構えとは。
5年間、心の底から使命とやりがいを持ってデニム屋を続けていくためには、常に確かな納得感が必要だった。その納得感の半分は、EVERY DENIMを通じて製品を身につけてくれるたくさんの人と出会うことで満たされていた。
もう半分は頭の中で見つけ出さないといけない。大変だった。考え続け、何度もEVERY DENIMという名前に立ち戻り、自分たちの価値を言葉で掴み離さないように必死だった。
その結果、僕らにとってEVERY DENIMは進むべき道筋を指し示すものでは無くなっていった。逆に僕らがEVERY DENIMを置いて前に進んで行ってしまったような感覚だった。
それはある意味で役割を果たし切ったのだと思う。僕らは次へ進むことにした。ブランドに新たな名前を付け、いま一度出発したい。
いま、僕らが生活者として大切にしたいこと。ブランドを通じて共有したい思い。
意志を持ってモノを選ぶこと。モノとともに自分なりの理由を持つこと。そしてモノとの関係を育んでゆくこと。ともに時を過ごす中で生まれる発見を喜びとして他者と分かち合うこと。
そんな僕らなりの答えを願いとして込めた新しい名前とこれからを歩んでゆく。
役目を終えたEVERY DENIMとここでお別れすることは本当に悲しい。
ただ間違いなく言えるのは、EVERY DENIMが5年間、確かに存在した一つの意志として、これからも残り続けることだ。
ありがとう、EVERY DENIM。この名前のおかげで僕は20代の半ばを胸張って生きてこられた。まだ何にもしてないのに、EVERY(みんな)のDENIMなんて大それたことをいきなり言って、だからそれからは夢を語るのが恥ずかしく無くなったよ。
EVERY DENIMよりも前の僕は、自分の意見を素直に言葉にできなかった。泥くさいこともクサいことも含めて、自分の気持ちを熱く迎え入れることができなかった。
だからずっと何も踏み出せない人間でいたし、行動よりも先に言葉を掲げる人のことを冷めた目で見たりもしていた、20歳くらいまでは、本当に。
でもEVERY DENIMに出会えて、掲げた想いが人に伝わることの喜びを初めて知った。もしかしたら、一歩踏み出すことの勇気もこの名前だったから持てたのかもしれない。
EVERY DENIMという名前で本当に良かった。今までありがとう。
新しい名前の僕らもどうか見守っていてください。
EVERY DENIMとして最後の山脇
終わりに〜リニューアルイベントのお知らせ
このnoteを最後まで読んでくださった方々に向けて、大切なイベントのお知らせです。
5年間の活動を締めくくる(ことに結果としてなった)1つの形として、D&DEPARTMENTが発刊する「d design travel」28号目となる岡山号に掲載いただきました。
「d design travel」は各号の完成とともに、渋谷ヒカリエ8Fに構えるミュージアムで展示をおこなっております。
岡山がヒカリエを飾る11月末までの会期中にぜひEVERY DENIMの新しい名前をここで発表したいと申し出たところ快く承諾してくださり、トークイベントを開催する運びとなりました。
ブランドリニューアルを伴走しクリエイティブを製作してくれたCIALの戸塚さん、加藤さんをお招きし、d design travel編集長・神藤さんとともに新ブランドネーム、ロゴの発表とその舞台裏についてお話しします。
◆イベント概要
開催日:2020.10.24(土)
開催時間:開場16:30 / 開演17:00〜18:30
参加費:
トークイベントチケット1500円/岡山号トラベル誌付チケット3500円
登壇者(敬称略):
・EVERY DENIM山脇、島田
・CIAL戸塚、加藤
・D&DEPARTMENT:神藤
内容:新ブランド名のお披露目に併せてCiALさんを迎えEVERY DENIMのこれまでの 取り組みやリニューアルにあたっての舞台裏をお話しします。後半にはd design travel編集長がトラベル誌岡山号の内容に触れつつ、EVERY DENIMさんとこれからのロングライフデ ザインに必要なこととは何なのか紐解いていきます。
タイムスケジュール
16:30:開場
17:00:開演
18:30:終了
18:30-20:00:参加者と歓談、ミュージアムツアー(商品紹介)
◆お申し込みは以下より
または、d47 design travel store店頭、お電話(03-6427-2301)
◆お問い合わせ先:03-6427-2301(d47 design travel store)
これまでEVERY DENIMを暖かく見守ってくださったみなさま、これから応援してくださるみなさま、ぜひ本イベントにご注目いただけると嬉しいです!