ピッコロベースというもの

ピッコロとは小さいという意味です。イタリア語。
音楽用語では高音域担当の楽器にピッコロという冠が付けられる。

ピッコロベース。高音なのか低音なのか、矛盾を抱えた名称です。

いつからピッコロベースが出てきたのか分かりませんが、自分の記憶ではブライアンブロンバーグが細い弦を張ったベースをギターのように弾いていたのが初見でした。
それをピッコロベースと呼んでいました。なぜギターを弾かないのかと聞かれたブロンバーグは「それはな、ギターを弾けないからだよ、ハッハッハ!」と答えたとか。ギターとベースは弦間もスケールも違うので思うように弾けないのでしょう。

そして今、Twitterでピッコロベースと検索すると、「普通のベースにピッコロ弦という細い弦を張って弾くというのがピッコロベース」というものに定着しているようです。

でもそれってどうなんだろう

例えばフルートのオクターブ上げ楽器であるピッコロはスケールが短くなってます。
ピッコロトランペットもピッコロトロンボーンもみんな小さくなってます。

それなのにピッコロベースは弦を細くしただけ

そうじゃないんじゃないかな?
ピッコロベースも小さいベースを使うべきなんじゃないかな?

そんなわけで今世の中にはwingbassというまさに小さくなったピッコロベースというべきものが出ています。しかし、どうやら練習用とかトラベルベースという位置付けなんですね。これこそピッコロベースだと思うんですけど。

あと、wingbassは高いですね。30万とか平気でする。
スケールがちょっと短すぎるのも気になりました。
似たようなコンセプトでもっとスケールが長くて安い楽器。。
というドラえもんにすがる気持ちでネットの海を彷徨う私はついに見つけました。

mihado fingybass

ポーランドの工房mihadoが作るfingybass。このベースはスケールが22インチで5弦。見た瞬間ピーンと来た。値段も送料込みで13万くらいだったかな。

このベースをreverbで注文して4ヶ月くらい、ついに届いたのはもう1年以上前。

最初は私も練習用としての購入でした。
初期装備では40〜120の弦をEADGCという5弦ハイC仕様のチューニングでした。
しかし、22インチでは流石に弦を太くしてもEは鳴らせない。倍音ばかりで基音がない変な音。そこから弦を変え調弦を変え、試行錯誤した結果、一旦落ち着いたのが全音上げのF#BEADという調弦。ギリギリ低音が鳴るというギリギリセッティングでした。
しかし全音上げはどこがどの音なのか分からないという演奏上の問題がありました。
音もギリギリ使えるという妥協点でしかない。

思い切って私は025の弦を買い、最終的な弦は95-75-55-35-25でBEADGのオクターブ上げ。

35-95
025

これが完全にハマった。正直ピッコロベースにするつもりはなく、練習用みたいなつもりで買ったのだが、この楽器が一番望んでいるのがこの仕様だった。

ギターのショートスケールでも24インチあるのにこれは22インチ。もしショートスケールのギターにこの弦を張ったら恐らくネックは完全に反ってしまうでしょう。アコースティックギターのヘビーゲージでもE弦59くらい。このベースはE弦75なので。

しかしこのベースは見た目通りボディとネックが一体型なので多分めちゃくちゃ反りに強いです。色んな弦を色んなチューニングで張りましたが、ネックは全く真っ直ぐです。私は、このベースはピッコロベースになるべくして生まれたんだなと思うようになりました。

もう少し低音を出したいという欲は確かにありましたが、このベースの低音もなかなか気持ちが良い物です。割り切ってからはとにかく楽になった。
まず5弦ベースのオクターブ上げなので指板の音が分かる。
あと、チェロと音域が酷似しているので無伴奏チェロ組曲の練習が楽しい。
最低音はチェロがC、このベースは半音低いB。チェロの最高音弦はA、このベースはそれより全音低いG。ほとんど同じ音域なので大体の曲はカバーできます。

それで弾いてみたバッハの無伴奏チェロ組曲がこちら。
https://youtu.be/8knmJ71hYTo?si=hO4dyAA9H6_ODsVq

ぜひイヤホンで聴いて欲しいです。低音がしっかり鳴っていると思います。
ギターのドロップDでは出せない低音。

とにかく、普通のスケールのベースに細いピッコロ弦を張ったのがピッコロベースという解釈はそろそろ変えていかないとピッコロベースの未来はやってこないのではと思うのです。
fingybass、僕は本当に買って良かった。おすすめできます。

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