見出し画像

映画「戦火のランナー」

監督:ビル・ギャラガー

内戦が続いていたスーダン。毎日が死と隣り合わせだった8歳のグオル・マリアルは両親と離れ、武装勢力に捕らえられたが逃走し難民キャンプに保護された後にアメリカに渡る。時が経ち2011年、初めて走ったマラソンで好タイムを出し翌年のロンドン五輪出場資格を得る。しかし難民であった彼は出場が危ぶまれてしまう。グオルにとって走ることとは。

見てて多くの感情が湧き上がるドキュメンタリー。紛争で親族を28人亡くすって、、私たちには想像不可能すぎる。何の罪もない少年が陥った過酷な運命ってなんなんやろ? 逃れた先で見出した光明が「走る」こと。戦争が日常だった世界を生き抜いてきた人がスポーツに打ち込んだ時、才能だけじゃない大きな何かを感じざるを得ません。ハングリーって形容じゃ足りないですね。戦火から逃げ、誰も知らない他国で独り生きる。得意だった走ることで周囲に認められること。自分がどう生きていくか、存在価値みたいなことも考えたかもしれない。インタビュー聞いてて気持ち入ったし、思い出したくもないことを涙ながらに語る姿に熱くなります。様々な感情で。

国を代表して走る五輪。その根本にも触れています。国とは?生国のスーダンは彼にとって家族を殺した敵であり、国旗を背負って出場することへの拒絶反応は当たり前。五輪の委員会がない南スーダンで出場できるのか。IOCが下した新たな判断。正解かどうかは置いておいて一石を投げました。難民を受け入れて彼が持つ才能を伸ばすために尽力した周囲の人々も素晴らしいし。ありきたりだけどpower of sportsですね、あらためて。

今の日本においてもタイムリーホームランな物語です、期せずして。オリンピック開催賛成な人、反対な人、興味がない人、意見が分かれるからこそ皆さんに見て欲しい映画。オリンピックを目指す選手にはこんな背景の人がいるって事実を知るだけで別角度を感じますきっと。議論する前に大切なことかと。戦争の愚かさから難民問題からオリンピックまで。広範囲に意義深く、考え深まるドキュメンタリーでした。1ヶ月後、南スーダンの選手を応援したくなることだけは間違いありません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?