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処方カスケード

処方カスケードについて自分なりに再度学習してみることにしました。

「カスケード」とは、数珠つなぎのような意味で、処方カスケードは、処方が数珠つなぎになっているような状態。すなわち『服用している薬による有害な反応が新たな病状と誤認され、それに対して新たな処方が生まれるというもの』かと思います。
この誤認というのが大切かなという印象で、ステロイドのように、リスクベネフィットを考慮して、副反応を踏まえながらPPIやビスホスホネート製剤などと共に治療する場合もあるかと思います。その様な場合は誤認はしておらず認識した上で治療を行なっているため、それとは区別し、薬の副反応と気づかず、他の医療機関などで追加の処方が起こってしまうことが、処方カスケードにおける主な問題になるかなと思います。

処方カスケードの要因については、はっきりとはわかっていないようですが、高齢者、ポリファーマシー、女性、「ハイリスク薬」を使用している人は、薬物有害事象のリスクが高い可能性があるようです。薬物有害事象は、新薬開始後4か月以内(特に1か月以内)、用量増加時に起こりやすく、薬物有害事象が起こった際は、患者は報告せずに自己判断で中止することが多く、それは薬物有害事象に対する知識や対処方法の説明が不足しているためだと考えられています。*1
説明不足というところは現場でも気を付けないといけないところですが、薬が多くなっていくほど、すべての有害事象に関する説明をすることは難しく、また、有害事象に関する説明は言葉使いを少し間違えれば、それが服薬拒否につながる場合もあるかと思います。
今回調剤報酬において新設されている特定薬剤管理指導加算3でのRMP資材を用いた点数などにも関連する部分かと思います。
また、かかりつけ薬剤師の文脈でも、その様なリスク管理の部分では、薬や病気に対することは、自己判断せずに、まずは薬剤師や医師に相談してみる、もしくはレッドフラッグ的なサインをきちんと伝えておくことで、ファーストタッチになりうる関係性を築き上げていく必要性があるのかと思います。

ただ、処方カスケード自体を学ぶ機会もそんなに多くはないという印象です。そこで、処方カスケードを、定量的に評価するアルゴリズムを作成している文献もあり、参考になるかなと思います。*2

Marcelo L Ponte,et al.2017;PMID: 28140305

この表からは、薬を服用後の変化や対処したことが時系列で記録が残されていることが大事なように思います。そのように、記録を残し振り返れたり、気づけるためにも、記録が一元化されている方が好ましく、処方カスケードに気づける可能性も高まるかなと思います。

また、どのような処方カスケードのケースが多いかを知っておくことも大切かと思います。臨床で重要な処方カスケード9つを挙げている文献があります。*3
この文献では、処方カスケードを以下のように定義しています。

『臨床的に重要な処方カスケードは、薬剤 A と B を一緒に処方するリスクがその組み合わせの利点を超える可能性が高いカスケード』として定義されました。

Lisa M McCarthy,et al.2022;PMID: 36107399

6 か国の38人の臨床医がDelphi法を行い以下のような処方カスケードのコンセンサスリストを作成しています。

Lisa M McCarthy,et al.2022;PMID: 36107399

ただ、このリストは処方カスケードの一部を切り取っているものであり、処方カスケードに気づくきっかけの一つとして位置付けておくと良いでしょう。
他にもリストの様なものを提供してくれている文献はあり、処方カスケード55件についての推奨事項が提供されているものなどがあります。*4

まずは、処方カスケードのアルゴリズムを頭の中に捉えつつ、いくつかの一般的な処方カスケードのケースを念頭に置いておけると良いのかなと思いました。
調剤報酬においても、特定薬剤管理指導加算3や服用薬剤調整支援料2などリスクに関する点数も増えてきているという印象です。それだけ、リスクベネフィットのリスク部分に対する薬局の役割期待が大きくなってきているのかと思います。

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【参考資料】
*1:Lisa M Kalisch,et al.Aust Prescr 2011;34:162-6.The prescribing cascade
*2:Marcelo L Ponte,et al.2017;PMID: 28140305
*3:Lisa M McCarthy,et al.2022;PMID: 36107399
*4:Oriane Adrien,et al.2023;PMID: 37863868

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