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駿台全国模試の母集団はどれくらいハイレベルなのか?(受験の統計分析いろいろ②)

趣味の統計分析で、模試の判定を用いた合格者推定モデルを作成しています。基準としている模試は駿台全国模試です。駿台全国模試は、大学受験の模試の中で、母集団が最もハイレベルと言われているようです。

ただ、ブログや各種記事のどれを見ても、「駿台全国模試の母集団がどのくらいハイレベルなのか」という定量分析はありません。「偏差値50でMARCHのB判定レベル」などの判定偏差値つまり、母集団の出口からレベルを相対評価していることが多いです。

そんな中、過去に、駿台全国模試の母集団の学力の定量分析に挑戦してみたことがあるので、それについて記事にしてみます。

0. まとめ

  • 駿台全国模試(高1)の受験生が多い高校について、駿台中学生テストの判定偏差値を調べると、平均で確実圏52.7、可能圏47.1であった。

  • この水準は、3大都市圏の公立2〜3番手校、地方の公立トップ校のレベルであり、駿台全国模試の母集団はハイレベルと言える。

  • ただし、高1の時点では中高一貫の有名進学校の名前が少なく、浪人生も受験していないため、高3の駿台全国模試の母集団は、これ以上の学力レベルになる可能性がある。

1. 対象データ

子供が受験した高1・駿台全国模試の成績参考資料にある「学校別受験者数」が分析対象データです。以前は模試の募集要項に、受験者数上位の高校名が記載されていたのですが、今年度から高校名は募集要項に掲載されなくなりました。

そのため、受験者数が多い高校の具体的な名前は記載できません。傾向としては、都道府県のトップ5に入る公立高校、中高一貫の中堅進学校が多い印象です。中高一貫の進学校もいくつかは名前があります。

ただ、筑波大駒場・開成・灘・桜蔭のような超進学校は、高1の時点ではまとまった数が受験していないようで、名前はありません。

今回は、2023年度の高1・駿台全国模試の第1〜3回の合計3回において、1回でも学校別受験者数が掲載された309校を集計対象としています。

2. 駿台全国模試(高1)の受験者像

対象となる309校の全体像はこのようになります。

表1

第1回は私立高校の学校受験が多いようで、私立高校が学校数でも受験者数でも全体の2/3を占めていました。それが第2回以降は逆転して、公立高校が2/3を占めるようになってます。3回平均でも、公立高校が6割というのが、駿台全国模試(高1)の母集団です。

この掲載されている高校の受験者数が、全体の受験者数に占める割合が、右端のカバー率です。3回平均で80%ありますので、これらの高校の傾向は全体傾向を表していると考えて良さそうです。

その前提で、この掲載高校の学力レベルから、駿台全国模試の母集団の学力レベルを推定していきます。

3. 分析対象高校の平均学力

高校別受験者数に掲載されている高校の学力を、高校の入試における難易度を用いて推定します。具体的には、駿台中学生テストの判定偏差値を用います。

駿台中学生テストの判定偏差値は、確実圏(合格可能性80%)と可能圏(同60%)の2つが設定されています。そして、その偏差値数字は駿台のホームページで公開されています。

今回は2023年度の高1・駿台全国模試の分析なので、その受験生が高校入試に挑んだ2022年度の判定偏差値を用います。男女別に設定されている場合は、男女の単純平均値を採用します。中高一貫で高校募集していない高校は数字がないので、集計対象から外します。

分析対象309校のうち、駿台中学生テストの判定偏差値が設定されていたのは248校でした。この248校について、確実圏偏差値と可能圏偏差値を集計すると、次の表のようになりました。偏差値の数値は受験者数で加重した加重平均としています。

表2

248校からの受験者のカバー率は、19,274人/28,017人(表1の全体受験者数平均)=69%です。少しカバー率は落ちますが、ある程度は母集団を代表していると考えられます。

この248校の平均で、確実圏偏差値が52.7、可能圏偏差値が47.1となりました。

4. 母集団に近い高校の抽出

上記の通り、駿台全国模試の母集団の確実圏偏差値が52.7、可能圏偏差値が47.1と推定できます。どちらもプラスマイナス1の範囲にある高校を、駿台の公開資料から抽出すると、このような高校になります。

表3

私立高校も幾つかありますが、3大都市圏は公立2〜3番手校、それ以外の都道府県は公立トップ校の名前が多いようです。

さて、地方の公立トップ校の東大現役合格率をいくつか調べると、平均で2%(5〜6人)くらいでした。構成比が累計2%となる偏差値は70なので、地方の公立トップ校で校内偏差値70を超える層が東大に現役合格していることになります。

これに対して、東大のB判定が理三以外は偏差値66〜68です。最下位合格のラインはB判定の少し下と推定されます。地方公立トップ校の校内偏差値70とはギャップがあります。

ただし、地方公立トップ校は、首都圏の進学校よりも東大の受験志向が低いことを考えると、この少し下の層にも東大合格レベルの学生がいると考えられます。このことから、駿台模試の母集団と地方の公立トップ校の母集団の学力はかなり近いと言えると考えます。

5. 最後に

上記の分析は高1時点の駿台全国模試の学校別受験者数からの分析です。冒頭に述べた通り、ここに掲載される高校には、中高一貫私立の有名進学校はそれほど入っていませんでした。また、掲載されていても、高校募集をしないため、駿台中学生テストの判定偏差値がない高校もあります。

そうした中高一貫の進学校が高3から駿台全国模試を受験するのなら、高3になると、母集団レベルは高1の時よりも上がる可能性があります。さらに、高3の模試は浪人生も受験します。このことによっても、母集団レベルが上がる可能性があります。

ただ、手元に高3の駿台全国模試の学校別受験者数のデータがないので、現時点では分析できません。今回は「駿台全国模試の母集団は東名阪の公立2番手校、地方の公立トップ校のレベルであり、ハイレベルと言える」を仮の結論とさせてもらます。

来年になって、子供が高3の駿台全国模試を受験するようになったら、改めて分析してみようと思います。

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