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閾値

※閲覧注意です。
性被害(痴漢、変質者等)の描写があります。
それぞれの自己責任で読み進めてください。※










最初の痴漢は3歳の時だった。

家でひとりでしか遊ばない私と
団地のガキ大将でみんなを率いて遊ぶ姉と比べられ
母の口癖は
「お姉ちゃんみたいに外で遊んでらっしゃい!」

その日も同じ事を言われ渋々外へ出た。
エレベーターはボタンに手が届かないから
いつも階段を使っていた。
コンクリートの階段を降りて行く。
踊り場から黒いキャップを深く被った黒いパーカーのひとがぬっと現れた。

踊り場で壁を背後に追い詰められ(大人でもしゃがむと外から見えない死角)
何事か囁かれ
パンツを脱がされ
触られて
何事か囁かれ
次の記憶は
脱がされたスカートを押さえて
泣きながら玄関に辿り着いた所だ。
次の記憶は交番で巡査二人に
「じゃぁ、その男の人描ける?」
と聞かれ、私は画用紙いっぱいに
身近な男の人である父を描いた。
犯人=男の人
この図が3歳の私には理解出来ず
男の人=父
しかいなかったのだ。
母はびっくりして
「お父さんじゃない!?」
叫んだ。
巡査は
「まぁ、子どもの言う事ですから、見回り強化しますね」
それだけで終わった。
もし犯人と言われていたら黒いキャップと黒いパーカーを描いた。

小学校に上がると
毎月の様に変質者注意のプリントが出回った。
直接の被害は無かったが
下校で男が女児に
「蜂に刺されて腫れちゃったから撫でてくれる?そうしたら毒が出るから」
これが一番酷かった。
被害に遭った子は訳が分からず撫でたら毒が出て毒がかかった恐怖で号泣した。
その声で何事かとひとが集まったらしいが犯人は捕まっていない。
後はお定まりの露出狂だ。
質が悪いのは怖がって叫ぶ女児を追いかけるらしかった。
叫んでもふざけてるとしか思われないのか犯人が捕まったと聞いた事はない。

登校は班登校だったしPTAが信号などの要所に居て被害は出ていない。
下校は帰りがバラバラだからかPTAも居なかったからか
毎月の様に被害注意喚起のプリントを親に渡す様配られた。

私の学生時代は校庭に誰でも入れて
毎日鉄棒で懸垂をするおじいさんが居た。
もちろん体育の授業は見学し放題だった。
そしてブルマの時代だ。

中学に入り入学式の時にキョロキョロしていたら
同じくキョロキョロしている教師と目が合った。
ニコッとされた。
ロックオンされた瞬間だった。
あの視線は独特で分かるひとは分かると思うのだが
獲物を見定めた目なのだ。

あまり友達を作らずひとりで居る事が多い私に
少しずつ少しずつ距離を縮めて
悩み相談をして特殊な間で返事をされる。
ひとに話しを聞いて貰った事が無い私にとって
その間は私の事を考えてくれていると勘違いする特別な間だった。

どんどん距離は縮まり
深夜に家出して公衆電話から電話を架けると車で迎えに来た。
そしてとうとう教員寮の個人部屋にまで出入りするようになった。
信じられないかも知れないが他の教師は気付いているのかいないのか
誰にも何かを聞かれたりしなかった。

当時の私にとってグルーミングという知識も言葉すら知らないから
恋愛だと思い込んでいた。

そのひとの一番質が悪いのがコンマ1ミリもの悪気が無い事だった。
合コンをし同時に何人もと関係を持ち
それを私に平気で話す。
そして
「嘘を吐く時はほんの少しの本当を入れるとバレないんだよ」

最悪なのが初犯ではなく
私の三年先輩に同じ事をしており
(今思えば三年毎なのも用意周到過ぎる)
その三年先輩と結婚するからもう関係を続けられない。
突然の宣言だった。

そして先輩と住む新居を案内され
DIYのベンチを見せられ喧嘩したらここに逃げるんだと
新しい暮らしの詳細な描写で天井裏を案内された。
そこに私の居場所はない。
「どうして私に見せるの?」
「見せたかったから」
意味が分からない。
私は車の中で泣いて泣いて泣いて不倫でいいからと懇願した。
まだ高校一年生である。

ちなみに私自身に同い年の彼氏が居た。
だが罪悪感はまるで無かった。
先生と関係を続ける為のカモフラージュだから当然だと思っていた。
自分でも当時の自分の行動が信じられない。

返って来た言葉は
「よはくのうちは、父親がダメだ。父親がダメなよはくとは結婚出来ない。
彼女は母親が居ないが父親がしっかりしている。だから彼女と結婚するし
父親がダメなよはくとは結婚出来ない。複数の恋愛と結婚は違う」

放り出される様に車から降ろされ
混乱して家に帰れずバイト先に向かった。
バイト先の休憩室で待ち受けていたのは
みんなから気持ち悪がられていた先輩だ。
「あれ?今日シフト休みじゃない?」
「帰りたくなくて…」
「じゃぁさ、俺の仕事何時に終わるから待っててよ」
「うん」
そのままお持ち帰りだ。

※私の行動を不思議に思われる方は
「アスピーガール」という本を検索して目次だけでも読んでみて欲しい。
私はプラセボ効果が酷いので
病気の知識や薬の知識は一切勉強しない事にしている。
私の話しを疑問に思った夫が私を理解する為に購入して読んで納得したらしい。※

高校生
電車通学が始まる。
更なる地獄の始まりだった。
ギッチギチの満員電車。
乗ったら最後降りるまで身動きが取れない。
そして制服姿は押し込まれ痴漢に囲まれる。
私はふくらはぎの妊娠線が恥ずかしくて一年中タイツ着用だった。
タイツ履いてて本当に良かったと何度思ったか。

高校時代は毎朝の様に
誰かが制服に精液を掛けられ
「もう電車やだ」から始まる学校の朝が当たり前だった。

痴漢狩りも流行ったらしい。
痴漢を捕まえて示談金としてお金を巻き上げるらしい。
本当か嘘かは知らない。

私は幼稚園から成人以降もずっと周囲に
「チョコあげるからとか飴あげるからって言われても
絶対付いてっちゃダメだからね!」
「よはくは大人しそうに見えるんだよ!」
そう言われ続けた。

さて、平日はざっくり245日とする。
毎日ほぼ5人に囲まれる。
痴漢被害は様々含め15歳から28歳まで続いた。
245日×13年間×5人=15,925回
決して大袈裟な数字ではない。
時間を変えても車両を変えても空いていても
電車=痴漢被害だった。

電車内で時々女性の小さな声が
「や、やめて下さい!」
すると
「はぁ!?自意識過剰じゃねぇの!?ふざけんなよ!」
恫喝が始まる。

ギッチギチの満員電車でどう抵抗しろと?
大体3人くらいの勃起した陰茎を押し付けられ
さもうっかり当たってしまいました体の手の甲で繰り返し撫でられる。

ロングヘアをショートにするととか
仁王立ちするととか時々読むが
ギッチギチの満員電車内で
155cm程だった当時の私は電車内でほぼ浮いていた。
そして私はショートヘアだ。

就職してロングスカートかズボンしか履かなくなったが
痴漢被害は変わらなかった。
押し込まれたが最後身動きが取れず
ある日多分イケメンと言われる類いの小綺麗なサラリーマンと
(私は顔を覚えるのが苦手で基準がよく分かりません)
正面で向き合う形で押し込まれた。
そのサラリーマンは手をゴソゴソさせて
あろう事かズボンの上から私のパンツをずらし
陰部をひたすら撫で始めた。
私は動けない変わりに真正面からガン見し続けた。
そのサラリーマンは目を閉じ恍惚の表情でひたすら撫でている。
私の視線を感じたのか目を開け目が合った瞬間我に返ったのか
スッと手を引っ込めた。
が、抵抗しないと判断したのか
再び目を閉じ恍惚の表情である。
ちなみに相変わらず3人から4人の勃起を押しつけられているし
当たってしまった体で手の甲で身体中を撫でられている。

耐えかねて一斉に降りる動く瞬間を狙って
目一杯利き足を後方に引き渾身の力を込めて
膝蹴りを喰らわした。
その後1週間は痴漢に遭わなかった。
が、平和は1週間しか持たない。

お金を貯めて初めてパソコンを買いプロバイダ契約をして
インターネットに繋いで慄いた。
痴漢掲示板なるものがあり
そこには
〇〇電車何両目前から何番出入り口何時何分発〇〇駅から〇〇駅まで
女性の詳しい風貌と抵抗しないからオススメの数々。
そして
初めまして〇〇線利用者です。
同じ電車利用の方情報提供&情報共有しましょう。
夥しい数の犯罪共有があった。

私は絶対に捕まえると心に誓った。
硬いジーンズを履き鞄で急所を覆い思い付く限りの自衛をした。
だが痴漢被害は止まらなかった。

とうとうジーンズのジッパーを下ろされ手を入れられそうになった。
なんとか身体を動かして男の手を掴み
「次の駅で警察行くからな、逃げんじゃねぇぞ」
そう言ったら空間が出来た。
やばいと思った私は
咄嗟に男の背後に周りシャツの襟元と
ズボンとベルトを掴んだ。
次の駅で降りる時に誰かが何かを言った。
「見てんじゃねーよ!」
「…すみません」
私は後ろから男を両手で掴み
「このひと痴漢です。駅員さんか警察呼んで貰えませんか?!」
大声で叫びながらホームを歩いた。

駆け付けた駅員さんと
駅長室に行き110番してもらい
警察が来るのを待った。

警察の取り調べは本当に酷くて
双方の言い分に違いがないかひたすら詰問された。
何時何分〇〇線〇〇行き何両目何番出入り口付近
〇〇駅から〇〇駅の間何分くらい
何をされたか繰り返し聞かれる上に
繰り返し現場検証もされる。

私は何を言われても引き下がらなかった。
警察官からは
「相手の男性も妻子居るし反省してるから」
「だったら、何ですか?」
「これくらいで被害って言い出したらキリが無いよ?」
「被害は被害ですよね?」
「将来の事考えてる?」
「関係ありますか?」
「満員電車だったんでしょ?勘違いじゃないの?」
「勘違いだとして、そのままにして、お見せしましたけど、
ジッパーは自然に下がって下着は自然に不自然な形になったと言う事ですか?」
通勤の8時半から15時半まで繰り返された。
そして出勤したら仲の良かった女性からの
「そんなに自慢したいの?!」
疲れ切って痴漢被害の話しは恋人以外にしなくなった。

酷いのが就職して同期とイタリアンを食べに行った日に
従業員から呼び出され
裏の階段の踊り場で
「しゃがんで」
と言われてしゃがんだら
ボロンと陰茎を出されて
「舐めて、早く」
速攻で立ち上がって
走って席に戻った。
何が何だか分からず
「なんだった?」
と聞かれても
「なんでもない」
と答えるしか出来なかった。


先日
習い事の最中に
あのロックオンの視線を浴びた。
そしてそいつは無断で私に触り指導として
(他の指導員は触る前に必ず断りがあった)
頬と頬が触りそうなくらい近付き息をはぁはぁさせていた。
パニックである。
だが手にしているのは武器であり誰かを怪我させる訳にいかない。
ジッと堪える他無かった。
そして同日に若手強化の名目で悪質なナンパをされた。

残念ながら指導の仕方を指導員で共有されただけだし
ナンパ野郎は悪質なナンパだと思い至っていない。

自分は性被害者なので
男性の指導は受けられませんと言うのも嫌だし
そもそも男女別の習い事ではないので無理な話しだ。
自分から性被害者だと名乗り出たいひとなど居るだろうか。


起きていられない日々が続き
(フラッシュバックで気絶する様にひたすら眠ってしまう)
夕方になると過呼吸の発作で立ち上がるのもやっと。
筋肉はもうほぼ無い。


やっとやっと
ひとりで外出してひとりで公共交通機関に乗れる様になり
念願の習い事を始めたばかりだ。

辞めるか辞めないかで揺れている。

心身共に悲鳴を上げている。
健康以上に大事な物は無い。
壊れたものは元に戻らない事を嫌と言うほど知っている。


だが
私は何度でも立ち上がる。

どこをどう向いて立ち上がるか暗中模索だ。
やっと言葉に出来た。


クソみたいなシステムの中で
黙っているのは御免だ。

痴漢被害は本当に酷くて全部書いたら一冊の本になる。
そして残念な事にASD傾向のある私は記憶力がいい。
忘れないのだ。

性犯罪撲滅。










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