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小さな商い、健やかな生活

小さな商いであることに、愉しみや誇りをもって生活をしています。それはたとえば、ひとつの豆を仕上げて届けるために必要な費用がかさみ始めたとき、小さな店なりの答えを出すということです。

大きな商売であるほど、たった数十円の話であっても、それが何万倍もの出来事になるので、「率」の考えは欠かせません。ところが小さな店であると、それは無限の膨らみではなく、ひとつひとつの具体的な話になります。それだったら、「もう何人か、新しく気に入ってもらえるようにやってみようかな」とか「今いるお客さんが、なるべく健やかな生活を送ることができるように願おう」とか、値上げ以外にも道が見えてくるような気がします。

お客さんの中には、離れた場所で暮らす家族が、それぞれで買ってくださっているという人も珍しくありません。あるお母さんの方からご注文をいただいたとき、「息子さんもちょくちょく頼んでくれてますよ」と伝えると、「あのコ、全然連絡してこないけど、コーヒー飲めてるってことは元気にやってるってことやね」とおっしゃっていました。何気ない会話でしたが、個人的にはすごく印象に残っています。

「コーヒー飲めてるってことは元気にやってるってこと」、生活になじむコーヒーを届ける商いにおいて、お客さんの健やかな生活を願うことは、もっとも大切で基本になることなのだと、改めて思うようになりました。

実際には、願うばかりで何もできないのですが、なるべく高級品に移行することなく、自分たちなりに決めた日用品の領域に留まってみるということは、まあそういうことです。なるべく元気でいてくださいね、無理しないでくださいね、ちゃんと食べて寝てくださいね、規則正しい生活送ってくださいね、なんだか夏休みの目標みたいですが。それで今日も、いつものコーヒーでも飲むか、という人や時間がちょっと増えると、ちょっと値上げした場合と、結果は同じになります。値上げせずにやってこれているのは、ひとえにそのおかげです。

どういう風景を願って商いをすることが好きなのか?言葉や理屈はさておき、毎日の生活の中で、そのようなことを小さく小さく積み重ねられるということは、やっぱり幸せで、いいもんですな~と、今日もふたりでコーヒーを飲みながら話しました。

そういえば先日、夕方の水やりをしていたら、80代のご近所さんと立ち話になって、さ、夕飯夕飯という時分になり、「おやすみなさい」にはまだ早いかなと思っていたら、「じゃ、またあした~」と。なんだかいいなと思ったこの頃、残暑すさまじいですが、お健やかに~。

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