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思い出の味は世界を巡る

私がまだ小さかった時、とてもポジティブな記憶のひとつに父と行った科学博物館がある。

上野に向かう電車に乗る前からワクワクし、実家の団地から駅までの道のりを早歩きで駆け抜けたものだ。

恐竜好きな私は化石のデカさにうっとりし、タカアシガニをみて怖くなって泣いたり、振り子のスムーズな動きに感動したりもした。

そしていつもカツカレーを食べて帰るのだ。

そのせいか駄菓子屋に行けば少し高くてもビッグカツを食べていたし、夢でカツカレーの中を泳いだりもしたほどです。

それからというものカツカレーを目にすれば食べるようになる。

スノボで行った苗場で食べたカツカレー、沖縄に行く前の空港で食べたカツカレー、学食の衣しかないカツのカツカレーも金がある時は食べていた。

カレーが沁みたカツの食感、脂を楽しみながら米と食べ、福神漬けの酸味ある甘味でリフレッシュしたら再びカツをいただく。

最後は全部をぐちゃぐちゃに混ぜてドロドロになったカツの衣とカレーのドロドロを丁寧にスプーンで掬い取ったなら、氷の溶けた水を飲み干してナプキンで口を吹く。

食べれば強くなるような気がしたし、ちょうどよく腹も満たしてくれる、ガッツリくるあの味はまさしく男の食べ物だとも思っていた。

そんなカツカレーが世界的なブームになっていることをご存知でしょうか?

それに気がついたのは去年、チェンマイでカレー屋さんが数軒あることに驚いた時である。

クレイジーカレーという店をシンガポール人に教えてもらっておいてパパカレーという店に行ったのだけど、やっぱりカツカレーは最高だ。

そして今、イギリスでは至る所でKATSU CURRYを目にすることになる。

kokoroというチェーンの寿司屋にはカツカレーがあるし、ウェザースプーンというチェーンのパブにまでカツカレーがあるのだ。

スーパーに行けばカツカレーペースト、インスタントカツカレー、カツカレー味の米まで売っている。

そう、世界はカツカレーを求めてる。

そしてまたカツカレーも我々人類を求めているに違いないのだ。

男の食い物だと私は思っていたけれど、女性人気も高いのがカツカレーだ。

先にも述べたウェザースプーンでは上品な淑女がカツカレーとパイントをやっていたし、カツカレーこそがこの世界を平和へと導く一筋の光となり得ると私は信じている。

喧嘩をやめて、武器を捨てて、そしてカツカレーをお腹いっぱい食べたなら、手を取り合って語り合おう。

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