見出し画像

一巻の終わり?

撃たれる?
 身体が硬直して動けなかった!

 再度、サンディエゴへの遠出。海岸沿いにはアメリカの海軍基地があり、商業も盛んで裕福な人々が住む街としてもアメリカ全土に知られている街だ。住宅地も美しく整備され、さらに日本でも人気の巨大ショッピングモールもある。広大な敷地には世界の人気のブランドの店舗が並び、あまりにも大きいので敷地内専用のバスも走っていた。
ブランド品が通常の半値で買えると聞いて、数人で見に行くこととなった。パサデナから4時間近く掛け、405フリーウェイを時速80マイル(128キロ)前後の速度で南に向かって飛ばす。
 道路の右側は太平洋、ずっと海だ。青空の下、快適に走りながら、この海の向こうは日本だなあ、と少々、感慨深い。
「後1時間くらいでサンディエゴに着くよ」と長男が言う。フッと海側を見ると大きな船が停泊している。
「船がいるよ」というと、
「米軍の軍艦だ。初めて見た!」と戦闘機や軍艦が好きな長男は興奮している。
「近くにアメリカの海軍基地があるからだよ」
と言う。興味のない他の4人は、
「ふ~ん」
と眺めるだけ。でも、ジックリ見たい、という長男のために道端に車を停め、全員で身体を海側に向けて眺めていた。その瞬間、爆音が聞こえて来た。
「ブルブルブル~」
運転席にいた次男が
「ギャーッ!何~?」
と叫び声をあげた。
 フロントガラスの真ん前に真っ黒なヘリコプターがこちらに正面を向けてホバリングをしている。
 ヘルメットを被り、サングラスを掛けたアメリカ軍の兵士2人がこちらを凝視している。
 撃たれる!!!
 アメリカ映画の銃撃戦で
「ダダダダ!」
と撃ち殺されるシーンが瞬間、頭をよぎる。
 誰も言葉を発しない。全員、身体が硬直している。もう、ダメだ、一巻の終わりだ!と思ったその時、兵士2人が
「ニヤッ!」
 と白い歯を剥き出して笑った。そして、私達に嬉しそうに手を振って機体の向きを変え、轟音を響かせながら飛び去って行った。
 数秒してやっと、彼等に揶揄われたのだ、と分かった。
「肝を冷やす」とは良い例え。
 本当に一時はどうなるか?と思って肝を冷やした(全員、チビリはしなかったが)!
 アメリカ人はジョーク好きだ。後で周りの人に聞くと、結構、これをやられた人が多いとか……
 ただ、悔しいけれど、やられた人達のあの恐怖に引きつった表情を見るのは楽しいかも、とも思った。

ジョークは楽しいものにして欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?