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翌日、おまけで寄った大磯の話を先に書いてアップしたが、主目的の平塚オールスター競輪観戦記も一応。

平塚駅に到着したのは午後五時前。北口の階段を降りたあたりにシャトルバス乗り場があった。8時間の長旅で疲れていたから、飲み物でも買ってちょっと休んでから向かいたかったが、警備員が「競輪場行き間もなく出ます!」と急かしてきたので、次のバスを待つのもバカらしいかと飛び乗った。ナイターで5レース目くらいの時間だったが、かなりの乗車率だった。オールスター競輪は2016年からお盆に開催されることになった。私もそのおかげで、福島のいわき平、埼玉の西武園での開催に行くとができた。仕事は休みだし、なんといっても18きっぷが使える。

今回も平塚ならその日の朝に出ても行けるな、ということでしばらく前から行くつもりではいたのだが、今年の前期は例年より沢山の講義を担当し、その分成績つけ仕事も大変でなかなか終わりが見えなかったので、片付いてから具体的に考えるか、くらいの気持ちだった。遊びの目標をニンジンにして、自分に発破をかけるようなエネルギーは今の自分にはない。マイペースで仕事して片付かなければ行かなくてもいいかと思っていた。片付いたのは、決勝戦の前日だった。それならばと出ることにしたのだ。貧乏旅行者には宿代が一番のネックだが、アゴダを見るとビジネスホテルが4000円ちょっとで出ていた。日曜夜だから安い方なのだろう。翌日会ったスポーツ紙記者さんによれば、定宿の東横インも高騰していて出張費から足が出たとのことだったので、ラッキーだったかもしれない。

バスに乗ること5分弱、すぐに競輪場到着。シャトルバス、別名オケラバスは、いかにもギャンブルやる人って感じのオッサンが大半を占める、というのが通常のイメージだが、まるで普通のイベントのような、ごく普通の客が多かった。カップルで来ている人らもいた。

入場無料だった。施設はとてもきれいだった。7年くらい前に大きな改修工事をしたようだ。競輪場は日本各地にあるが、運営する自治体によって営業のやる気に大きな違いがある。私の住む関西エリアは、現在、競輪不毛地帯のようになりつつある。かつては何か所もあった競輪場も歴史の中で淘汰され数を減らしている。(詳しくは拙著を…)大阪は、笹川良一のおひざ元であり、ボートの力が強く、競輪が駆逐されてきたという経緯もある。大阪の隣町に住む私の家から通える競輪場は、現在、向日町、奈良、岸和田の三か所だけ。岸和田は、岸和田市が未だに競輪の売上にそれなりに期待しているためか施設もそれなりに維持されてはいるが、向日町、奈良の施設老朽化は誰の目にも明らかだ。耐震基準を満たさず立ち入り禁止のまま放置されているスタンドもいくつもある。通常の開催では客も少なく、いつも閑古鳥がないている。ただ、全国的に競輪の売上自体は好調で、これはオンラインで買う人が圧倒的に増えたからなのだ。家でスマホやパソコンで楽しむ遊び、それが現在の競輪だ。


決勝戦メンバーの特別紹介 音響悪く何言ってるのかほとんどわからず

そんなわけで、観客が沢山入っている競輪場を見ると、それだけで感動する。後で分かったがこの日は1万人の入場者を記録したそうだ。主催者発表だとしても、そんなには水増ししてないと思う。今回、大阪の古性優作選手が優勝した。タイトルをいくつも獲っている現在輪界ナンバーワンの実力者だ。ここに集まっているほぼ全員が、古性優作を知っているんだな。すごいな、と思ってしまう。一般人の間での知名度は残念ながら売れないB級タレント以下であろう。観客に占める女性の割合も2割以上。これは近年のビッグレースの傾向だが、男しかない世界だった時代を知っているから、未だに驚く。彼女たちも古性を知っている。すごい。スタート地点の前がメインスタンドになっていて、その上に有料の特別観覧席がある。全体を見渡せて冷房も効いているが、ガラス越しの観戦になる。だから自分はあまり利用しない。特別観覧席のすぐ下に何人か望遠レンズをつけた一眼レフカメラを構えるファンの姿があった。障害物なく直で選手を撮れる数少ない場所なのだろう。こういうファンも前世紀には見たことがなかった。その中には女性もいた。選手の名前を書いたボードやスポーツタオルなんかを掲げて声援を送る人も何人もいた。


カルピスのサービスに元子どもたちも大喜び

どこの競輪場にも「湯茶サービス」として無料のお茶、水くらいはあるが、今回の平塚はすごかった。無料のジュースにコーヒー、なんとカルピスまであった。親に連れてこられた子どもたちもかなりいて、皆嬉しそうに何杯も飲んでいた。大阪から来たおっさんももちろん何杯も飲んだ。食事を提供している売店も何店舗も営業していた。関西の競輪場では、食堂はほぼ絶滅状態になっている。年数日の特別なレースの時だけ増えても、普段から一定の客が来ていないと営業できないから。とにかく、施設は全てがとてもきれいだった。関西の競輪場と同じ時代に存在するものとは思えなかった。

だが、平塚競輪場には致命的な欠点があった。それは、レースがとても見にくいということだ。カメラの人が陣取っていた正面スタンドの一部と、特別観覧席以外にはレース全体を見渡せる場所がほとんどなかった。客が少なければメインスタンドで見たらいいのだろうが、今回のように大勢の観客がいると、そこからは人の頭しか見えない。

自分は、第4コーナー辺りで観戦するのが好きだが、バンク周辺のスタンドにはほとんど傾斜がなく、椅子に座ったままだとレースがほとんど見えない。大きなビジョンがいくつか用意されているから、座っている人たちはお連れさんらと談笑しながら、ビジョンで観戦するような感じだった。バンクは強化プラスチックのボードで囲まれていた。立ってそこにはりついていれば、目の前を通る選手の様子は見えるが、全体は見づらい。ゴール線内側に、アトラクションや表彰式用のテントが張ってあった。そのため、向こう正面からは肝腎なゴール線あたりの攻防が見えない。このテントはこういうビッグレースの時だけかもしれないが、とにかく現場で観戦する人のことを考えていない設計だと感じた。奈良競輪、向日町競輪の屋外スタンドは、どこでもバンク全体を見渡せた。競輪を見るための場所なんだから当然だ。(それらのスタンドも今は老朽化で立ち入り禁止なのだが。)平塚も改修前はこうでなかったはず。改修にあたって、別の設計思想が入り込んだのだろう。

湘南で京都に触れる

イベントがあった。マスコットキャラのアイドルの人が来ていたようだが、興味がないから見なかった。(芸能人に興味がないのではない。名古屋競輪にピンクレディーのミーちゃんが来てた時は見に行った。)オリンピックに出て帰国した日の夕方にもう走るというスケジュールをこなした選手のひとり、ガールズの太田りゆ選手のトークショーがあった。どう考えても無茶なスケジュールで、自分は批判的だったが、困難を乗り越えた爽やかな顔で話をしていた。それだけタフなのだろう。京都のレジェンド松本整と村上義弘の師弟トークショーというのもやっていた。競輪のビッグイベントに相応しいゲストだが、関西から8時間もかけて来たのに、競輪的には「ザ・京都」のお二人を見るなんて、なんか変な気持ちではあった。そういえば、入場してすぐに目にしたキャラクターが、大腸ヘドロ君だった。関西万博後援というくだらないことをやっているからなのだが、こんなところまで君は追いかけてくるのか、とうんざりした。キャラの気持ち悪さ自体はそんなに嫌いではないのだが、車券の一部がヘドロになるのだと思うと、うんざり。そんなレース買わなければいいんだけど…。

大腸ヘドロ君とイルカ(と思ったらシャチだそうです)

腹も減ったから、売店で何か買おうと思った。フードコートスタイルで、空いているテーブルに持って行って食べるのだが、グループで来ている人たちに占有されていた。出走表片手にビールを飲みながら長々と座っている人も多いようだった。かなり待ってようやくひとつ空いたので、急いで座り、カレーライスというベタなものを食べた。こういう所ではホルモン系の定食とかが定番なのだが、そんなに好きではないのだ。酒のつまみとしてなら食べないことはないが。日が暮れてもかなりの暑さだった。売店周りは屋外で空調もなく、それにすごい混みようだったので、さっと食べて空いている場所に移動したかった。生ビールに激しくそそられたが、寝不足でもあるし終わってから外でコンビニで買って飲もうと我慢した。売店にはひっきりなしに客が来ていた。これはかなりの儲けになっただろう。

車券はスマホで買うようになったので、穴場には全く行かなかった。締め切り前の長蛇の列などは一昔前の風景になりつつあるか。車券も買える、レースの予想情報も読める、カメラにも、時刻表にもなる、ホテルの予約もできる、さみしさ紛らすツィッターも使える。スマホってほぼドラえもんだ。

DJが登場し、ダンサーたちが踊る時間もあった。レースが見えないんだからこういうショーも当然見にくい。DJは後で調べたら元グローブのマーク・パンサーという有名人だった。サザン、チューブと「高齢者」向けのナツメロから、何か今の夏らしい曲も何曲か流れた。ドラえもんで「曲検索」をしたら、湘南乃風だとわかった。(前回の記事参照)ちょっとかさばるが電池の持ちがいいのだけが取り柄の我が格安スマホだが、レース終盤にはさすがに電池が怪しくなってきた。モバイルバッテリーなんてものは持ってないから、最低、宿までの地図が見られるように、できるだけ使わないようにはした。5レースからちょろちょろ買っていた車券は全部外れた。ひとつのレースにはせいぜい1000円くらいしか使わないが、外れ続けるとちょっとこたえる。18キップでわざわざ来て何してるんだということになる。最終レースの決勝戦は、何とか当たった。初めて来た湘南なのに、大腸ヘドロ君はいるし、京都のレジェンドもいたんだから、これは関西が来そうだな、と思って、いや、予想会で誰かが言ってた目だったか、どっちにしろ自分で深く考えたものではない、大阪・京都の二人の2車単、そこから流す3連複を買って、高めの結果になりこの日の負け分は取り返し、ビジネスホテル代くらいは出た。遠征して浮くなんて珍しいから嬉しかった。

レース展開を見るのは諦めた… でも華やかな雰囲気ではある

最終終わったらすぐに宿に向かった。オケラバス待ちの長蛇の列が出来てたから歩いて帰ることにした。案内所で道順を尋ねると、人の流れについて行ったら皆さんだいたい駅に向かいます、とのことで、そうした。競輪場を出てしばらくしたら、花火の音がした。表彰式の後にあがったよう。古性選手の優勝インタビューくらい聞いて、花火くらい見て帰ればよかったとちょっと後悔したが、疲れていたからまぁ仕方がない。観戦しにくいだけじゃなく、音響が非常に悪いというのも残ってセレモニーを見る気を削いだ。最初の方で決勝戦メンバーのインタビューがあったが、何を言っているのかほとんど聞き取れなかった。特別観覧席内のスピーカーだったら聞きやすいのかもしれない。駅まで歩いて15分くらいだった。途中にどこにでも見かけるドラッグストアがあったから、缶ビールを買った。当たってなかったら発泡酒のところだったが、せっかくなんで。晴れ風というのを初めて飲んだが、違いはよくわからなかった。暑くて喉が渇いてたから普通にうまかったが、発泡酒で十分だっただろう。ツィッターでフォローしている神奈川支部の選手が、駅に向かっていた。支部のファンサービスを手伝っていたのだろう。いつも見てますよ、と声をかけようかと思ったが、それ以上話すこともないと思いやめておいた。おしまい。

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