見出し画像

前々回にアップした通り、8月の中頃、東京に行ってきた。旅行の主目的は、そちらを参照のこと。書きもらした道中の記録を備忘録的に。

8/12金、朝出発。
18きっぷで大阪から東京に行くには約9時間強かかる。この日は、到着さえすればいいからゆったり目で9時過ぎに家を出た。近所の駅から各停に乗り、大阪駅で新快速に乗り換える。ホームで「絶対座席を確保しよう」と列に並び、入線してきた電車から客が降りきるのを身構えて待っていたら、様子がちょっとおかしかった。乗っていた客たちが、何かを避けるように動いている。

床に嘔吐物が見えた。小学生くらいの男の子が泣いている。父親らしいのが、その子の腕をひっぱり「いいからほっといて降りろ」と急かせていた。混んでて、子どもが吐いちゃったのね。大変だなと同情しつつも、父ちゃんまで本当に「ほっといて」降りるのはアカンのちゃうかと思いながら、それを避けて、まずは席の確保に急いだ。他の人たちも皆、それをさけながら、困惑した表情で乗り込んで来た。電車はそのまま出発。あの父親、駅員に説明くらいしておけよ、とちょっとイラつき、折角の旅行なのに嫌な出発だな、ずっとゲロと一緒もかなわん、車掌早く発見しないかな、来ないなら言いに行かないとあかんかな、と気にしながらも傍観していたら、後から乗り込んできて立っていた60代後半くらいのおじさんが、ポケットティッシュを取り出して、さっさと片づけ始めたのだった。

大げさでなく衝撃を受けた。乗務員に頼むことしか頭に浮かばず、自分の手で何とかするなんて全く思いもつかなかったからだ。「なぜ思いもつかなかったのか」についてしばし反省する。様子を見ていると、困って見ていただけの若いオシャレなお兄さんも、これも使ってください、と自分のティッシュを手渡していた。数人はただ見ているだけ。お兄さんはきっといたたまれなかったはず。自分もよく分かる。おじさんは、どうも、とそれを受け取って、席を確保していた連れ合いさんから小さいレジ袋を受け取り、嘔吐物を吸い取ったティッシュをそこに放り込んで、くるくるくると袋をしばり平然としている。おじさんは、私の横に立つ恰好になったので、持ってきていた「アルコールスプレー」を取り出し、「あの、良かったら」と声をかけた。おじさんは、あ、という顔をして手のひらを出してくれたので、気休めの殺菌噴霧をした。「傍観していただけではない」と自分に言い訳するためだけの行為だなと思いつつ。両手をこすり合わせてアルコールをひろげているおじさんを見て、もしかして、このために「この時期にこういうことをするのはまずかったかな」と逆に思わせてしまったのではないか、とちょっと気になった。その後、自分の隣が空き、おじさんが座り、京都まで隣り合わせだった。何も会話はなかったが、その間、よき行いを見たことの感動に震えていた。わが身の恥ずかしさと共に。良い出発になった。

京都まではなじみの世界。最も、いつもは阪急か京阪で行くのでJRの景色は久しぶりではある。京都から離れると、徐々に旅行気分が高まる。最近、鉄道系ユーチューブを見るようになって、このあたりの複々線区間(草津-西明石間)が日本最長であり、こちらで馴染みの新快速の「快速」ぶりは、日本有数なのだということを知った。子どもの頃は普通に鉄道オタクだったが、高校生くらいで知識の更新が止まっている。他のジャンルについても、似たようなものかもしれない。高校生くらいまでに知った知識で「知ってます」みたいな顔して喋っていることも多い気がする。というわけで「新快速はすごいんだな」とありがたみを感じて乗っていた。

席を寄こせ。貧乏旅行者の怒号が飛び交う(ウソ)

米原で乗り換える。18きっぷシーズンは、ここが一つの勝負所になる。大阪から東京まで、という客はそれなりくらいだが、名古屋まで行く客は相当いる。連絡橋を登り、東海道線上りホームに向かうと、何人もの駅員が立っていて、危ないから走らないでと注意を促していた。ちょっとしたラッシュだった。自分はひとり旅だし、席くらいは確保できるだろうと、トイレに行く方を優先して、ゆったり乗り換えた。こういう旅で、席をとっておいてもらえる連れがいない時は、機会があるたびにトイレには行っておくべき。豊橋行きの新快速。以前は、名古屋圏新快速は、米原まで来てなかったから、大垣まで行ってから乗り換えなければならなかったが、大分楽になっている。関ケ原のあたりまで来ると、遠くに来た感はさらに高まるが、そういえば一緒にウェブ雑誌作りをしている同志社のポスドクさんは、このあたりが実家でシェアハウスも利用しつつ、ここから通うこともあると言っていたなと思い出す。そういう意味では、まだご近所の範囲だ。伊吹山は曇っていてきれいに見られなかった。

長良川、木曽川が見えると、名古屋圏。東京は4年ぶりだが、この間、名古屋までは3回くらいは来ている。ちょうど昼頃だったから、名古屋で一度降りて昼飯を食べるか、せっかく座っていられるのだから豊橋まで行くべきか迷うが、名古屋下車を選択。ホームできしめんを食べる。スマホで検索して、3・4番線ホームの店が美味いとあったので、行ってみるも、それらしいのが見当たらない。新幹線ホームの3・4番線のことだった。東海道線上りホームにも店があったのでそちらに。満席で2人くらい待たされた。天ぷらとか載ったワンコインのスペシャル的なのを食べる。冷凍うどんだけど、まぁうまい。さっさと食べて、次の新快速を待った。ホームのコンビニでコーヒーを買って、乗り込んだ。

500円

(つづく)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?