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玖躬琉の部屋

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長い独り言や自身の経験を織り交ぜた随筆やエッセイらしきものもこちらで。
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2021年1月の記事一覧

匂い

突然なんですが、妙に匂うんですよ。 匂うって言ってもカップルで写真どーのこーのの「匂わせ」的なもんじゃなくてね。あ、聞いてないか。物理的にです。 くっさいんですよ!くっさいの!何とも言えないくささなんですわ。 気が付いたのがここ何ヶ月か前。フッとした拍子に「わっ!くさっ!」ってなる。後ろを振り返って確かめるんですけど、独り暮らしなんで当然誰もいない。「なんだよ…おい」と、ちょっと斜め上を観ながら、いかにも向上心溢れる出で立ちで、観たこともないのに鼻の穴に感覚を「全集中」

棺桶

「こんなことやった店で飲む酒、美味しいと思う?」 母は少し不機嫌な顔をしてテレビを見ていた。 画面には緊急事態宣言のテロップと、カウンターの端から端までびっしりと遮った透明のカーテン。パーテンションで区切られたカウンターがあって、ぶっきらぼうに店主が「従うしかない」とインタビュアーに答えていた。 私はスマートフォンでパーテンションとビニールカーテンの材料を物色しながら、「仕方ないでしょ。やっとかないと持続化給付金の申請もできないんだし」と答えた。 ☐ 私の母はスナック