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玖躬琉の部屋

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長い独り言や自身の経験を織り交ぜた随筆やエッセイらしきものもこちらで。
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2020年3月の記事一覧

ささやかな抵抗

失業保険の手続きに、ハローワークへ向かう。 在宅でもいくつか仕事をしているが、余力のある生活費を稼ぐだけの対価はまだない。サラリーマン時代、毎月天引きされていた6桁の税金が、今の私を生かしている。 入り口で、手にしたアルコールを丁寧に擦り付けながら進もうとした時、人の行列がそれを阻んだ。 思わず立ち止まったまま並んでいると、後ろにいた女性から「もっと詰めてください」と迫られた。私が知る限り、約2メートルは距離を置くのがスタンダードなのだが、通用しないことを悟った。私はマス

歌うたい

今日の出番は3番目。 2番目に出ていたあの子。可愛いな。綺麗な髪色にツインテール。赤いルージュに白のニーハイと厚底サンダル。ギターの装飾がライトに照らされてキラキラしてた。 お揃いのグッズをもったファンからの声援に囲まれて楽しそうだった。事前に用意されていたアンコールにも掛け声がかかり、演奏時間が5分延びた。 「ごめん。少し巻き気味でおねがいね。」ライブハウスのマスターが申し訳なさそうに耳打ちする声に私は小さく「はい」と答えた。 私の出番に切り替わるBGMと共に、その熱は一

頑張れ、シャープさん

昨日、この記事を目にした瞬間、涙が溢れて止まらなくなりました。 理由は、自身が工場勤務だったことで、量産が始まるまでの道筋を自身の経験と重ねてしまったからです。 感情に任せて衝動的にツイートしてしまいました。 ■□ 2年前までの約20年間、自動車部品工場で働いていました。 以前のnoteにも書きましたが、自身が工場で働いていた時、新規部品の立ち上げから、量産までのプロジェクトリーダーを任されたことがあります。 その部品は、不具合を起こすと人命にかかわる危険がある「重要

厄月に想う

3月。 自身にとっての「厄月」です。逢魔が時はなぜか3月。体を壊し、心を壊し、大切な人との別れもこの時期が多いのです。溢れる感情が文字の洪水になって、頭の中で流れ出ていることに気づき、その一端を拾い集めて厄を払うようにここへ言葉を並べ「書いて生きたい」と思い始めたのも昨年の今頃でした。 PCのモニターや携帯という小さな四角形の中に眼球と心を寄せながら、様々な言葉や作者に出会い、別れながらこの「note」に言葉を書くようになって1年が過ぎます。 ここに寄せられた作品や縁が