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玖躬琉の部屋

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長い独り言や自身の経験を織り交ぜた随筆やエッセイらしきものもこちらで。
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2019年11月の記事一覧

良かれと思い

先日、音楽で縁を繋いだ人が、近いうちに海外へ行くとの連絡があった。 その時、「みんなが着なくなった要らない古着を集めて持っていく」と言っていた。渡航先の服が買えない子供達などにプレゼントをするためだ。 約1年半前にも彼は、ギターと30キロを超える古着をバックパッカーや登山者が使うような大きなリュックに詰め込んでバングラデシュに向かい、弾き語りをしながら、道行く人に古着を配り、旅をしていた。 片言の英語と日本語しか話せないが、「音」を奏で、「唄う」ことで周りとのコミュニ

馬にみておれ

【登場人物:遊馬(33) 競馬歴5年】 彼はいつも孤独だった。 うだつが上がらない日々。頑固で嘘がつけない性格で、周囲に同調できずにいた。 5年前、仕事で理不尽な理由で上司と揉め、ムシャクシャして立ち寄った浅草の飲み屋で、たまたま隣に座っていたおっさんが見ていた競馬新聞に書かれた馬名に目が留まる。 「ウマニミテオレ」。 (なんだよその名前…そんなの付けられて可哀想に。) そう思いつつ気になって目が離せずにいると、新聞の持ち主であるおっさんが気が付いて、 「あんちゃん、競

ぽてさらちゃん。ライブレポ ま・と・め

2019年11月24日 東京で2回目の単独ライブが目前となった我が「推し」 ぽてさらちゃん。 大阪を拠点に活躍する、弾き語りメインのシンガーソングライターです。 きっかけはブログ4コマ漫画家「マンモスジャパン」さんからですが、起用キャラクターとしてではなく、アーティストの「ぽてさらちゃん。」を追いかけること約半年。 曲を通じて心に刺さる「声」と「言葉」をくれたひとりです。 彼女は弾き語りの他にもミュージカルや映画など、様々なジャンルで活躍しているマルチアーティスト。

魔法の加湿器

納期が迫った仕事に追われ真夜中に差し掛かる頃、誰かに見られている気がする…ふと振り向くと加湿器から声がする。「室内の湿度が45%以下の時だけ、お前の願いを叶えてやろう。」私が託したある願いとは。(97文字)

心の味覚

ある人から「なぜ君はそんなに人を許せるの?」と聞かれたことがある。 許せるも何も、私がそう思ってしまったのだから、仕方ないではないか。 「ではあなたはなぜそれが許せないの?」と聞けば、多分同じ回答でしょ? だって、そう思ってしまったのでしょうから。 甘い物を「これは甘い」と思うために必要な事は、「これは苦い」を知ることだ。 それ故に分かること、分からない事、分かりたいこと、分かりたくない事、許せること、許せない事、すべきもの、すべきでないものが枝葉となる。 自分とい

産声(4)

2019年9月15日 17:30 「わーピカピカだ・・・!配線も今日やっちゃうの?」 「ううん。今日はここまで。明日の講習の課題、まだ少し残ってるから。」 「そか。また進捗分かったら教えて。そろそろ夕方だし帰るわ。サイトの更新と原稿の仕込みもあるからさ。」 ノートPCを片付けながら、私は鞄の中からタッパーウェアを取り出し、冷蔵庫を開けた。 「調味料と水しか入ってないじゃん。」 「近くにコンビニあるからつい…はは。」 「一人だと野菜とか腐らせちゃうしね。最近コンビニも美味しく