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4.15

実家で飼っていたわんこが天国へ旅立った。

小学6年生の時に、どうしても犬が飼いたくて、両親を半ば無理やりペットショップへ連れて行った。

トイプードルとチワワのMIX。目がくりくりして、握りつぶせそうなほど小さくて、抱っこしたら温かくて。

「この子が飼いたい!」とお願いしたけれど、一回家族会議をしてからと言われてその日は家に帰った。

家族会議の末、そのわんこをお迎えすることになった。

嬉しくて、家にきてくれる日が待ち遠しくて、毎日そのことで頭がいっぱいだった。

ペットショップから家に向かう車の中、私の腕の中で不安そうな顔をしていたのを今でもよく覚えている。

わんこを飼い始める少し前に、小さい時から飼っていた亀のカメ吉が死んでしまって、カメ吉を庭のあんずの木の下に埋めた。

だから、という訳でもないけれど、響きもかわいいので名前はあんずになった。女の子で生後2ヶ月の仔犬。誕生日は9月25日で、飼い始めたのはたしか、勤労感謝の日だった。

うちに来てからも私の頭の中はあんずのことで一杯だった。小さすぎて、朝起きたら死んじゃってるんじゃないかと思って、目が覚めたら真っ先にあんずの元に向かった。

あんずは毎日とても元気で、出して!出して!と言わんばかりに、ゲージの中で暴れていた。飼い始めはゲージから出してあげられなかったので、出さずに知らんぷりしていると、いつの頃からか口を使って器用にゲージを開けるようになった。頭がいい子なんだなぁと感心した。

しかし、頭は決して良くはなかった。笑

成長するにつれて、食い意地ばかりはるようになった。なによりもごはんとおやつが大好きで、おやつのケースの前で待ち伏せしたり、おやつをもらうためにイタズラをしたり…
おやつをもらうためなら、手段は選ばなかった。

そんなあんずに大事なものをボロボロにされたり、手を思いっきり噛まれて流血したりと、本気でムカついたこともある。

それでも、自分が眠くなるとすぐ甘えてきたり、雷が鳴ったら怯えて側を離れなくなったり、かわいいところも沢山あった。

なにより、いつも元気溌剌でおバカな姿は私を元気付けてくれた。

悲しくて1人で泣いてる時は、私の頬をペロペロ舐めて励ましてくれた。朝は必ず部屋のドアをガリガリと引っ掻いて、中に入れてあげるとベッドの上にのぼって顔を舐めてきた。挨拶が済むと布団の上にくるくると丸まって、一緒に二度寝をした。

散歩は嫌いで、家が大好き。
家族以外の人間には全く懐かず、出て行け!とばかりに吠えまくる。THE 内弁慶だった。

家にきたばかりの頃は、きゅーんというか弱い声しか出せなかったのに、いつの間にか、宅配のおじさんに「最高の番犬」と称えられるほど立派に吠えるようになった。うるさいくらいに。

すぐに毛が伸びてモップみたいになる。シャンプーをしたり、トリミングに連れて行ってあげたりすると、こんなにもスリムだったのか、と毎回驚かされた。

冬は姉と私とあんずで、ストーブの前の場所取り合戦をよく繰り広げた。あんずは温風が出てくるところにぴったりと身体をつけるので、周りが温かくならず家族を困らせた。

青いテトラポッドみたいな形の、ゴム製の玩具で引っ張り合いの遊びをするのが大好きだった。歳をとっても大好きだったけど、すぐに疲れてしまって昔みたいに長くは遊べなくなった。

あんずは老けないから、歳をとった、と感じることはあまりなかったけれど、体力が落ちてきていることはなんとなく分かった。それでも、いつかはいなくなってしまうと分かってはいても、その時はまだ先だと思っていた。

その知らせは突然だった。僧帽弁閉鎖不全症という病気にかかっていて、いつ発作が起きて死んでしまってもおかしくないという。

いきなりすぎて、信じられなくて、とりあえず実家に会いに行った。

家のドアを開けるなり、いつも通りの、元気な声が聞こえて安心した。大好きなごはんも、おやつも、相変わらずの食べっぷりだった。

だけど、帰り際に抱っこすると、身体が骨張っていた。昔はもっと重たかったのに。心臓が肥大化しているから、お尻にかけて痩せてしまっていた。これが最後の抱っこかもしれない、そんなことは考えたくなかったけれど、直感的にそう思ってしまい、泣きそうになるのを必死に堪えた。

それから約1ヶ月経った4月15日。22時半頃、母から電話があった。急に発作が起きて死んでしまった。突然のことすぎて、何もできなかったと言っていた。

頭が真っ白になり、全く実感がわかないまま、それでも頭のどこかでは分かっていて、涙が止まらなくなった。実家に帰っても、もう元気な鳴き声も聞けないし、食い意地ばかり張っている姿に呆れることもできないなんて、正直信じ難い。

あんずは、葬儀屋さんに頼んで火葬してもらった。コロナの影響で両親は今週はずっと家にいて、あんずと一緒に過ごすことができていた。本当に、家に1人の時に発作が起こって死んでしまわなくてよかった。大好きなパパとママに看取られたことだけが救いだった。

逆に、緊急事態宣言が出ていることで私と姉は実家に帰ることが出来ず、あんずを見送ることも出来なかった。それでも、きっと想いは届いているはずだ。

約12年間、一緒に生きてくれてありがとう。
大好きだよ!
天国では犬見知り・人見知りをせずに、たくさん友達をつくって、大好きなごはんとおやつを食べて、いっぱい寝て、楽しく過ごしてね。
私もそっちに行ったら、おもちゃでたくさん遊ぼうね。

出会えて幸せだったよ。

また会える日まで。元気でね!


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