見出し画像

金木犀の香に切なくなる

私は秋生まれ。10月生まれ。
自分の誕生日か近くなる頃、ちょうど今頃だけど、角を曲がって軒先から、金木犀の香りに出くわすと、すごく、胸がキュンとなる。

あー、今年もこんな季節かぁ。
もうすぐ、私の季節だ。

いい匂いだけど、爽やかサワデーだなぁ。

とか。

中学時代、クラスメートでいじられてた男子が、別の男子のいたずらで、
自分の席の机の穴に、金木犀を枝ごと差して置かれてて、
昼休みの休憩から外から帰ってくるなり、
「なんで、こんないい匂いなんだよ!トイレかよー!」と、
いい香りに突っ込んでたのを思い出す。

嗅覚を刺激する思い出は、大したことなくても、同じ匂いと一緒に思い出す。

もっと小さい小学校低学年の頃、匂い玉とか集めてたなぁ。
筆箱にいれたり、鉛筆キャップの頭に入れたり、名札に入れたり…。
半透明の、ピンク、紫、水色、黄色…。
友達やいとこと交換したりして、落として、小さいゴム状の匂い玉を教室の床で拾ったりしてたなぁ。
和柄の大切なお手紙箱に、一緒に仕舞ってたなぁ。

昼休みに教室を掃くと必ず、2.3個転がって黒くなってんだよなー。

今はもう存在しないかもしれないけど、昔、ファンシーショップと言われる、今でいう雑貨屋さんがあったんだけど、私の地元は田舎すぎて、
自転車でも少し遠く感じる隣町にしかファンシーショップがなく、
隣町にお稽古毎でお母さんに車で送迎してもらう時に、例えば少し待つ時間があるとき、雨が降っている時に、お店に入って待つことがあった。

そこには、デザインがかわいい文房具が沢山あって、よく友達のお誕生日プレゼントとかでしか、買えないものを選びに行ってたんだけど、
そこに、匂い消しゴムや匂い玉とか、かわいい便箋セットとか、とにかく小学生にとっては、胸がときめくものが沢山あった。

雨は嫌だったけど、その時の雨は、まだ降ってていいよと思っていた。
匂い玉を、鼻に近づけて、お母さんの迎えよりも、もっともっと匂いを嗅いでいたい。と思っていた。

今思い出すと、人工香料のなんとも言えないチープな匂いだけど、
あの匂い玉を見かけなくなったということは、今はもう匂い玉ないのかなぁ。
もう嗅げないのかなぁ。

金木犀の香りは、強すぎるから苦手な人もいるかもしれないけど、あの唯一無二の香りは秋の到来を知らせると共に、
私をいつも、過去の小さかったあの頃に連れ出してくれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?