ゼノンのパラドックス

ゼノンというのはおよそ2500年前の哲学者で「運動は存在しない」という奇妙な逆理を唱えた人。4つの説があり一番とっつきやすいのが「アキレスと亀」の話。ぼくの理解した範囲で説明すると、

アキレスと亀が競走をする。アキレスは伝説に残るほどの俊足なので亀はアキレスよりも10M前からスタートする。アキレスは1秒で10M進め亀は1秒に1M進めるとする。これくらいのハンディではあっという間に追い抜かれてしまうと考えるのが普通だ。ところが事はそんな安直じゃない。

よーいどん!でアキレスが1秒で10M先の亀のところへ到着するとすでに亀はその1M先にいる。アキレスが0.1秒でその亀のいる場所に到着すると亀はすでに0.1M先にいる、さらにアキレスが0.01秒でそこまで行くと亀はそこより0.01M先に進んでいるはずだ。これが永遠と無限に続くわけだ。
哲学者の言葉で伝えると

「 アキレスは亀を追い越せない。ただしアキレスはいちばん速いからいちばんのろい亀との間にハンディキャップをつけて、亀より後の位置から出発する。すると、アキレスが亀を追い越すには、まず亀の出発点に達しなければならない。そのときには亀はその先の地点にいる。以下同様である。こうしてアキレスは亀を追い越すためには、ひとつひとつ無限の地点に触れなければならない。これは不可能である。したがって、アキレスは亀を追い越せない。 」


ということになる。
最初読んだときは「何だ?この屁理屈は?」くらいに感じた。だって現実に簡単に追い抜けるじゃん!なんで無限だのという不可解な用語か絡んで来るんだ?と思った。でもだんだん時間が経つにつれ、なんとも言いようのない不気味さが心を支配してきた。

あたりまえだけど、ゼノンは物理学としてこの説を正しいといってるわけじゃない。パラドックスとして提示した上で現実には追い抜けるのに理論上この説をどうやって覆すのかを問うている。そして2500年を経た今でもこの逆説への明快な反駁がなされていないんだそうだ。

今でも解けない命題だと知ってもまだ釈然としなかった。どこが2500年考えるに値する命題なのかと。ただぼんやりしながらもなんともいえない不思議感覚がぼくを捕らえて離さない。ぼくの頭では明確にこの命題の問題性を論理化できなかった。


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