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「司法書士物語」第3話 請求の原因、紛争の要点 何が違う?
「司法書士物語」について
この物語は、司法書士試験、司法試験、予備試験の受験対策として作成しております。
実務の視点をもとに作成していきますが、完全なるフィクションです。
また、資格試験合格のための法律解説という趣旨で作成しておりますので、実際の実務とは異なることもあります。ご了承ください。
登場人物紹介
司法書士 ロウ先生
司法書士事務所職員 法 律子(ほうりつこ)
請求の趣旨
ロウ先生「今日のテーマは、請求の趣旨と請求の原因についてだったね。」
法律子「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
(訴え提起の方式)
第百三十四条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因
法律子「ずばり、請求の趣旨ってなんですか。」
ロウ先生「それは、こういうことだよ。」
請求の趣旨とは、訴訟における原告の主張の結論となる部分であり、訴えをもって審判を求める請求の表示のことを意味し、原告が勝訴した場合にされる判決の主文に対応するものです。
令和5年3月 2頁
法律子「先生、意味がわかりません(涙)」
ロウ先生「ハハハ。そうだろうね。民事訴訟が難しく感じる理由の一つに、用語の意味がわからないというものがあるよね。
用語の意味を理解し記憶することができるようになると、民事訴訟法の勉強が楽になるんだけど、そこに至るまでがなかなか大変なんだよね。」
ロウ先生「例えば、法律子さんにが私に中古パソコンを5万円で売ってくれたとするだろう。
しかし、私が法律子さんに売買代金の5万円を支払わなかったとする。
法律子さんは、私に5万円を払ってほしいよね。」
法律子「はい。払ってほしいです。」
ロウ先生 「この場合、請求の趣旨はこのようになる。」
請求の趣旨
被告は原告に対し、金5万円を支払え。
法律子「すごくシンプルですね。「売買により」とかは書かないんですね。」
ロウ先生「そうなんだよ。誤解を恐れずにざっくり言うと、原告が求めていることという感じかな。」
請求の原因
法律子「請求の原因ってなんですか?」
ロウ先生「実は、請求の原因という言葉は多義的なんだよね。
ここでは、詳しく説明せず、ざっくりと答えるね。
請求している権利がどんなものかを特定するために必要な情報みたいなイメージかな。」
133条2項2号(上記改正後134条2項2号)の請求の趣旨及び原因は、請求を特定するために記載されるものである。すなわち、ここでいう「請求の原因」は、実務家によって通常よく使われる意味での「請求原因」、つまり訴訟物たる権利関係を理由づける事実主張(後記)をいうものではなく、あくまで、請求を特定するために記載が必要とされる「請求の原因」を意味している。
日本評論社 39頁
法律子「先生、また意味がわかりません(涙)」
ロウ先生「まあそうなるよね。具体的に書くとこんな感じだよ。」
原告は、被告に対し、令和〇年〇月〇日、本件パソコンを代金5万円で売った。
法律子「え、こんなにシンプルなんですか。」
ロウ先生「売買代金請求の場合は、シンプルだね。請求するものが何かによって、請求の原因は異なるよ。まぁ実際の訴状ではもっと色々書くけどね。」
法律子「請求の趣旨だけでは、どんな権利関係があるのか全く分かりませんでしたが、請求の原因を読むと何を請求しているかがわかりますね。」
法律子「先生は、どんな請求でも請求原因として何を書くべきかわかるんですか?私は何が請求原因なのか全然わかりません。」
ロウ先生「いや、さすがにそこまでは。訴状を作成するときは、条文を読んだり書籍を読んで請求原因事実が何なのかその都度確認をしているよ。」
法律子「そうなんですね。でも私は前提の知識がないので、本で調べてもよくわからないと思います。
訴訟を提起したいと思っても、きちんと請求原因を書くことができないと思います。
そうしたら、裁判所から補正命令が来てしまうんですよね。補正できなかったら訴状が却下されちゃうんですよね。」
(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十四条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
ロウ先生「フフフ。法律子さん、民事訴訟法272条をみてごらん。」
(訴えの提起において明らかにすべき事項)
第二百七十二条 訴えの提起においては、請求の原因に代えて、紛争の要点を明らかにすれば足りる。
法律子「これは今朝やったところですね!簡易裁判所における訴訟手続きの特則とやらですね。
特則が適用されるということは、137条1項をこんな風に読み替えることになるんですね。」
第百三十四条二項 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び紛争の要点
ロウ先生「そうだよ。いいね。
簡易裁判所では本人訴訟も多いから、法律子さんのように請求の原因がうまくかけないことも多くあると思う。
だから簡易裁判所の訴訟手続きにおいては、「紛争の要点」を書くことで足りるんだ。」
ここでいう「紛争の要点」とは、紛争の実情の要点と解されています。つまり、いつ、どこで、誰と誰の間に、どのようなことについて、どんな紛争が生じ、それが現在どうなっているのかがわかればよいと解されています。
日本評論社 8頁
ロウ先生「請求の原因がきちんとかけていなくても、紛争の要点が書けていれば、補正命令をした上での訴状却下命令を出すことはできないんだよ。」
法律子「そうなんですね。なんだかとても安心しました。有難うございます。」
ロウ先生「いえいえ。じゃあ、そろそろティータイムにしようか。」
法律子「そうですね。お昼ご飯も食べ終わったし、お礼に紅茶を入れますね。」
ロウ先生「ハハハ。嬉しいな。有難う。」
法律子「先生、明日も宜しくお願いします。」
(続く)
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