「司法書士物語」第3話 請求の原因、紛争の要点 何が違う?
「司法書士物語」について
この物語は、司法書士試験、司法試験、予備試験の受験対策として作成しております。
実務の視点をもとに作成していきますが、完全なるフィクションです。
また、資格試験合格のための法律解説という趣旨で作成しておりますので、実際の実務とは異なることもあります。ご了承ください。
登場人物紹介
司法書士 ロウ先生
司法書士事務所職員 法 律子(ほうりつこ)
請求の趣旨
ロウ先生「今日のテーマは、請求の趣旨と請求の原因についてだったね。」
法律子「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
法律子「ずばり、請求の趣旨ってなんですか。」
ロウ先生「それは、こういうことだよ。」
法律子「先生、意味がわかりません(涙)」
ロウ先生「ハハハ。そうだろうね。民事訴訟が難しく感じる理由の一つに、用語の意味がわからないというものがあるよね。
用語の意味を理解し記憶することができるようになると、民事訴訟法の勉強が楽になるんだけど、そこに至るまでがなかなか大変なんだよね。」
ロウ先生「例えば、法律子さんにが私に中古パソコンを5万円で売ってくれたとするだろう。
しかし、私が法律子さんに売買代金の5万円を支払わなかったとする。
法律子さんは、私に5万円を払ってほしいよね。」
法律子「はい。払ってほしいです。」
ロウ先生 「この場合、請求の趣旨はこのようになる。」
法律子「すごくシンプルですね。「売買により」とかは書かないんですね。」
ロウ先生「そうなんだよ。誤解を恐れずにざっくり言うと、原告が求めていることという感じかな。」
請求の原因
法律子「請求の原因ってなんですか?」
ロウ先生「実は、請求の原因という言葉は多義的なんだよね。
ここでは、詳しく説明せず、ざっくりと答えるね。
請求している権利がどんなものかを特定するために必要な情報みたいなイメージかな。」
法律子「先生、また意味がわかりません(涙)」
ロウ先生「まあそうなるよね。具体的に書くとこんな感じだよ。」
法律子「え、こんなにシンプルなんですか。」
ロウ先生「売買代金請求の場合は、シンプルだね。請求するものが何かによって、請求の原因は異なるよ。まぁ実際の訴状ではもっと色々書くけどね。」
法律子「請求の趣旨だけでは、どんな権利関係があるのか全く分かりませんでしたが、請求の原因を読むと何を請求しているかがわかりますね。」
法律子「先生は、どんな請求でも請求原因として何を書くべきかわかるんですか?私は何が請求原因なのか全然わかりません。」
ロウ先生「いや、さすがにそこまでは。訴状を作成するときは、条文を読んだり書籍を読んで請求原因事実が何なのかその都度確認をしているよ。」
法律子「そうなんですね。でも私は前提の知識がないので、本で調べてもよくわからないと思います。
訴訟を提起したいと思っても、きちんと請求原因を書くことができないと思います。
そうしたら、裁判所から補正命令が来てしまうんですよね。補正できなかったら訴状が却下されちゃうんですよね。」
ロウ先生「フフフ。法律子さん、民事訴訟法272条をみてごらん。」
法律子「これは今朝やったところですね!簡易裁判所における訴訟手続きの特則とやらですね。
特則が適用されるということは、137条1項をこんな風に読み替えることになるんですね。」
ロウ先生「そうだよ。いいね。
簡易裁判所では本人訴訟も多いから、法律子さんのように請求の原因がうまくかけないことも多くあると思う。
だから簡易裁判所の訴訟手続きにおいては、「紛争の要点」を書くことで足りるんだ。」
ロウ先生「請求の原因がきちんとかけていなくても、紛争の要点が書けていれば、補正命令をした上での訴状却下命令を出すことはできないんだよ。」
法律子「そうなんですね。なんだかとても安心しました。有難うございます。」
ロウ先生「いえいえ。じゃあ、そろそろティータイムにしようか。」
法律子「そうですね。お昼ご飯も食べ終わったし、お礼に紅茶を入れますね。」
ロウ先生「ハハハ。嬉しいな。有難う。」
法律子「先生、明日も宜しくお願いします。」
(続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?