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司法試験過去問イラスト解説~代位弁済と充当~

こんにちは。
本日は代位弁済に関する過去問の解説をしていきます。
「代位弁済ってなんだっけ?」と感じた方は、先にこちらの解説動画をご覧ください。
代位弁済とは何かについて簡単に説明しております。


問題

では、本題に入ります。
本日の過去問はこちらです。


〔H28司法試験第20問オ〕

弁済による代位に関する次の記述の正誤を判断せよ。
判例によれば,保証人が債権者に代位弁済した後,債務者から当該保証人に対し一部弁済があったときは,その弁済は,保証人が代位弁済によって取得した求償権だけでなく,債権者に代位して取得した原債権に対しても弁済があったものとして,それぞれに充当される。

さあ、〇か✖かどちらでしょうか。

解説編


答えは、〇です。
「そもそも問いの意味がわからない。」と感じた方や「✖だ」と思った方のみ読み進めてみてください。

判例の解説をしていきましょう。

【最判昭60.1.22 一部抜粋】
また、保証人が債権者に代位弁済したのち、債務者から右保証人に対し内入弁済があつたときは、右の内入弁済は、右保証人が代位弁済によつて取得した求償権のみに充当されて債権者に代位した原債権には充当されないというべきではなく、
求償権と原債権とのそれぞれに対し内入弁済があつたものとして、それぞれにつき「に従つて充当されるべきものと解するのが相当である。
 三 叙上の見解に立つて、本件についてみるに、原審は、被上告人が配当を受けるべき債権は求償権であると解して、本件配当期日における求償権の金額を確定しているにすぎず、このため、本件配当期日における原債権である貸金債権の金額を確定しておらず、かつ、原審の確定した前記事実からは、本件配当期日における貸金債権の金額を算定するに必要な代位弁済以後にされた内入弁済の日時、金額並びに右内入弁済の求償権及び貸金債権の各遅延損害金、利息ないし元本に対する充当関係が不明であるから、右の事実によつて本件配当期日における貸金債権の金額を確定することもできない。そうすると、原判決の法令の解釈を誤つた前記違法は、 判決に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決はその全部につき破棄を免れない。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

保証人が債権者を満足させると、保証人は債務者に対し求償権を取得します。
また、弁済による代位の効果として、原債権(債権者が債務者に有していた貸金債権)も取得します。

(弁済による代位の要件)
第499条 債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。

(弁済による代位の効果)
第501条 前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。

そのため、保証人は、債務者に対し、求償権と貸金債権(原債権)という2つの金銭債権(説明の便宜のために、ざっくり書いています。)を有していることになります。

保証人から債権者に一部弁済があったときは、どちらの債権の弁済だと考えたらいいのか?
前記判例の考えによると、
それぞれの債権に充当があったと考えることになります。

充当の条文

前記判例の中に、「弁済の充当に関する民法の規定」という言葉があったので、ついでに充当の規定をみていきましょう。

芋ずる式に知識を確認していくことで、より理解が深まります。

(合意による弁済の充当)
第490条
 前二条の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する。

(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
第489条 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
2 前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。

(同種の給付を目的とする数個の債務がある場合の充当)
第488条 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第一項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。4 弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第一項又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
二 全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
三 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。

本日は、以上です。
お疲れさまでした。

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