月と凪

胸が苦しい。
息が、肺が、いつもより少し締め付けられる感じがする。

感受性の、受信アンテナが普段よりも過敏になっているせいで、少しのことで動揺してしまう。
凪。感情の理想は凪。
穏やかでいたい。感情を波立てたくない。のに。

満月のころはいつもこうだ。
聴こえない声は、飛んでくる刃物のように。
自身の心の声は冷たい。
自分を痛めつけて、どんどん暗い道にハマっていく。

楽器を弾くのが好きだ。
でも今は好きじゃない。
「楽器を弾きに行く」と言って忙しくすると、寂しがる人が居るから。
いや、恋人のせいじゃないのかも。
自分がおかしくなっているのかもしれない。

楽器を弾きたくない。
もうこのまま恋人に委ねて、すべて委ねて、全部止めてしまってもいい。
何も考えたくない。
何も弾きたくない。聴きたくない。

すべて、流されるままで良いか。
このまま。
何も楽しくない。
恋人が私のすべて。

海の中で混ざり合うように。
傷つけ合いながら、溶け合う。絡み合う。
強烈な毒を含んでいるかもしれない。

ぷかぷかと浮いて、海の月になりたい。
そして、どこかへ漂って、自由に漂って……。
ここは凪だろうか。


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