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Happy birthday,Pat Metheny‼️


note初回を、2023年8月12日に69歳のお誕生日を迎えたPat Methenyで始められて幸せです。
 このnoteでは、今までFacebookでは控えていた新作レヴューも書いていきます。他のsnsではつい宣伝が多くなってしまうのですが、ここではそうではなく、書きたいもの、書かなくてはならないことを音楽を核に書いていきたいと思っています。

毎週原稿を上げますので、どうぞサポートをお願いいたします。
 それぞれのトピックを見つめながら、“拡張するJazz”の行方をご一緒に追っていけたらいいなと思っています。

 さて、パットです。
今年の夏は酷暑で、何をしても暑かったので、パット・メセニーの新作『DREAM BOX』(ワーナーミュージック・ジャパン)をよく聴きました。コロナ禍の影響が感じられる内省的な作風で、何も考えたくない脳にはぴったりの内容でした。
 パットにとっても、自分のギターの上に自身のギターを重ねる手法でアルバムを作るのは、初めてでした。
 
 2023年夏のツアーを続ける彼に、メールで聞きました。
「一人でギターを弾いているときは、誰に向かって弾いているのですか」と。

「それは、難しい質問だね」
と言いながら、次のように答えてくれました。こと音楽のことになると、パットはスルーすることはなく、いつも答えてくれるのです。

「ぼくにとっては、まず何より音楽ありきで、ギターは“アイデアを音に変換する道具の一つ” だと言っていい。
だからぼくにとってギターを弾くことは、他の人に聴いてもらうためでもあるけれど、それ以前に自分で音楽のアイデアを試すための行為なんだね。

「ぼくにとって、音楽を理解したいと思う探究心は、何も分からない子供の頃から続いていて、音楽とは何なのか、真の音楽家になるにはどうしたらよいのか、ずっと問い続け、試し続けていることなんだ。

年月が経つにつれて、ぼくは音楽が音楽だけで完結するのではない、さまざまな知見の入った封筒のようなものだと考えるようになった。

実際にぼくは聴衆のために演奏することを楽しんでいるけれど、自分の主たる責任は『音楽がある場の領域』にあるように感じている。

だから、目の前の聴衆が3人だろうと、3万人居ようと、家で1人で演奏していようと、ぼくの態度は変わらない。根源的な違いはないんだ」

パットとのチャットは、哲学的になることが多いけれど、それは彼が本音を話しているからであって、彼は人を煙に巻くようなことはしない。
そして、彼に今一度聞いた。
「誰のために演奏しているか、ですが」

「ぼくには、見当もつかないよ。
この地上に存在するすべての人と同じように、ぼくにもそれは分からない。分かったフリをして、何かストーリーを作ろうとも思わないしね。
ただ、ぼくはヒト科ヒト属の1人の人間として、この悠久の歴史の中で我々はまだ“初期段階”にあると思っている。長い道のりを歩んできたように錯覚しているけれど、ぼくら人類は、まだ原始的な存在なんだと思う。

しかし、そう思うのと同時に、音楽という領域には、他のどこにもない、ユニークな洞察が隠れているのではないかと感じ、我々皆がそこに注目すべきだと感じているんだ」

音楽の中に生きる彼らしい答えだった。
パット・メセニー、長い人類の歴史の中で、今ここに現れてくれてありがとう。
これからも元気で、ずっとずっと音楽を続けてください。

来年には、SIDE-EYEでやっと来日してくれることを、楽しみにしています。
お誕生日、おめでとう!

Pat Metheny来日時に


Pat Metheny新作『DREAM BOX』(ワーナーミュージック・ジャパンより日本盤発売中)

(本記事は全文公開済みです)

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中川ヨウです。ジャズを核とした音楽評論/研究をしています。日々拡張するJazzの動き。LiveやNew Albumについて書きながら、拡張…

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