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渡辺貞夫 『PEACE』 インタビュー

渡辺貞夫が今年も新作を発表する。御年91歳。しかも、約7年ぶりのスタジオ録音作である。その名は『PEACE』。久しぶりに来日が叶ったラッセル・フェランテ(p)、ベン・ウィリアムス(b)、竹村一哲(ds)とのカルテット。バラードが多く収められたこの新作について、渡辺貞夫ご本人に語っていただいた。




――今年も新作が届き、ファンは大いに喜んでいますが、スタジオ・レコーディングは約7年ぶりになりますね。

渡辺貞夫 (以下 SWと記す) ライブ・レコーディング作が続いたので、スタジオ録音作は7年ぶりです。コロナ禍がありましたから、ラッセル・フェランテとベン・ウィリアムスの来日もずいぶん長いこと待ちました。2023年の「クリスマス・ギフト」をはじめとするクリスマス・ツアーに、やっと、3年ぶりに海外からミュージシャンを呼ぶことが出来た。その感慨が、まず大きかったですね。ツアー中、2人の演奏が素晴らしくて、スタジオ入りへの期待も膨らんでいきました。

――今作はジャズ・スタンダードが多く収録されており、11曲中7曲がスタンダードで、貞夫さんのオリジナル曲が4曲。いつものアルバムよりスタンダードが多く、それもバラードが多い。バラード・アルバムと呼んでもよいのでしょうか。

SW そうですね。でも、バラードばかりでは聴いている方の気分もあるでしょうから、途中リズミックな曲も2曲入れて構成しました。

――貞夫さんのバラード演奏はアメリカでも評価が高く、「バラードのサダオ」と呼ぶ方もあります。

SW バラード・アルバムを作りたいという願いは、かなり以前から考えていたことだったのです。機が熟するのを待っていたらコロナ禍になってしまい、のびのびになっていたというのが実情です。ですから、やっとレコーディングのタイミングが来たという嬉しさが、ぼくにはありました。

――バラードを演奏するとき、貞夫さんはどのようなことに心を留めて演奏するのでしょうか。

SW やはり、アップテンポの曲とはアプローチが異なります。想いの丈(たけ)を聴く方に伝えることを、大事にしたいですから。スタンダードの場合、歌詞があるケースが多いのですが、最初にその曲の歌詞を2番、3番まで読み込み、ストーリーを理解し気分を掴む。そうしたら忘れるわけではないのですが、その掴んだ気分で、メロディに重きを置き演奏します。いちいち細かくストーリーを追うことはしないですね。

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中川ヨウです。ジャズを核とした音楽評論/研究をしています。日々拡張するJazzの動き。LiveやNew Albumについて書きながら、拡張…

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