見出し画像

轰隆隆 hong long long

コーヒーを飲もうよ、ということで隣人にデカフェの豆を渡す。
ちょうど夕方で、雨雲レーダーから「これから強い雨が降ります」という知らせを受けていた。

雨はまだ降っていないが、強い日差しは翳りを見せて遠くで空がうなり始めている。

「ほんろぅ ほんろぅしているね」
中国出身の彼女はそう言って、窓を見る。
「これは日本では何ていうの?」
擬音語のことか、と気づいた私はゴロゴロと答える。
「え!ゴロゴロ?どこが?」と笑う。
お腹を触りながら「お腹が痛い時もゴロゴロするって言うことある」と言うとまた笑った。


中国語の話から、老媽拌麺の話になり、葱油の作り方の話になった。

近所の中華屋さんで大根の塩漬けに葱油を混ぜると美味しいと聞いたので、スーパーで出来合いの葱油を買ってみたという話をしたところ、彼女が言うには葱油は家庭料理で簡単に作れるという。

小ネギの根っこから、頭まで、それぞれ分けて切る。
それを八角、シナモン、山椒、生姜、にんにくと油につけて火をかける。
日本の山椒は味が薄いから多めに入れるらしい。

そこからさらに中国の家庭料理へと話が広がる。
塩漬けの肉と筍のスープも美味しいというので彼女が参考にしているYoutubeを見た。
中国で有名な料理人は日本でいう平野レミさんのようで、言葉はよく分からないけど素直でチャーミングな人だということは伝わってくる。

筍の根っこと頭で風味が違うので、
一緒にスープで煮込むけど、旨みが取れたら歯応えの悪い根っこは取り出すという作り方。
筍がないときはステムレタスという野菜を使うこともあるらしい。
塩漬けのポークはベーコンでも代用できるとのこと。
なんかもっと色々話していたけどメモしきれていない。

そんな話をしながら、市販の葱油の味が知りたいというので私は一旦部屋に戻った。
せっかくなので、先日梅ジャムを作った時の「梅醤油」も渡した。

市販の葱油を味見して「あ〜」と言って何か考えていた。
多分、葱油を自分で作る側からしたら風味が少ないのかもしれない。
その後梅醤油を味見した彼女は「すっぱーい!!!」と大きな声で叫んだ。

梅醤油を作ったのは初めてなので味の基準はわからないが、梅干し好きの私からしたら、もう少し酸味が強くあってほしい。
人の好みはバラバラで反応が楽しい。


そんなこんなで雨が止んで、夜になっていた。
夕飯は人参のすりおろしスープと和風カルボナーラにしてみた。
ほんろぅほんろぅ、という言葉が呪文のようで頭から離れない。



2024.07.06採集