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フルハルターで万年筆を買う

万年筆のファンならしらない人は居ないだろう、フルハルターというお店。すっごく端的に書くと、森山さんのいうお店のご主人が、書き手に合わせてペン先を研ぎ出してくれる、というお店。検索すればお店自体の話はわんさか出てくるのでそこは割愛。

いまから15年くらいまえのこと。まだ大井町にフルハルターのお店を構えている頃に買いに行こうと思ってついぞ買えなかった。なんとなく若いわたしからしたら敷居が高かったし、一対一で万年筆を買うことにとても緊張していたのだ。

そして5年ほど前。年を重ねて30代も半ばに差し掛かり、ペリカンのバイオレットホワイトの発売を機に、そろそろフルハルターで万年筆を作ってもらおうと思い立つ。

住所を調べてみると、なんと大井町はたたんでしまっており、我孫子の方で小さくアトリエを開いているとのこと。またもや緊張を感じるも、決意していた私はすぐに森山さんに連絡を取り、来訪した。来訪して万年筆を一本仕上げてもらった。これはとても良い体験であった。

万年筆を買うにあたって、いろんなブログで紹介されている。当人の書き方を見てもらって、その最適な研ぎ出し角度をどうのこうの、という職人の面ばかりが書かれているが、私はもっと別なところに感動をした。

当日、ごく普通なんだけど素敵な部屋に通され、森山さんと、奥様の二人と対面をする。万年筆のことをすぐに話すのかな、と思いきや、お互いの自己紹介だったり、モノに対する愛など、そんな雑談を次々にしていた。むしろ滞在していたほとんどの時間はそのような時間だった。

一番印象に残っているのは、私が取り出したコインパースを見て、「ちょっとその財布、見せていただけますか?」と言われ、渡した時の話。
皮の質に感動したといい、失礼ですがどちらで買われたのですか?と聞かれた。新婚旅行で行ったフィレンツェで買ったんです、と答えると、「あぁ、やっぱイタリアはいいなぁ。やっぱり、行かないといけないと思ってるんです。皮はいいよねぇ。。」としみじみ語る森山さんは、とても素敵な表情だった。

革靴の話、財布の話、ペンケースの話、などなどをしていたらあっという間に1時間経ち、楽しいまま万年筆を一本仕上げてもらう約束をして別れを惜しみつつ帰ることになった。

届いた万年筆。個人的には上がりの一本という気持ちである。

フルハルターといえば、というグリーンの色で書かれた店名が美しい

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