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あなたとなら

いつも通りの学校を終え、放課後…

私は‘’独り‘’屋上へ向かう。


ガチャ…ギ…ギィィ

普段誰も来ないのだろうか?
扉は私の意志を拒絶するかのように重たかった

その拒絶さえも嬉しく感じた



しかし私は歩みを止めることなく
そして柵を越え…






優しい風が吹き抜ける
青々とした景色が広がる
だけど…こんな美しい世界に





美青:私はいらない


ガチャ…ギィィ


美青:え?

〇〇:おっとぉ?



扉の方を振り向くと関わるはずのない
だけど見慣れた人がそこにいた


〇〇:あぶないぞ、そんなとこ立ってたら


彼は私と同じバスで登校しているのでよく見かける
たしか1つ上の学年だったかな?
寝癖もろくになおさないで、服装も乱れてるし、
線が絡まったイヤホンをつけてバスに乗ってくる

毎日どんな音楽聴いてるんだろ?
それともYouTubeでも見てるのかな?


あれ?なんで私こんなにこの人の事を…?


〇〇:なんかあったの?話なら聞いてあげるよ

美青:っ…!とめないでください!

〇〇:ん?別にとめる気はないけど…


え??
今、とめる気はないって言った?
この展開って普通ならとめるんじゃないの?
まぁとめられたところで困るのは私なんだけど



美青:…とめないんですか?

〇〇:なに?とめてほしいの?

美青:いやぁ…

〇〇:死にたいくらい追い詰められてる人に‘’生きてください‘’なんて言葉は酷だと思うんだよねぇ

美青:確か…に?

〇〇:それに君はすでに行動に移してるわけで

美青:……。

〇〇:でもここで死ぬのはやめて欲しいな

美青:なんで…?

〇〇:ほら、色んな人に迷惑かかるだろ?

美青:…迷惑かけれるなら本望です

〇〇:……いじめか?

美青:まぁそんなとこです

〇〇:はぁ…いつの時代も変わらんもんですなぁ

美青:…。

〇〇:…。

美青:…でも、きっと私にも原因があったんですよ

〇〇:そうなの?

美青:昔から人との距離感とかわかんなくてよく気持ち悪がられてたりしてたんです

〇〇:…。

美青:嫌われるような性格だったんですよ、きっと

〇〇:ふーん、俺は君のこと好きだけどな

美青:……えっ?


はじめてだった『好き』だなんていわれたの
知りたい。教えて欲しい。
こんな私のどこがいいのか



美青:ど、どこがですか?

〇〇:ん?喋った感じっていうのかな?あと普通に可愛いし笑

美青:アハハ笑、なんですかそれ!

〇〇:……笑った顔も可愛いじゃん

美青:…あ、あれ?

私、今笑ってた?
笑ったことなんてここ最近なかったのに
笑顔は私の中から消えたと思ってたのに

プルルルルル

美青:?

〇〇:もしもし?……用事終わった?おけ今行くわ

あぁこの時間も終わってしまうんだ

〇〇:じゃ、そろそろ俺は帰るわ

美青:あっ……

そう言うと彼は歩き出す。あの重たい扉に向かって

嫌だ。まだ話してたい。行かないで欲しい。
あなたのこともっと知りたい。
私のことをもっと知って欲しい。

このままずっと―――――――――――――――

そんなこと言う資格は私にはない



〇〇:あっ!そうだ

美青:?

〇〇:そういえば君、名前は?

なんてこったい、名前を名乗ってないなんて
それに彼の名前もまだ知らない
だけど…

美青:死ぬかもしれない人の名前知りたいんですか?

〇〇:そりゃね。君という存在を忘れたくは無いからさ

美青:っ//……的野美青です…

〇〇:美青っ!いい名前じゃん!

〇〇:俺は〇〇!

美青:〇〇先輩っ…

〇〇:じゃ、サヨナラだね美青… 

美青:………。

これで本当に終わり。
でも後悔はないかも
楽しいひと時は一瞬だったけど
その一瞬は私の中で永遠だから

彼は歩みを止めることなく
そして扉をあける

ガチャ…ギィ

〇〇:‘’また明日‘’

美青:…えっ?

バタンッ!

扉の音にかき消されたその言葉
私にはハッキリと聞こえた気がした


翌日。
俺はいつも通りバスに乗り込む
なおしてない寝癖。乱れた服装。
それでいい

〇〇:今日はいちだんと絡まってんな…

絡まったイヤホンをそこそこにほどく

そしていつもの場所に目をやる

そこに彼女の姿はなかった…


そして放課後。
俺は昨日と同じように屋上へ向かう
行かなければいけないそう思ったんだ
少しでも彼女に希望を与えたのなら

ガチャ…

扉はかるい。昨日が嘘のように
今日も優しい風が吹いています。
青々とした景色が広がっています。

美しい世界に、空を見上げる1人がいる

美青:あっ!〇〇先輩!

〇〇:よっ、美青

美青:〇〇先輩!聞いてくださいよ!今日、いじめてきた人達に一泡吹かせてやったんです!

〇〇:おーやるじゃん!そんで、そんで?

美青:アハハ笑。そしたらその人達が――――――



私にはなんの価値もないと思ってた
存在意義なんてないと思ってた
だけど気づかせてくれたんだ

こんな私には眩しすぎるくらいに美しく青い世界で





あなたとなら歩いてゆける




〜Fin〜

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