エボカのプロモカードのイラストがいい

 デジモンカードの中型イベント〈エボリューションカップ〉。各店舗で定員32名が事前申し込み制で参加できる。前の記事でも述べた通り〈TCG+〉という専用アプリでキャンセル待ちからの繰り上がり当選やかすかな希望だが当日参加枠で参加できるかもしれない。参加者にはプロモーションカードの〈コロモン〉、上位者8名には〈メタルグレイモン〉、優勝者には〈ブラックウォーグレイモン〉が配布される。
 
 このイラストの良さを語らせてほしい。コロモンはどうやらゲームのネタがあるようだ。デジモンのゲーム体験がまったくない私にはくみ取ることができないが、そういうネタが仕込まれているだけで、ファンサービスという粋を感じる。

メタルグレイモンさえもかわいい。


 メタルグレイモンはいわゆる青メタグレ、初代育成ギアのデジタルモンスターに登場した皮膚が青く、目が爛々としたウィルス種のメタルグレイモンである。テレビアニメでも活躍した、主人公八神太一のパートナーデジモンの〈アグモン〉が進化したワクチン種のメタルグレイモンがヒロイックなバックボーンがあるとするなら、こちらのメタルグレイモンはいわばダークヒーローだ。さきほどもあげた目。1997年の初期絵もこのように瞳孔が小さく、言葉が通じない狂暴な生物のような雰囲気を醸し出す。今回のプロモイラストもその要素を継承しており、やはり手懐けることができなさそうな、破壊衝動を持っている危険性、アンタッチャブルな存在を感じてしまう。それがいい、たまらない。

夜を引き立たせる機械やエネルギーの光、いいよね…。

 また今回のイラストには他のデジモンも描かれている。この5体には共通点がある。〈ムゲンドラモン〉のパーツを身体のどこかに持ち合わせているのだ。正確に言えば逆である。この5体がムゲンドラモンを完成させるための試作品である。究極の破壊マシーンを完成させるための足掛かり、人柱といえばいいすぎだろうか。

どこのパーツがどのデジモンのパーツを使っているのか探してみよう!

 そんな無機質な設定やバックボーンをより濃く表現するために他の4体を描く。しかもこの4体同じ方向を向く。さも軍隊による最前線のようで対峙する敵対勢力に臨戦態勢で、指令さえ下りれば今にも飛び掛かってきそうだ。さらに舞台は雨が降りしきる夜の街。摩天楼も見える。市街地戦で、悪天候と夜という条件で戦うには過酷な環境かもしれない。だがこの5体は物ともしない。ああ、この5体は生物というより、兵器なのかもしれないとごくりと生唾を飲み込んでしまいそうな迫力である。ウィルス種のメタルグレイモンの魅力やバックボーンを最大限に活かしたイラストだろう。メーカー、イラストレーターの理解度からくる愛を感じる。さすがsasasi先生。
 
 優勝者に配られるブラックウォーグレイモン。特に濃密な描かれ方をしたのがアニメ〈デジモンアドベンチャー02〉だろう。
 
 ~ここからデジモンアドベンチャー02のネタバレ注意!~
 
今作品では100本の〈ダークタワー〉と〈アルケニモン〉の髪の毛から生まれたデジモンとして描かれる。他にも同じような出自のデジモンが登場するが、唯一自我を持つ。そのため自分の存在意義に対して疑問を持ち、単なる敵勢力の支配下におかれるデジモンではなく、主人公たちをピンチに追い込むものの、戦う相手として分不相応と言い出し見逃して、闘争本能に従いデジタルワールドを流浪する。その後前作主人公の太一のアグモンと出会い交流し苦悩するなんていう話なんかを経て、四大竜のチンロンモンに格の違いを見せつけられ「存在意義は自分で見つけろ」みたいなこと言われる。やはり少年の私の心に刺さったのは「ブラックウォーグレイモンvs ウォーグレイモン」だろう。理由を語ると長くなるため省くがタイトル通り、ブラックウォーグレイモンとウォーグレイモンが現実世界でバチバチの対決を見せる。さきほども触れた通りこの2体は交流があり、一瞬でも友となろうとした。その2体がまたこんな形で対峙するなんて…と悲しみとどうなるんだ…!と手に汗握り興奮する回だ。最終的には〈インペリアルドラモンファイターモード〉が介入し、引き分けとなる。その回で〈ワームモン〉から「死ぬことは苦しみからの解放しゃない!悩んでも苦しんでも生きるんだ!」みたいなことを言われて、ブラックウォーグレイモンも自分自身の中に何かを見出したようだ。そしてまた別の回、敵に襲われる主人公たちと家族をかばい致命傷を負う。ボロボロの身体を引きずるように空へ飛び、自らの命でゲートを封印した…。まさにダークヒーロー。かっこいいところしかない。
 
 ~ネタバレおしまい!~
 
 読んでいない方も文章量で察していただきたいが、この濃厚さ。やはり人気デジモンの一角を担うにふさわしい情報量である。ここまで述べたが、今回のイラストはアニメ要素はない。あくまでもブラックウォーグレイモンのキャラクター性にいかにしてダークヒーローの肉付きをされたのか、という話である。今回のイラストもそんなストーリーを感じさせる。

アニメの担当声優は檜山修之さん。かっこいいがすぎる。

 前のめりで目前をにらむようなブラックウォーグレイモン。その後ろには〈インプモン〉。ちなみにインプモンもアニメデジモンテイマーズに登場しており、はぐれもの・自分自身の存在への問いなどブラックウォーグレイモンに共通するような部分もある。似た者同士なのかも?まるでインプモンを庇い、守っているようだ。背景には倒れる〈マンティコアモン〉。ウィルス種のデジコアを食らうウィルス種であり、天使型デジモンに使役されているという設定がある。さらにその後ろにはその天使型デジモン(翼の枚数からピッドモンかな…?)。舞う無数の羽根も描かれている。ウィルス種を駆逐するために聖域からの先兵、襲われるインプモン、その間に降り立ち対峙するブラックウォーグレイモン…なんていうストーリーを妄想してしまう。

ウィルス種をもってウィルス種を制す。
天使側の目的のためには形振り構わない非道的な一面も感じてしまう。いい…。

 このイラストでは、弱きものを守るような姿で描かれ、「守る」存在としてのブラックウォーグレイモンのキャラクター性をより濃く表現しているように思える。アニメで肉付けされた戦闘本能にあらがえない「矛」なキャラクター性から、自分自身へ問い続け、弱きものも庇う、守る存在としての「盾」なキャラクター性への昇華。そのバックボーンを存分に活かしたイラスト。さすがsasasi先生。
 
 ここまでだらだらと述べさせていたが、とどのつまりたまらないイラストだということを声を大きくしたい。そんなイラストを用意していただいたイラストレーター・関係者に感謝を申し上げるとともに、ぜひともエボリューションカップなどデジモンカードのイベントに参加していただきたい。もうデジモンカードを始めてほしい。デジモンカード、楽しい!

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